第60回 イタリアの躍進は続くか?

文&写真/斎藤ゆき(Text and photos by Yuki Saito)

トスカーナでブルネッロとペアリング
Photo © Yuki Saito

 世界の主要ワイン市場を見ていると、 イタリアワインの躍進が目につく。女性層を中心に欧米で大ブームになったモスカト(マスカット)と、シャンパン人気にあやかって市場シェアを大きく伸ばしたプロセッコ。ともにフルーティで酸味は控えめ。アルコール度数も価格設定も低めで、一般消費者受けする商品だ。

ピノ・グリージョやキャンティでおなじみのイタリアワインは世界中に流通しているが、 今後のイタリアワインの伸び率は、世界最大のワイン消費国アメリカと、ワイン貿易をリードするイギリスの2カ国が握っていると思われる。米国は最大のイタリアワイン輸入国で、16年度に18億ドル相当を輸入。英国は2位だが、16年度は米国を抜いて最大のプロセッコ輸入国になった。もっとも輸入事情は為替レートに左右される。今の強い米ドルなら輸入品(イタリアワイン)に対する購買力があるが、ブレグジット(イギリスのEU離脱)の影響で割安になった英ポンドでは EUからの買い物がままならない。そんな裏事情もあり、今までシャンパンの最大輸入国だった英国が、割安のプロセッコに注力したのだろう。

この2カ国の消費者動向と仕掛け人(ワイントレード)を分析していくと、次のヒット商品が見えてくるのではないか。両国に共通するのは、ミレニアル世代(1980年〜2000年初頭生まれ)の台頭とワインの供給ルートの二極化だ。 倹約志向のあるミレニアル世代はクラフトビールやカクテル好みで、ワインの消費はイマイチ。彼らを取り込むことが、ワイン業界の課題だ。ミレニアルはちょっと変わった、クラフト的な「おもしろい」銘柄に興味を示す傾向があるという。イタリアにはうってつけに何百という地場ブドウがあり、仕掛け人はこちらに注目しているようだ。米国ではソムリエを中心に「シチリアワイン」や、「チロルの白ワイン」をプロモートし、玄人受けしているが、英国でも小回りのきく中小の輸入業者が、割安でおもしろい地場ブドウ品種ワインを紹介し始めているという。

チロル地方の珍しい品種の畑
Photo © Yuki Saito

 米英では供給ルートの M&Aが続き、現在の構図は「超大手酒販企業数社」と「その他大勢」に二極化されている。大手はスーパーやレストランチェーンなどを取り込み、当たり前の有名ブランドや大量生産ワインを流通しているが、中小業者の持ち味はフットワークの軽さと、自社が特化した分野の海外ワイン生産者との太いパイプだ。ポートフォリオは小さいながらも、大手は振り向かないおもしろい少数生産ワインなどを発掘するのが得意だ。しかもこういうワインは概して仕入れ値が安いので、ある程度の利幅が確保できる。イタリアは、小さな輸入業者にとっても大手にとっても、宝の山になり得る。

そのほかの注目筋では、ヒット商品のモスカトとスパークリングワインを掛け合わせたスパークリング・モスカト(イタリアでは「アスティ」と呼ばれる歴史ある飲み物)や、ロゼブームに便乗して有名地場ブドウ(サンジョベーゼ=キャンティやブルネロワインのブドウ、ネビオロ=バロロ)で作るロゼがある。またすぐに飲めるワインとしてプロモートしやすいのは、大量生産のブレンドワイン、バルポリチェラ(ボジョレーと類似)や赤ワインの発泡酒、ランブルスコだろう。これらを冷やして飲むというのが、一昔前のアメリカで流行ったが、このカムバックはあるかもしれない。いずれにせよ、懐が深いイタリアワインに対するワイントレードの今後の動きに注目したい。

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斎藤ゆき (Yuki Saito)

斎藤ゆき (Yuki Saito)

ライタープロフィール

東京都出身。NYで金融キャリアを構築後、若くしてリタイア。生涯のパッションであるワインを追求し、日本人として希有の資格を数多く有するトッププロ。業界最高峰のMaster of Wine Programに所属し、AIWS (Wine & Spirits Education TrustのDiploma)及びCourt of Master Sommeliers認定ソムリエ資格を有する。カリフォルニアワインを日本に紹介する傍ら、欧米にてワイン審査員及びライターとして活躍。講演や試飲会を通して、日米のワイン教育にも携わっている。Wisteria Wineで無料講座と動画を配給

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