シリーズアメリカ再発見⑫ 南北戦争150周年
ゲティスバーグ~モンティチェロ 霊場街道をゆく

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 

戦場まで行進 Photo © Mirei Sato

戦場まで行進
Photo © Mirei Sato

To Chancellorsville
チャンセラーズビルへ

 カルペッパーの東にあるチャンセラーズビルへ向かった。1863年5月1日から4日間にわたって激戦が繰り広げられた古戦場がある。ちょうど私が訪れた日がその150周年にあたり、「Battlefield Re-enactment」(戦闘を再現するイベント)が行われていた。

 現地に近づくと渋滞で、駐車場もほぼ満杯。大人も子供も馬までも、19世紀の服装でキメている。プロが披露するショーではない。市民参加の真剣行事だ。「re-enactor」と呼ばれるグループが全米各地にあって、日頃から「訓練」を積んでいるそうだ。

 参加人数でいえば毎年7月のゲティスバーグの再現イベントが最大だが、南軍側ならあまり楽しめない。チャンセラーズビルの戦いは、南軍の勝利だった。軍服の色がネイビーなら北軍、グレーなら南軍だ。見回すと、圧倒的にグレーが多い。

 戦闘が始まるのは午後遅くだけれど、準備は朝から始まっている。銃を構えて行進の訓練、大砲のチェック、草むらに這いつくばって匍匐前進…。上官の怒鳴り声が響く。将軍役なら護衛もついてテントでゆったりできる。とはいえ希望すれば誰でも演れるわけではなさそうだから、団体内部でランクやルールがあるのに違いない。

 戦場のすぐ外には何百というテントがあって、女性たちが鉄鍋で炊き出しをしている。南北戦争には、男性を装って入隊した女性も結構いた。兵士役の女性の姿もちらほら見えた。

 戦闘シーンの再現は、生半可ではない。火花が炸裂し、大砲の煙で空が灰色になった。騎馬隊と歩兵隊、大砲部隊が連携して北軍を追いつめる。けが人も出た。戦闘が終われば解散、と思ったら大間違いだ。「やったぞ、ノースカロライナ隊!」。そんな観客の声援と妻子の拍手を受けながら、連隊ごとにテントへ。戦場で寝泊まりして、4日間しっかり戦うのである。


 

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