ガールズ・パワーのスカッと下克上 「Joy」(12月25日公開)
文/はせがわいずみ(Text by Izumi Hasegawa)
- 2016年1月1日
「Silver Linings Playbook」「American Hustle」に続き、デヴィッド・O・ラッセル監督とジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、ブラッドリー・クーパーが三度目のタッグを組んだのが本作。筆者は彼らのタッグ作品に三部作という印象を受ける。男子リード映画の「Silver Linings Playbook」、男女パワー均等映画の「American Hustle」、そして本作は昨今の流行に乗ったガールズ・パワー映画。
アイデア商品のTVショッピングで巨万の富を築いた実在の女性実業家ジョイ・マンガーノの半生を描いたコメディー・ドラマの本作は、アメリカ人の好きな「負け組」の下克上が展開し、スカッとする。女性軽視に反旗を翻すのだが、ラッセルらしいユーモアとドラマ演出で、フェミニスト映画にしていないところも魅力だ。ただ、やや強引な流れや冗長な場面があるのも否めない。
ヒロインには、ラッセルのミューズと化したローレンス。監督の惚れ込みぶりが分かるローレンス賛歌なシーンも堂々とこなし、25歳ながらシングルマザーをリアルに表現するだけでなく、重鎮デ・ニーロと互角に渡り合う肝っ玉の据わった演技をやってのけた。
本作でクーパーは、ジョイの人生を変える重要な人物に扮するが、登場シーンは少ない。前2作とのデジャヴ感を避けた配役と言えよう。
筆者が注目したいのは、「Point Break」で主役の1人ボディを演じたエドガー・ラミレスが、本作でジョイの別れた夫トニー役で出演し、小気味よい存在感を示しているところ。近年、メキメキと頭角を現している彼は、作品ごとに全く違った印象を放ち、役になりきる。本作でも売れないシンガーのダメ夫を柔和に演じてみせた。カメレオン俳優として、今後の活躍が楽しみだ。
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