日本へ帰国後、米国口座からの現金引き出し時や日本への送金時の税金

東京オリンピックまであと2カ月となりました(7月23日開会式。パラリンピック開会式は8月24日)。本来なら日本全体で盛り上がっている時期なのですが、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の猛威は収まらず、白熱するのは中止や再延長の議論ばかりという状況です。米国と異なりワクチン接種の進まない日本では、1カ月後どうなっているか分からない状況です。本当にどうなるんでしょうか。

さて、米国居住者が日本へ帰国する際の手続きのなかでも理解しづらいものに、税金があります。制度そのものが複雑であるのに加え、米国、日本と両国にまたがることから日米の税務知識が必要であり、専門家でもなかなか熟知している人は多くないようです。そこで、本コラムで税金全般について説明することは不可能ですが、今回はお客様からよく問い合わせを受ける日本への送金時の取り扱いについて紹介します。

1.税金の種類

税金のことをほとんど知らない人もいると思いますので、初歩的なことから説明します。税金には代表的なものとして、お店でものを買ったりレストランで食事をしたりした時、その支払いを通じて納める売上税(Sales Tax。日本では消費税のこと)、働いている人または年金受給者がその所得の額に応じて納める所得税(Income Tax)があります(※1)

前者はお店で料金を支払う際、一定の率を乗じた税金も含まれるので、その時点で納税は完了し手続きは簡単ですが、後者の場合は年に一度の確定申告でその年度の合計所得を算出して申告、納税するため、所得の範囲や種類が定義しづらく人によっては専門家の協力が必要となります。

2.日本帰国後の所得の範囲と送金

ここから少し専門的な内容になるのですが、米国居住者が日本へ帰国(移住)する場合、帰国前後の居住地である日米両方での確定申告手続きが必要です。そして就労者の給与、高齢者の年金、その他投資をしている人が受け取る金利/配当金など、一つの年度の中で日米両国からの所得があれば、日米どちらの所得に含めるかといった細かいルールが必要となります。
ここで帰国後に必要となる日本の税務についてもう少し掘り下げてみましょう(米国の税務についてはここでは触れません)。

帰国者の場合、米市民か永住者(グリーンカード保有者)によって所得の範囲が変わります。以下は居住形態別に分けた所得の範囲になります。

日本帰国者は納税者区分のAまたはBに該当することになります。グリーンカード保有者ならA、米市民であれば帰国後5年間はB、その後Aとなります。一応記載しましたが、(まだ帰国していない)米国居住者はCに該当します。Aの該当者は世界中のその年の所得が申告対象となります。Bの該当者は米国の所得で米国の銀行口座で受け取った所得以外(※3)が申告対象となります。たとえばBでは米国Social Security BenefitやIRA、Annuityの配当金を米国の銀行口座で受取る場合は、日本の所得とはならず確定申告の対象になりません。しかし、たとえば生活費として使用するなどの目的で同じ年に日本へ送金した場合は、日本での所得の範囲に含まれることになります。同じ年であれば所得と送金の時期が異なっていても該当します。また送金の意味としては銀行送金だけでなく、携行(持込み)、米国口座引き落としのクレジットカードの日本での利用やATMでの引き出しも含まれます。

3.米国で所得が無く預貯金を送金した場合

所得はあくまでもその年に得た収入です。過去の米国の収入ですでに確定申告済みの預貯金等を日本へ送金しても、日本での所得とはならず確定申告の対象にはなりません。つまりその年の米国の所得がない場合や、または所得があったとしてもその金額を超える分については送金しても税金はかかりません。

いかがでしょうか? 本内容は一般論です。お一人おひとりの個別の状況によって解釈が変わる場合があります。実際の手続きについては専門家へご相談いただくことをおすすめします。

備考
※1 ほかにもありますがここでは割愛します(相続・贈与税、地方税、出国税、等々)
※2 帰国後グリーンカードを返納するまでは米国の納税義務者でもあります
※3 言い換えると、日本で稼いで海外で受け取ったもの、または海外で稼いで日本で受け取ったものも、日本の所得になります

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、成年後見など日本在住の老親のサポート)を行う。

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