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海外教育Navi 第83回
〜コロナ禍のオンライン学習の進め方〜〈前編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2021年9月1日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.コロナ禍で現地校もオンライン授業で、子どもも親もストレスをためがちです。留意すべきことを教えてください。
「アメリカでの学習に加え日本の学習も。オンラインで勉強する時間が倍になりたいへん」、「娘に教えるのってキツイ。教えようとすると逆ギレしたり泣きだしたりする小1の我が子に手を焼く日々」、「部屋に閉じこもって勉強しているのかと思ったらLINEやゲームで盛り上がっていた」……海外からこんな嘆きが届きます。
アメリカ国内でも「成績急落の生徒続出」、「40%近くの生徒の成績にF。前年度の約2倍(ミネソタ)」(3〜8年生対象の統一テストの結果)、「ADHDなので長い間座って授業を受けるのが苦痛」、「学習面の抜け穴が多い」……ニューヨーク・タイムズやABCニュースなど各メディアでは、オンライン学習の現状と課題や現場からの声を頻繁に報道しています。
気をつけるべきは、子どもにも大人にもコロナ禍の「非日常」が強いられていることです。そんななかでのオンライン学習、どんなことに気をつけて過ごしたらいいのでしょうか。
滞米1カ月から4年までの8家族の皆さんの生の声を紹介しながら考えてみました。ここで取り上げる「オンライン学習」とはZOOMなどを使った遠隔ライブ授業のことです。
オンライン学習
ここがストレス
①通信状態が悪い。端末操作がうまくいかない(Wi-Fiの不具合、サーバーがダウン、画面が固まった、音が出ない、リンクが違っている等)。
②目が疲れて眠くなる。ずっと座りきりで腰が痛くなる。
③すぐ質問ができないしコミュニケーションが取れないので、授業がわからない。退屈になってゲームやLINEに熱中。学びがおろそかになってしまう。
④英語がわからないから不安でたまらない。会話で英語もイキイキと学びたいのにオンラインのみだと上達しない。
⑤現地の友達と仲よくなれない。
⑥時間の管理が難しい。
その解決法・対策は?
①の技術面に関することは、それぞれ対応が異なりますが、慣れたら確実に自分でできるようになります。それまではしっかりと親御さんがフォローしてあげましょう。また、多くの学校では「こんなときは? Q&A」などが準備されていると思いますので親子で読むのもお勧めです。うまくいかないときは、一度思い切りよく画面から離れて気分転換を。
②の目の疲れ、肩こり、生あくびや腰痛は、長時間パソコンと睨めっこしている子どもたちと仲よしです。そうなると集中力も続きません。気分転換に勉強する場所を変えてみましょう。
お勧めは「20-20-20ルール」。ノースイースタン大学発の疲れ目防止策で、20分ごとに20フィート(約6メートル)先にあるコンピューター以外のものを20秒間見る。さらに20分ごとに20フィートの距離を20秒以上歩くのは体に効果大と推奨しています。
③④の場合、はじめは誰でも手探り状態なのです。いっしょに手伝ってあげつつ、わからないところはあとで先生にメールで問い合わせるようにさせましょう。やがてチャットで質問できるようになります。家庭教師もお勧め。探し方は学校のオフィスなどに尋ねてみましょう。
また、ネイティブの生徒に説明したあと、英語にまだ不慣れなお子さんと1対1で、時間をかけて丁寧に教えてくださる先生もいます。必要な相談をするのに遠慮はいりません。
不安でたまらない小さなお子さんには、慣れるまで親御さんがつき添ってあげましょう。
「8時半から12時まで小2の子がパソコンの前に座り英語と格闘しているだけでも褒めてあげたい」とメールをくださった渡米ほやほやのお母様。寄り添うことがお子さんの不安の解消につながっています。低学年ではじっと座っているのが難しいので、お絵描きを始めたり歩き回ったりするお子さんもいますが、神経質にならず適宜休ませてあげるのも一計です。
⑤滞米中のご家族のいちばんの懸案は「現地の友達と仲よくなる機会が少ない」ことです。
まず、オンラインで友達に出会う機会づくりを学校にリクエストしましょう。現地の子どもたちも家にいるだけでは鬱屈気味です。困っているときには声を上げ校長先生や担任、カウンセラーに相談してみましょう。
カリフォルニアでESLの教師をしている友人の学校では、校長先生が主催して週1回のオンライン「Lunch Bunch」(教師と少人数でのランチ)を行ったり、放課後にはバーチャルアートクラブやストレスケアを目的とした少人数のバーチャル集会を開いているとのこと。これらはコロナを避けて仲間との交流を促す企画です。そうした催しがあれば勇気を出して参加してみましょう。アニメをはじめ日本に興味のある子がかならず見つかります。そして母語で自由に話せる補習校の友達も大切! 人とのつながりは心の安定をもたらします。
渡米後しばらくは家庭教師役で忙しい親も「こんなことを学ぶんだ」と感動したり、ご自身のPCスキルの手ごたえに思わず嬉しくなったり。英語も語彙が増え日常会話のレッスンになります。そして子どもがたいへんな時期を乗り越えていけるのは、子どもといっしょにがっつり取り組む親の姿があってこそ。親の都合で連れてきたのですから責任を持ちたいものです。
⑥時間の管理にはアラームを。気を散らすテレビやおもちゃなどを目の前から片づけて集中しやすい環境をつくります。自分でしっかり予定を組んでいつもと同じように生活することが非常時を上手に過ごす鍵です。
→「第84回 〜コロナ禍のオンライン学習の進め方〜〈後編〉」を読む。
海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」親クラス講師
つちや みちこ
海外生活カウンセラー。ジャムズネット、多文化間精神医学会会員。上智大学卒業。夫のアメリカ駐在で13年間をイリノイ州、カリフォルニア州、ノースカロライナ州で過ごす。3人目の子どもはアメリカ生まれ。帰国後、教育評論家の尾木直樹氏が主宰する臨床教育研究所「虹」の研究スタッフに。子どもたちと体験したアメリカの学校についてまとめた『わくわく学校レシピ』(文芸社)を出版。2009年より海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」親クラス講師。
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