日本の年金 ~公務員、学校職員などが加入する共済年金~

海外居住者でも以前日本で日本の年金に加入していた人は、たとえその期間が短くても一定の条件を満たしていれば老後に受給できます。それも現在の居住国の年金と日本の年金の両方を受給することができます。私が約15年前に海外居住者向け日本の年金申請手続きのサポート活動を始めたころは、海外居住者の中で年金受給が可能となる対象者は今ほど多くはありませんでした。しかしその後年金制度の改正(※1)や、海外居住者の申請手続きの難しさ(※2)に対する改善措置などにより受給対象者が広がり、また海外居住者に対するPR活動の効果もあって、より多くの海外居住者が日本の年金申請手続きができるようになりました。

ただそうはいっても日本国内居住者に比べると、その申請手続きはまだ複雑でわかりにくく自分はどのように手続きを進めればよいかわからない、という人の声も依然としてあります。

今回はそうした海外居住者から見た日本の年金手続きのわかりづらさのうち、年金の運営団体別の年金の種類について紹介します。

なお、当コラムでは過去にも年金について数多く紹介していますが、下記リンクは今回のテーマに関連したものです。あわせてお読みいただけると理解度が深まります。

1.年金の運営団体と種類

広く知られている日本の公的年金としては、厚生年金国民年金があります。いずれも日本年金機構が運営、管理するもので、厚生年金は会社員などの勤め人、国民年金はそれ以外の自営業者、主婦、学生、無職の人が加入します。年金加入者は「被保険者」といい、その種類によって1号から3号まであります。下記年金の種類と被保険者を図にしたものです。

※赤線枠内が公的年金部分ですが、関連するその他の年金も参考に記載しています

すべての被保険者は「1階部分」と呼ばれる国民年金に加入し(加入は義務)、そのうち2号被保険者のうち会社員は「1階部分+2階部分」の国民年金厚生年金に加入します。ここで2号被保険者の内、公務員、学校職員などは厚生年金ではなく共済年金となります。

この公務員(国、地方)や学校職員(教師、事務員)が加入する共済年金は各共済組合によって運営・管理されています。各共済組合と書きましたが、所属する機関によっていくつもの組合があり、問い合わせをするだけでも連絡先がわからないなどの不便さがあります。これを解消するため平成27年(2015年)10月1日に「被用者年金一元化法」が施行され、これまで厚生年金共済年金に分かれていた2号被用者の年金制度が厚生年金に統一されました。(※3)

これにより、一部の共済年金の被保険者については日本全国にある日本年金機構の年金事務所でも申請手続きができるようになりました。

2.共済組合について

すべての民間事業者(企業)の就労者(※4)が加入しその規模も巨大な日本年金機構に対し、公務員、学校職員が記入する共済組合は所属する機関ごとに各共済組合が存在します。以下が主な共済組合となります。

  • 国家公務員共済組合(連合会)
  • 地方公務員共済組合(連合会)
  • 警察職員共済組合
  • 公立学校共済組合
  • 日本私立学校振興・共済事業団 など

各共済組合の役割は、就労者(組合員)やその家族の福利厚生の運営・管理で、年金以外の健康保険や家族向けの宿泊施設など、民間企業に対する日本年金機構(健康保険組合)と同等のサービスを提供します。上記の一覧は年金申請手続きをなるべく一本化するためにそれぞれの共済組合が一本化され連合会形式となっていますが、公務員共済組合ではさらに細かく各省庁や都道府県別に支部が分かれています。

3.年金手続きに関する課題

2015年の年金一元化に伴い、共済年金加入者だった人も厚生年金として日本年金機構で手続きが可能となりました。これは今まで転職などをして厚生年金共済年金の両方に加入していた人が別々に手続きしなければならなかったものが、全国にある年金事務所で手続きできるようになり、これだけでも大きな前進と言えます。ただまだ一元化への進展は不十分であり、特に海外居住者にとってはまだ手続きのハードルが高い部分はあるようです。

これまで多くの方々の年金申請手続きを行ってきた実務上の経験から、いくつかあげてみます。

  • 国家公務員共済組合、地方公務員共済組合では各省庁や都道府県ごとに支部があり、場合によってはさらにその下の最終所属先事業所・施設の年金部門が管轄窓口となります。仕事柄異動も少なくない職種ということもあり連絡すべき窓口が見つけづらい、事務所も都道府県に1か所というケースが多く不便である(郵送での提出は可能)。
  • 共済年金厚生年金と一元化され10年が経過するが、共済年金のみの加入者や、一元化された2015年以前に年金受給開始年齢を迎えた人の手続きは共済組合のままである。場合によっては共済組合、日本年金機構の2か所での手続きが必要なこともある。
  • 各共済組合の担当職員への海外居住者手続きに関わる情報共有が遅れており、提出書類など正確な情報が入手しづらい。

いかがでしょうか?この他にも共済組合の担当窓口の数が限られているので、海外から問合せの電話をしてもつながりにくい、フォームの電子化が進んでいない(時間のかかる海外郵便での書類提供となる)、などの課題もあります。手続きはわからない、進められずに困っている場合は弊社へご相談下さい。

※1:要件である年金加入期間の短縮化
※2:国によって異なる各種証明書や、海外居住者対応に関する内部職員への情報共有
※3:詳しくは下記日本年金機構を参照https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/kyotsu/joho/ichigenka/20150917.html
※4:主に正規雇用された就労者のみとなりますが、2024年より一部非正規雇用者へも拡大

本コラムの英訳版/English translated version of this Column

http://www.life-mates.jp/Eng_Column9

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、介護・葬儀・相続など日本在住の老親のサポート)を行う。

●豊富な実績に基づくていねいなサポートで
ひっきりなしに持ち込まれるお客様からの国際手続きに関する多種多様なご依頼、ご相談(お悩み)を断り切れず休日返上で対応しているうちに、気がつけば(年金、日本帰国といった当初の事業以外の)あらゆる分野のノウハウを備えたオールラウンドコンサルタントに。当社で対応できないケースでも、的確な解決方法や提携先の他分野専門家を紹介します。

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