ワイン業界も全てのビジネスと同じく、”What is the next big thing?”と常に自問している。「次に何が流行るか?仕掛けるか?一番の成長株か?」という見通しと期待で、これにうまく乗れば、大きな成長が見込まれるからだ。成功例としては、90年代から一斉を風靡した「ホワイトジンファンデル」や、最近の「モスカトブーム」が記憶に新しい。前者はカリフォルニアで幅広く生育するジンファンデル品種を、赤ワインではなく、甘味を残したロゼワインとして製造して、世界的なブームを呼んだ。
後者モスカト(Moscato)は、仏ローヌ地方出身のミュスカ(Muscat)品種をイタリア語読みしたもので、イタリアではアルコール度が控えめで、仄かな甘みを残した穏やかな発泡酒として、古くから愛される地場酒である。値段も一本10ドル程度とお手軽で、 口当たりが良く、アルコール度数も5.5%から9%と普通のワイン(13〜14.5%)よりもかなり低めで、初めてワインを飲む若い世代や、ダイエットを気にする女性達の幅広い支持を得た。本家本元イタリアの輸入もの(アスティなどと呼ばれる)では間に合わず、米国最大手のガロ社のベアフット(Barefoot)を始め、国産モスカトが大量に出回った。米国内の出荷量はこの5年で、2倍に跳ね上がるほどのヒット商品と成った。
そこで気になるのが「次」のヒット商品。米国内では「レッドブレンド」がホットだといわれている。黒ブドウ品種をいくつかブレンドしたワインだが、ボルドー(カベルネ、メルローなどのブレンド)やローヌ(グルナッシュ、シラーなど)のように、伝統的なブレンドだけではない。そこはどんな品種もきちんと成熟するカリフォルニアゆえに、「何でもあり」の型破りなスタイルだ。例えば、ジンファンデルにカベルネを混ぜたり、更にシラーを加えたりと、フランス人なら「考えられない」掛け合わせである。まあ、フランスの場合、各地方で栽培できる品種が法律で限られているので、無理もない。ヒット作のプリズナー(Prisoner)を始め、大小のメーカーが味とコストパフォーマンスを鑑みて作るレッドブレンドは、見方によってはなかなか面白いワインではある。
単一品種を見た場合、赤ならカベルネ、白はシャルドネが最も人気のあるワインだが、それを追い上げているのがピノノワールだ。プロの間では、一昔以上も前から、次はリースリング!という期待があったが、これがなかなか素人受けせず、今でも高品質と低価格のヴァリューワインにもかかわらず、なかなか主流にならない。ワイン生産地域も、それぞれが「これぞ!」というワインを生み出そうと努力している。マルボロー地区で作ったソービニョンブランでホームランを飛ばしたニュージーランドは、続いてエレガントなピノノワールでプリミアムワインの地位を獲得し、その後もボルドーブレンド、シラー、シャルドネなど高品質で独特のワインを輸出している。まるでニュージーランド自体がNext Big thingと化したようだ。
昔からあるのに、最近注目されだしたロゼも、世界的にも静かなブームを呼んでいる。美しいサーモン色の辛口ロゼといえば、本場プロヴァンスだが、夏だけの飲み物ではなく、どんな食べ物にも相性が良いという「ペアリングワイン」という戦略が当たったのか、世界各地でつくる辛口のロゼの人気が上昇している。同じ伝で、シャンペンも「特別な祝い事」に開けるだけではなく、いつでも気軽に飲める「日常的な飲み物」への脱皮を計っており、世界各地で作るスパークリングワインも含めて、更に人気が上昇している。さてWhat is the next big thing?
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