バックグラウンドチェック(身辺調査)を詳しく解説 〜3人に1人が犯罪歴のある国アメリカ〜
- 2024年8月19日
「就職・転職」「賃貸」「家や車の購入などにおけるローンの審査」など
アメリカに住んでいると、様々な局面で経験する「バックグラウンドチェック」。
NCSL(全米州議会議員連盟)によると、77億人のアメリカ人、つまり国民の3人に1人が逮捕・有罪判決を含む犯罪歴があるそう。
日本の感覚からすると驚くべき数字ですが、社内人事としてバックグラウンドチェックのレビュー経験がある筆者としては納得の数字です。
雇用主、そして現任の従業員の皆様を守るために欠かすことのできないバックグラウンドチェックに関して、今回は一挙解説していきたいと思います。
1. バックグラウンドチェックとは
米国最大の人事コミュニティHR.comの調査によると、アメリカ国内でのバックグラウンドチェックの浸透率は以下の通り。どれだけ身辺調査がこの国で普及しているかが見て取れます。
94% の雇用主が犯罪歴を
75% の雇用主が、学歴などの犯罪以外の履歴を
雇用前に調査している。
この高い普及率の背景には、大きく以下4つの理由があると考えられます。
- 1. 犯罪の多いこの国で安全な採用を行う為
- 2. 経歴詐称が多い為
※参照:経歴詐称率世界No.1はアメリカ?!リファレンスチェック徹底解説 - 3. 日本では政府のみが知りうる犯罪歴などの情報が、アメリカでは一般公開されている為
- 4. ネグリジェント・ハイヤリングを避ける為
4番目の内容に関し、補足させていただきます。
「過失採用」や「怠慢雇用」を意味する「ネグリジェント・ハイヤリング」という言葉。採用前の適切な調査が行われず仮に従業員が事故や事件を起こした場合、企業も責任が問われ、訴訟の対象になることがあるのです。
2. 調査される内容
HR.comの調査によると、以下のような内容を調査するケースが多いとのこと。
身元確認や職歴確認に加え、最近ではソーシャルメディアの調査への関心が高まっているようです。
ここで雇用主の皆様が気をつけたいのは、EEO(雇用機会均等法)の観点から、調査項目が職務・業界に即しているか、ということ。
どんな内容でも無闇に調査をしてもいいという訳ではなく、下記の例のように関連性を持つ必要があります。
- 営業職、物流系など運転が発生するポジション=個人の運転記録を確認
- 経理や財務などお金を扱うポジション=個人の支払履歴を確認
また人によって調査内容を変えることも差別とみなされてしまうので要注意です。
3. 実施の流れと注意事項
人事部自ら裁判所を訪れて犯罪歴を確認するなど、かつてはマニュアルで行われ、労力のかかったバックグラウンドチェック。HRテックの台頭とデータベースのオンライン化により、昨今では安価かつスピーディーに調査が行えるようになりました。
今回は近年人気を集めているCheckr(チェッカー)を例にとり、ご紹介してみましょう。
概要 | 内容・詳細 |
---|---|
料金形態 | ベーシックプラン $29.99/人〜 エッセンシャルプラン $54.99/人〜 プロフェッショナルプラン $79.99/人〜 |
所要時間 | 情報提出より3~5営業日ほど |
雇用主が必要なアクション | WEBサイト上のテンプレートを使用しインビテーションを送付 |
候補者が必要なアクション | 氏名・生年月日・ソーシャルセキュリティナンバーなどの必要情報を入力 |
また、バックグラウンドチェック実施にあたり準拠しなくてはならない複数の法律が存在します。
以下はその例です。このような法的な観点でもCheckrが誘導してくれますので安心ですね。
連邦法:FCRA(Fair Credit Reporting Act)
雇用主はバックグラウンドチェック実施前にその旨を採用候補者に通知し
書面での同意を得る必要がある。
州法:FCA(California Fair Chance Act)
内定通知を出すまで、バックグラウンドチェックを実施してはならない
健全に事業を運営するために、避けては通ることのできないバックグラウンドチェック。かと言って、怯える必要もありません。STS Careerが過去転職をお手伝いしてきた求職者様で、バックグラウンドチェックの結果が理由で内定が取り消されたケースはありません。アメリカでは馴染み深いものであるということを知ってもらえるきっかけとなればと思います。
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