青森ねぶた ロサンゼルスの夜を灯す
文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)
- 2015年9月5日
東北の夏祭り「青森ねぶた」が、ロサンゼルスに再び上陸した。
8月16日、日系アメリカ人の伝統の祭り「二世ウィーク」のグランドパレードの最後に登場。軽快なおはやしの音に合わせ、「ラッセーラー、ラッセーラー」の掛け声で飛び跳ねる「はねと」たちを引き連れて、巡行。歴史的日系人街、リトル東京の夜を燃やした。
ねぶたは、青森から日本有数のねぶた師である竹浪比呂央さんがロサンゼルス入りしてつくった。タイトルは「津軽海峡義経渡海」。主役は源義経だ。
兄・頼朝に追われて、岩手・平泉で死んだ義経だが、実は生きて青森へ逃げた。しかし海を前にして立ち往生。すると、義経が連れていた馬が突如龍に変身し、それに乗って津軽海峡を飛び越え、北海道へ渡ることができた。義経はやがてモンゴルに到達し、そこでチンギス・ハーンになった--。
日本には、そんな伝説がある。げんに、青森に「竜飛岬」という地名もあるぐらいだ。
竹浪さんは、この伝説をもとにデザインを決めた。いかにも「ねぶた」らしい、武士の勇ましさと躍動感がみなぎっている。
来年3月に開通予定の「北海道新幹線」(青森と函館を結ぶ)を心待ちにして沸き立つ、青森の人たちの心も重ね合わせた。「アメリカの人たちに青森をアピールしたい」と竹浪さん。義経と同じように、海を渡ってアメリカへやってきた日系移民たちの苦労と成功にも、思いを馳せたという。
二世ウィークは、アメリカで最も長く続くエスニック・コミュニティーの祭りで、今年で75回を迎えた。毎年夏に開かれることから、日系アメリカ人にとっての「お盆」とも形容される。全米各地に散らばった日系移民とその子孫たちが再会し、伝統と文化を継承する場になっている。
二世ウィークにねぶたが初めて参加したのは、2007年だ。やはり竹浪さんがデザインした「武田信玄」で、青森ですべて制作し、ロサンゼルスに搬送した。大がかりなイベントが話題を呼び、観衆の中には、遠い故郷を思って涙ぐむ高齢の2世たちも多くいた。
それ以来、ロサンゼルスの日系人がつくる小規模な「コミュニティーねぶた」でパレードに参加。青森県人会が中心となって、今年、「再びロサンゼルスに本物の青森ねぶたを」という願いが実現した。竹浪さんの指導を受けながら、紙貼りなどの製作工程にも関わった。
渡米してパレードに加わった若井敬一郎・青森商工会議所会頭は、「海外にねぶたをもっていくことはあるが、今回は地元ロサンゼルスの人たちが一緒につくってくれたことに意義があり、とても嬉しい」と話した。
加賀谷久輝・青森市副市長は、「沿道の人たちから元気をもらった。アメリカのみなさんに、いつか青森に来て『ねぶた』をぜひ見てもらいたい」と話していた。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします