Vol.27 おもちゃ箱のような港町
ルーネンバーグ旧市街
− カナダ ノバスコシア州 −

文/齋藤春菜(Text by Haruna Saito)

世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2021年8月現在、167カ国で1154件(文化遺産897件、自然遺産218件、複合遺産39件)が登録されている。

旧市街に残る約400の木造建築のうち8棟は、18世紀中頃に建てられた住宅家屋

大西洋岸に面したカナダのノバスコシア州にある小さな港町・ルーネンバーグ。赤、青、緑、黄色……この町には、まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのようなカラフルな家々が建ち並んでいる。ルーネンバーグは18世紀にイギリスの植民都市として建設され、以来250年以上もの間、修復・保全をしながら町の景観を維持してきた。北米大陸において植民地時代の面影をもっともよく残す町として、1995年に世界文化遺産に登録された。

ことの始まりは1753年。イギリスがこの港町を新たな植民都市とすることを定め、ドイツ、スイス、フランスなどから選ばれた1453人のプロテスタントがこの地に降り立った。防衛のための高い柵や砦、兵舎が築かれ、瞬く間に町が形成された。19世紀前半には漁業が始まり、西インド諸島とも貿易を行うほどの一大産業へと発展。造船や鉄道のための製鉄業も興り、20世紀前半まで繁栄は続いた。

ルーネンバーグの旧市街は、「すべての道は真っ直ぐに、すべての曲がり角は直角に」というイギリス本土の構想のもと、長方形の格子状に設計されている。町の建築物の3分の2は18〜19世紀に建てられた木造建築。木枠に横板をはめ込む開拓初期の建築技法に、19世紀以降はヴィクトリア朝建築の要素も加わった。造船業が栄えてからは船用のペンキを使って家の壁を塗るようになったため、色鮮やかな町並みになったといわれている。

18世紀ヨーロッパへタイムスリップ

試飲や見学ができる蒸留所、雑貨店など町歩きが楽しい

まずはルーネンバーグの旧市街を散策。地形を考慮せずにイギリスの机上で町の設計が行われたため、町なかを散策していると突然急勾配や急坂に出くわすことがある。軒先に施されたレース模様の彫刻や、ルーネンバーグ・バンプと呼ばれる屋根に取り付けられた出窓など、建物の特徴にも注目して欲しい。町の中心部に位置するセント・ジョンズ・アグリカン教会や、かつて音楽学校として利用されていたルーネンバーグ・アカデミーといったみごとな建築物も必見だ。

散策が終わったらウォーターフロントへ。ここにはかつて漁船として活躍した伝説の大型帆船のレプリカ「ブルーノーズII」が停泊している。まるで海賊船のような装いのブルーノーズIIは観光用のクルーズ船で、乗船体験が可能だ。真っ赤な建物が目印の大西洋漁業博物館(Fisheries Museum of the Atlantic)は、この地で発展した漁業の歴史を学べる施設。当時の漁法に関する展示物のほか、シアターやアクアリウムなどがあり、家族で楽しむことができる。ウォーターフロントにはロブスターやムール貝を堪能できるシーフード専門店も多く並んでいるので、新鮮な海の味覚を味わおう。

カラフルでフォトジェニックな町・ルーネンバーグ。現在もヨーロッパ移民の末裔が暮らすこの町を歩けば、18世紀の繁栄の音がかすかに聴こえてくるかもしれない。

カナダの硬貨のデザインにも採用されているブルーノーズII

遺産プロフィール

ルーネンバーグ旧市街
Old Town Lunenburg

登録年 1995年
遺産種別 世界文化遺産
townoflunenburg.ca

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齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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