アメリカのすべてを体験できる観光都市・コロラド州デンバー

文&写真/石井光(Text and photo by Akira Ishii)

Denver

アメリカ全土の天気予報を見るたびにとても気になる都市がある。コロラド州のデンバーだ。アメリカの主要都市のなかでも一日の気温差が激しい。12月のある日、最低気温は−8℃、最高気温は10℃を超え、朝はシカゴよりはるかに寒く、日中はサンフランシスコ並みだった。またある日は氷点下で大雪かと思えば、翌日は晴天で15℃を超す暖かさ。

天気一つとってもバラエティがあるデンバーは、自然の部分も都会の部分も兼ね備えた都市で、海がない以外は何でもあるのではないかと思わせる。今回は、アメリカの住みたい都市のなかでいつも上位に来る、アメリカ西部の中心地デンバーを紹介したい。

コロラドを表す3つの「B」

コロラド州の観光局の人が言うには、コロラドは3つの「B」で表せるそうだ。その3つとは、「BEER」「BAND」「BIKES」。アメリカ3大BEERの一つであるクアーズだけでなく、地ビールの醸造所が州のいたる所にある。音楽ではクラシックやブルーグラスが有名で、ロックやR&Bでも、古くはEarth Wind & FireからOne Republicまで幅広いジャンルのBANDを数多く輩出している。デンバーや隣町ボウルダーは、年間約300日の晴天を誇り、BIKE(自転車)天国として全米に名を馳せている。

さて、3つのBのように、デンバーを表すには何か適当なアルファベットがないかと考えたところ、D、E、N、V、Rで表せることに気づいた。

デンバーを表す5つの魅力

犬を連れて入れるDenver Beer CO.

まずDowntown Denverは公園や歩きやすい場所が多く、「Dog Friendly」だ。町歩きをすると、時間を問わずたくさんの犬の散歩を見かけることだろう。Denver Beer Co.という地ビールの醸造所では、犬連れでテイスティングできるほどだ。Downtownの中心街16th StreetにはMall Rideという無料バスが走り、地元民だけでなく観光客にもありがたい。

「Entertainment」と「Experience」に溢れるデンバーはもちろんバンド活動も盛んで、町には音楽が溢れる。デンバー美術館やAmerican Museum of Western Artなどで静かに芸術を鑑賞することもできるし、少し歩くだけで巨大な青い熊や赤い椅子に乗った馬、正体不明の不思議なオブジェなど、数々のパブリックアートも体験できる。

Denverにはパブリックアートがいっぱい

デンバーには「Neighborhood」と呼ばれる個性的な地区が複数ある。代表的なNeighborhoodは、ランニングや自転車、散歩が楽しめ、食事する所も多いRiverfrontや、アートエリアとして人気のRINO(ライノ=Riverfront Northの略)、デンバー発祥の地でUnion StationがあるLoDo(ロードー=Lower Downtownの略)、高級ショッピングセンターのあるCherry Creekなど、デンバーの中でも各地区のおらが自慢や特徴がある。

見どころ多数のデンバー市内

Nは「Number One」のNでもある。デンバーは全米で最大の公園システムを誇り、市内には大小200もの公園がある。全米でもっとも高地に州議事堂があるのもデンバーで、その高さは海抜1600メートルだ。コインの製造も全米一。ユナイテッド航空のハブ空港であるデンバー国際空港は、敷地面積が国で最大を誇っている。

Vは「Varieties」。芸術、音楽などの文化的なものに加え、州の政治の中心地であり、西部のビジネスの中心でもある。スポーツも盛んで、アメリカ4大プロスポーツのチームがすべてある。スタジアムやアリーナはすべてデンバー市内にあり、利便性もよい。大リーグやフットボールはロッキー山脈を目にしながら、迫力のプレイを楽しめる。西部だけにロデオも盛んだ。全米各地だけでなく、全世界から人が集まってくる観光都市でもあるのもうなずける。

最後はR。標高4000メートル級の山々が連なる雄大な「Rocky Mountains(ロッキー山脈)」。市内のどこにいてもこの山脈を臨むことができるのはデンバー市民の特権であり、観光客にとっても心に残る風景だ。

そして、過去にビートルズやU2が演奏をしたことでも知られる、ダウンタウンから西に車で20分の所にあるデンバーのランドマーク、Red Rock Amphitheater(レッドロック野外劇場)。日中は青空のもと、夕方はサンセットとともに、夜は星空の下でコンサートを見ることができるのもデンバーならでは。この野外コンサート会場でライブを体験すると、生み出されたパフォーマンスが、赤い岩や大自然とともに稀有な記憶として脳裏に焼き付くことだろう。

赤い岩が目印のレッドロック野外劇場

この野外劇場では、数々の著名人たちがライブを行ってきた

都会的なものも自然も、歴史も文化も、すべてが揃っているデンバー。ユニクロやラーメン屋までできて、日本との接点も徐々に増えてきた。Dog FriendlyでExcitingなNeighborhood、VariousなExperienceをしてRocky Mountainsを眺めて、また来たいと思わせるデンバー。住むことはできなくても、どのシーズンでもまた行きたいと思わせる場所である。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

石井光 (Ishii Akira)

石井光 (Ishii Akira)

ライタープロフィール

旅行会社勤務。広島出身。在米12年。ジョージア、ウィスコンシン、ニュージャージー、テキサス、カリフォルニア、ワシントン州を経て、現在2度目のニュージャージー生活。その間アメリカの都会から地方まで40州200都市以上を訪問。あるときは真正面から、またあるときは裏側から、アメリカ各地をご紹介します。

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る