ワインライターとして、またビジネスコンサルタントとして数多くのワインメーカーと関わってきて、決めていることがある。それは、私の力で少しでもお役に立てることがあれば、応援しようということ。もちろん無償だ。日本にカリフォルニアワインを紹介してきたが、これもワイナリーから一切金銭を受け取っていない。単に、紹介する価値のあるワインだと思ったものだけをインポーターにつないでいる。そして今まで関わってきたのは、いずれも小さなワイナリーで、彼らは転職組か、海外からアメリカへワイン造りに来た人ばかりだ。醸造現場は、若くて才能がある、力持ちの白人の世界だ。ときどき日本人の醸造希望者に出会うが、彼らにはぜひアメリカで成功して欲しいと言ってきた。そんな時、日本人の友人から「カリフォルニアで日本人のワインブランドを立ち上げたいが、力を貸してくれないか」と打診された。
うーん。私は、もともと「日本人だから」とか「女だから」とかいう論理に冷淡で、「好きでアメリカに来たのなら、現地人の世界で勝負して勝つべし!」という鉄則がある。「なんか、日本人同士が外国でくっついて、日本人相手の仕事をするのって、カッコ悪ーい!」なんて、内心思っているところがあった(注:もちろん、日本人にしかできない仕事も貴重です)。とはいえ、いい年をして「遊び心」がないわけじゃない。「じゃあ、自分たちでワインを造って、ブランドを立ち上げてみよっか?」となった。
そうして3人の大和撫子で立ち上げたのが「カリフォルニア ナデシコ ワインプロジェクト(仮称)」だ。私は日米での広報とワイン教育を担当し、ワインメーキングにもかなり口を挟む。ブドウを供給するのは、25年間ソノマバレーの中枢でワイン用ブドウ園を経営してきた中井夫妻。写真の通り、昨年9月の猛暑が訪れる前夜に、シャルドネを一緒に収穫した。美しいブドウだった。ご夫人の貴子さんは、Nakai Vineyardワインを日本で販売している実績もあり、日本側の広報と事務会計を担当。そしてワインメーキングを担当するのが友人の平林園枝さん。当地カリフォルニア大学デービス校で醸造の学位を取得した後、ニュージーランドのKusuda Wineをはじめ、南米、米国を代表する最優良ワイナリー(リトライやスティーヴ・マサイアソン)で修行。もともと長野のリンゴ農家出身なので、畑作業にも精通しているナデシコだ。自分たちのワインを造る施設は、ナパのクラッシュパッド(ブドウを持ち込み、自分のブランドをそこで造る賃貸施設)にした。私たち3人のほかに、プロジェクトを担当してくれるワインメーカーのトップ・若山さんも日本人で、 まさに日本人のプロチームが集まってしまった。
このプロジェクトを立ち上げる際に、3人で同意したことがいくつかある。まず、最初に造るワインはシャルドネ。スタイルはあくまでカリフォルニアらしく、しかも酸味とフルーツのバランスの良いエレガント系(ナデシコ?)に仕立てること。そして、なるべく手を加えないヨーロッパ方式で造ること。できたワインは、日本で紹介すること。顧客に対しては、できれば3人揃って、説明兼試飲会を開くこと。そこで、ブドウの収穫から瓶詰めまでの過程を、そしてこのワイン製造に関して起きたさまざまなストーリーをシェアすること。などなど。
今、私たちの摘んだシャルドネはアルコール発酵を終え、13の樽で春の到来を待っている。つい先日も味見に行き、美しい成長を確認してきた。これから、正式なワインの名前やラベルを決めていくが、「みんなのワイン」ならば、名前やデザインを公募しても良いのではないかと思っている。ご意見があればぜひ(yuki@wisteriawine.com、または フェイスブックNadeshiko Winesまで)。
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