【ニューヨーク不動産最前線】
入居申請は慎重に

現在、NYCの賃貸マーケットは史上最高に物件がない状態です。本当にありません。データ上は空室率0.5%となっていますが、これは実質まったく空き物件がないのと同じ状況です。

実際に私もオーナー代理として賃貸物件のリストを出す場合がありますが、今年に入ってからは、マーケットに出した瞬間からショーイング希望のメールやテキストが山のように入ってくるという状況です。大袈裟ではなく、1つの物件に対して1日で100通くらいのメールが入り、バグに感染したのかと思うほどです。借りる側も物件がないので、とにかく値段さえ合えば手当たり次第に問い合わせをしたくなる気持ちも分かります。しかし、問い合わせの前に物件についての情報を把握しておくのはとても重要なことなので、今回はそのお話です。

まず、リストを見ると必ず物件の住所、レント、入居可能日、物件の種類等が出ています。レンタルビルと書いてあれば即ショーイング申請をしても問題ありません。ただし、コンドミニアムと書いてある場合は注意してリスト内容を見てください。即入居となっていても必ずしもすぐに入居できるというわけではないからです。リース契約が成立して有効になるには、オーナーの承認の他にコンドミニアムボードの承認が必要です。

コンドミニアムボードへの入居申請には提出すべき書類がいくつも必要で、これらを用意するだけでも数日から1週間はかかります。かつ、管理会社やビルに対しての申請費用もかかります。申請費用は平均1500ドル程度ですが、ブローカーフィーと合わせると申請時には前家賃、敷金とは別に家賃の約2カ月分相当が必要となるのです。

これらが全部揃ってボードへの入居申請書を出した後、審査に2〜4週間程度かかるのが現実です。いつボードの承認がおりるのか期限は知らされないので、その間は引越し屋さんやビルの引越し用エレベーターの予約もできず、相当の時間と心の余裕がないとコンドミニアムへの入居はストレスとなります。

これらの知識がないままに闇雲にショーイングのリクエストをしても、結局時間の無駄になってしまいます。ですので、オンラインで物件を見つけたら、それがレンタルビルなのかコンドミニアムなのかをまず確認することを強くおすすめします。

なお、時間に余裕があり書類や費用を準備するのも問題ないという場合は、あらかじめ書類や費用の準備をしておくと物件争奪戦を勝ち抜くのに有利です。とにかく今は、1つの物件に複数のオファーが入るのは珍しくありません。その中で貸し手が「この人にしよう」と決めるポイントは、この人ならすぐに書類も費用も用意できてスムーズに入居審査が進められると納得できることなのです。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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