本田真穂
俳優・モデル

Text by Haruna Saito

高度な資格や専門知識、特殊技能が求められるスペシャリスト。手に職をつけて、アメリカ社会を生き抜くサバイバー。それがたくましき「専門職」の人生だ。「天職」をつかみ、アメリカで活躍する人たちに、その仕事を選んだ理由や、専門職の魅力、やりがいについて聞いた。

本田真穂(ほんだ まほ)さん

可能性に惹かれてアメリカへ

中学生の時に原宿でスカウトされて、19歳の頃に大学進学をきっかけにモデル・俳優を始めました。ニューヨークに移住したのは2009年。もともと旅行で来た時に町の雰囲気がすごく良いなと思い、語学留学で再度渡米しました。その時に演技のプロフェッショナルスクールへ何度か見学に行き、今までとはまったく異なる演技へのアプローチに感銘を受けたんです。私はもともと学校には通わず現場で経験を積んで、「どう見えるか」だけにフォーカスしており、自分の内面からアプローチできていませんでした。でもニューヨークに来たら、演技力っていうのは感性や才能だけじゃなくて技術で向上できるんだということがはっきり分かり、学びたい、上達したいと思ったんです。

左から、本田真穂さん、監督の川出真理さん、脚本・俳優の近藤司さん

2011年の冬には、ニューヨークを拠点に映像制作を手がける日本人クリエイターチーム「デルック(derrrrruq)」を結成しました。メンバーは脚本家、監督、そして俳優である私の3人です。インディーズドラマのクリエイター集団として、テレビ局や有名な制作会社が作るようなものではなく、LGBTQ+や女性の描き方など、メインストリームのメディアできちんと映されないものの制作に取り組んでいます。2014年には初作品のウェブドラマ『2nd Avenue』を配信し、今年の初めに日本で配信開始となった新作ドラマ『報道バズ』は、現在アメリカでもAmazonプライムで配信をスタートしました。私たち日本人はアメリカに来るとマイノリティな存在なので、必然的にアイデンティティを問われる環境に置かれます。その環境が日本への愛情を加速させることもあるし、過去の自分や今まで置かれていた状況を客観的に見る機会も自然と増えると思うんです。そういうものを、私たちは作品に反映させています。

マイノリティとしての苦労もある

やはりアメリカではアジア人としての役が少ないなと感じます。たとえばツーリストや芸者、ファーマシストなど、ステレオタイプ的な決まった役柄が多いですね。ニューヨークに来てすぐの頃は、自分の技術不足や経験不足のせいもあってそういう役ばかりで、ここではマイノリティなんだなというのを突きつけられました。ただ、アメリカには俳優のユニオンがあるのが日本とは異なる点です。ユニオンには細かい規定があり、その条件に基づいて交渉ができるので、俳優の環境を守ってくれるという点ではとてもありがたく安心感があります。

『報道バズ』という作品

ネットドラマ『報道バズ』を制作するきっかけとなったのが、HBOのドラマ『The Newsroom』。このドラマは、実際に起きた社会問題や時事問題が、視聴者の記憶に残っているうちに配信されるフィクション。その構成がすごくおもしろくて、私たちが報道番組をテーマにドラマを制作するアイデアの一つになりました。

チームは3人しかいないので、ロケーションのハンティングやオフィスの壁のペンキ塗りなど、全部自分たちで走り回って制作するのは体力勝負で大変でした。また、インディーズドラマは異例ということで、配給先を見つけるのにも苦労しました。おかげさまで、現在は日本で10のプラットフォーム、アメリカではAmazonプライムで配信させてもらえています。

あとは、ニューヨークはカメラや照明などの技術をフリーランスでやっているクリエイターが多いんですね。クリエイティブの人たちの層が厚いので、おもしろいプロジェクトがあれば、一緒にやってくれるメンバーがおのずと見つかるんだなと感じました。

オンラインに可能性を感じて

『報道バズ』の一幕

今はパンデミックの渦中ですし、安全になるまでは業界が心配ですね。ただ、オンラインに可能性を感じてはいます。今まで役を取れたアメリカのドラマや映画がオンラインのものが多かったんです。テレビ局だと視聴者がアメリカ在住なので、アジア人の役を日本人が演じていようが非日本人が演じていようが、日本語のセリフがめちゃくちゃだろうが視聴者には気になりにくいと思うのですが、NetflixやHulu、Amazonなどのオリジナル作品は世界中で見られるので、日本の視聴者が見た時に正しい配役かがすぐに分かってしまいます。そういうところからも、またほかの社会現象からも、エンタメ業界の流れ全体が「オーセンティックな配役を」という風になりつつあるように感じています。マイノリティに新しい機会を生み出すことができるオンラインには可能性を感じています。今後、おもしろい役がやれたら良いなと思っています。殺陣とアクションを習っているので、アクションもやってみたいですね。

デルックとしては、インディーズのチームなので、『報道バズ』のきっかけみたいに仲間が集まらないと制作をスタートできません。アイデアはいっぱいあるので、ぜひ『報道バズ』をたくさんの人に見ていただいて、一緒に作っていける仲間を見つけていきたいです。

読者へ一言

このコロナ禍で大変な思いをされている方がたくさんいらっしゃると思います。今は最中という状況で一人一人のリアリティがまったく違いますが、その個々のリアリティがケーススタディになって、のちに全体像が見えてくるのだと思います。

実は私の友人がFacebookで「ニューヨーク情報共有」というグループを立ち上げました。私もモデレーターとして関わっているのですが、日本語で在住者向けの情報を共有するグループで、日本帰国時の飛行機のレポートや感染者の情報共有など、未曾有の状況の中でお互いに情報を交換して助け合うためのグループです。書き込みを見ていると、日本人の結束というか、相互扶助の温かさを感じますね。とにかく今は、みんなでパンデミックを乗り切りましょう。

プロフィール
東京と北京での芸能活動を経て、現在はニューヨークを拠点に活動する俳優。日本人クリエイターチーム「Derrrrruq!!!(デルック)」のメンバー。全米映画俳優組合、米国テレビ・ラジオ芸能人組合(SAG-AFTRA)、全米舞台俳優協会(AEA)加盟。出演作に『Maniac』(Netflix)、『The Newsroom』(HBO)、『Unbreakable Kimmy Shmidt』(Netflix)、『Time’s Journey Through a Room』(The Play Company)など。俳優、プロデュース、モデル業のかたわらブログやコラム執筆(ELLE ONLINE、Huffpost Japan、NYジャピオンほか)も手がける。ブログ:https://note.com/mahohonda
Instagram:@mahohonda_
Derrrrruq!!!:https://www.derrrrruq.com/
HodoBuzz(Amazon.com):https://www.amazon.com/HodoBuzz/dp/B08CNG1Q43
Twitter:@derrrrrq

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齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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