青森ねぶた ロサンゼルスの夜を灯す

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

Photo © Mirei Sato

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 東北の夏祭り「青森ねぶた」が、ロサンゼルスに再び上陸した。

 8月16日、日系アメリカ人の伝統の祭り「二世ウィーク」のグランドパレードの最後に登場。軽快なおはやしの音に合わせ、「ラッセーラー、ラッセーラー」の掛け声で飛び跳ねる「はねと」たちを引き連れて、巡行。歴史的日系人街、リトル東京の夜を燃やした。

 ねぶたは、青森から日本有数のねぶた師である竹浪比呂央さんがロサンゼルス入りしてつくった。タイトルは「津軽海峡義経渡海」。主役は源義経だ。

 兄・頼朝に追われて、岩手・平泉で死んだ義経だが、実は生きて青森へ逃げた。しかし海を前にして立ち往生。すると、義経が連れていた馬が突如龍に変身し、それに乗って津軽海峡を飛び越え、北海道へ渡ることができた。義経はやがてモンゴルに到達し、そこでチンギス・ハーンになった--。

 日本には、そんな伝説がある。げんに、青森に「竜飛岬」という地名もあるぐらいだ。

ねぶた師の竹浪比呂央さん。「ねぶたは、あかりの彫刻。自分の作品がライトアップされた瞬間は、いつもワクワクする」=8月13日、ロサンゼルス・リトル東京で Photo © Mirei Sato

ねぶた師の竹浪比呂央さん。「ねぶたは、あかりの彫刻。自分の作品がライトアップされた瞬間は、いつもワクワクする」=8月13日、ロサンゼルス・リトル東京で
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 竹浪さんは、この伝説をもとにデザインを決めた。いかにも「ねぶた」らしい、武士の勇ましさと躍動感がみなぎっている。

 来年3月に開通予定の「北海道新幹線」(青森と函館を結ぶ)を心待ちにして沸き立つ、青森の人たちの心も重ね合わせた。「アメリカの人たちに青森をアピールしたい」と竹浪さん。義経と同じように、海を渡ってアメリカへやってきた日系移民たちの苦労と成功にも、思いを馳せたという。

 二世ウィークは、アメリカで最も長く続くエスニック・コミュニティーの祭りで、今年で75回を迎えた。毎年夏に開かれることから、日系アメリカ人にとっての「お盆」とも形容される。全米各地に散らばった日系移民とその子孫たちが再会し、伝統と文化を継承する場になっている。

 二世ウィークにねぶたが初めて参加したのは、2007年だ。やはり竹浪さんがデザインした「武田信玄」で、青森ですべて制作し、ロサンゼルスに搬送した。大がかりなイベントが話題を呼び、観衆の中には、遠い故郷を思って涙ぐむ高齢の2世たちも多くいた。

パレードには青森から約80人が参加。出発前に、地元の日系人らとともに気勢をあげた Photo © Mirei Sato

パレードには青森から約80人が参加。出発前に、地元の日系人らとともに気勢をあげた
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 それ以来、ロサンゼルスの日系人がつくる小規模な「コミュニティーねぶた」でパレードに参加。青森県人会が中心となって、今年、「再びロサンゼルスに本物の青森ねぶたを」という願いが実現した。竹浪さんの指導を受けながら、紙貼りなどの製作工程にも関わった。

 渡米してパレードに加わった若井敬一郎・青森商工会議所会頭は、「海外にねぶたをもっていくことはあるが、今回は地元ロサンゼルスの人たちが一緒につくってくれたことに意義があり、とても嬉しい」と話した。

 加賀谷久輝・青森市副市長は、「沿道の人たちから元気をもらった。アメリカのみなさんに、いつか青森に来て『ねぶた』をぜひ見てもらいたい」と話していた。

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佐藤美玲 (Mirei Sato)

佐藤美玲 (Mirei Sato)

ライタープロフィール

東京生まれ。子供の時に見たTVドラマ「Roots」に感化され、アメリカの黒人問題に対する興味を深める。日本女子大英文学科アメリカ研究卒業。朝日新聞記者を経て、1999年、大学院留学のため渡米。UCLAアメリカ黒人研究学部卒業・修士号。UMass-Amherst、UC-Berkeleyのアメリカ黒人研究学部・博士課程に在籍。黒人史と文化、メディアと人種の問題を研究。2007年からU.S. FrontLine誌編集記者。大統領選を含め、アメリカを深く広く取材する。

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