TVドラマ「24」の監督スティーヴン・ホプキンスの新作「Race」は、ヒトラー政権の下で開催された1936年のベルリン・オリンピックに出場し、4つの金メダル(100メートル走、200メートル走、400メートルリレー、走り幅跳び)を獲得した黒人選手ジェシー・オーウェンスの伝記映画。
人種差別と戦いながら、世界記録を連発したオーウェンスが主人公だが、映画は彼と白人コーチ、ラリーとの絆、そして、競技中に芽生えたドイツ人選手との友情も描く。何よりも「速いか遅いか」を重視し、競技に勝つためのトレーニングをジェシーに課すラリーが差別の現実をジェシーから学ぶ場面に心を揺さぶられる。ジャマイカで育ったイギリス系白人ホプキンスならではの演出が光る瞬間と言えよう。ただ、ラリー役でシリアス演技に挑戦したコメディー俳優ジェイソン・サダイキスが、時折、「24」の主役に扮したキーファー・サザーランドに見えたのは気のせいだろうか……。
ちなみに、劇中、ベルリン・オリンピックの記録映画を監督する女性が登場する。「Olympia」(2部作)を監督したレニ・リーフェンシュタールだ。同作品はナチのプロパガンダ映画として有名だが、ジェシーの走り幅跳びを再撮影するシーンなどに代表されるように、記録映画に再現映像を挿入するという斬新な演出法は映画史上注目すべきものとされている。(2月19日から劇場公開)
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