【ニューヨーク不動産最前線】テクノロジーとエージェント

新年明けましておめでとうございます。

2023年はchatGPTやBardといった生成AIが登場してあっという間に世の中に広まった印象があります。不動産業界も例外ではありません。

今や不動産業界も、インテリジェント・テクノロジーの活用なくして成り立たない業界となっています。主な不動産会社は各社ともに、自社のウェブサイト上で物件検索ができるようになっています。ただ検索するだけではなく、ワークスペース内で複数の物件を比較したり、機能やアメニティで絞り込んで順位を並べ替えたりもできます。当社のツールではさらにお客様ごとにカスタマイズした検索が可能であり、メールやテキストを介さずにツール内でリアルタイムに直接共同作業や意見交換ができます。

不動産会社のサイトでは、物件の市場価値を正確に評価・把握するための市場分析ツールやモーゲージの計算ツールも提供されています。気に入った物件の毎月の支払い金額も簡単に出すことができて、物件選びの指針にもなっています。

これに加えて生成AIが導入され進化すれば、不動産取引も、一見してネット上で飛行機の予約をするのと同じように自力で完了できるかもと考えてしまいます。ただし、実際の取引は物件を特定したところから始まるのです。一般的に言われる「UnGoogleable information(Googleで見つけられない情報)」ですね。

特定した物件が本当に自分に合っているかどうかの検証(立地やビルの特性)、競争相手がいた場合に売り手にどのようにアピールするか、有利なオファーの出し方等は、ITは教えてくれません。膨大な量の必要書類の収集方法やボード入居審査の書類の書き方、提出のタイミングなどは緻密なスケジューリングが必要です。これらを誤ると途中で契約が解除となる場合もあるため、そのためのプロテクションも用意しておく必要があります。クロージングまでの道のりは長く、関係する人や機関が複数絡んでくるため予測できない展開が頻繁に発生します。クロージングまでに起こりうる障害を予測して、プランB、Cも用意することが必要です。

物件探しの段階は物件購入の一連のステップのなかで、もっとも楽しくてワクワクする段階なのです。しかし、物件を特定した後に続く数カ月にわたるクロージングへのステップは、常に売買当事者(特に買い手)には強いストレスがかかります。仕事との両立が難しいこともあります。お客様のアドバイザーとして、実務のみならず精神面での手助けもしてくれる経験豊富なプロのエージェントは、ITやAIと同様に、むしろそれ以上に取引成立に不可欠な存在だと感じています。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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