- Home
- 学び・教育
- 子供の教育in USA
- 海外教育Navi 第4回 〜帰国準備〜〈後編〉
海外教育Navi 第4回
〜帰国準備〜〈後編〉
記事提供:『月刊 海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2018年5月15日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団に所属するプロの相談員たちが一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.帰国が決まりました。子どもにはどう伝え、どんな帰国準備をしておけばよいでしょうか。
前回のコラムでは、帰国前の準備についてお伝えしました(前回記事へ)。今回はその続きをお話しします。
帰国後の心配
Re-entry shock
赴任が長ければ帰国後の子どもの国語力をはじめ日本での学習が不安になります。注意したいことは、子どもの心と体の管理をしながら、ゆっくりと環境の変化に慣れさせていくことです。焦らないことが肝心です。
ある少年は自分の思い描いた帰国後の生活と現実とのギャップに孤立感を覚え、「こんなはずではなかった」という不満を親にも言えず苦しんだといいます。海外にいたときにはいつも心配し共感してくれた親が、帰国したら自分の気持ちを理解してくれていないと感じる子どもは多いようです。それがre-entry shock(再入国ショック) として現れることもあります。
成長過程を海外で過ごした子どもたちにはその間の日本の文化、習慣等、日本にいたらあたりまえに理解できることでもわからないことが多々あります。親が子どもとよく話し合うことができる家庭は適応障害の解消が早いといわれています。子どもの気持ちに寄り添い、話をしっかり聞いてあげるようにしましょう。
学校選択
学校選びに関しても海外滞在歴や学習環境、子どもの性格等さまざまな要因を踏まえて検討しましょう。地元の学校に編入学する際は、子どもの海外滞在年数、得意・不得意なこと、海外で経験してきたこと等を担任の先生に伝え、子どもが学校になじむように協力してもらいましょう。
私立校等の選択については、希望校の実情を確認し、子どもといっしょに見学することをお勧めします。好きな部活動がある場合はその活動の様子も見学を希望してみましょう。さらに帰国生受け入れ校の多くには帰国生担当の先生がいます。予約を取って直接話す機会を持ちましょう。
「有名校に進学させたい」という願望を持つ親御さんもいることでしょう。しかし有名校に入学はしたもののなじめなかったという事例もいくつか耳にします。学校の選び方によっては子どもを追い詰める危険性があることを理解しておきましょう。
受験関係のサポートサービス
「桜咲くサポート」
アメリカに滞在した吉田玲子さんは、帰国と同時にふたりの子どもの受験に直面することになりました。帰国と受験の準備が重なり、限られた時間の中で誰に相談してよいのか悩み、さらに日本から海外に願書を発送してくれる学校がきわめて少ないことに落胆したそうです。所定の時間に事務所に購入しに行く必要がある学校もありました。返信用として日本の切手を同封することを義務づけていたり、国内に緊急連絡がとれる保護者代理人を立てるように指示があったり等、結果として日本国内でだれかにお願いせざるを得ない状況でした。夫の会社の関係者にお願いすれば合否がわかってしまうし、年老いた両親に頼むには負担が大きすぎました。
結局、高校入試を経験していた日本にいる友人にお願いしたそうです。頻繁にLINEで連絡をとり合い、EMS(国際スピード郵便)で書類を送付してもらうなど、神経を使う面倒なことをたびたびお願いせざるを得なかったといいます。
その体験から、吉田さんは帰国後、帰国生の親仲間や日本で子どもの受験を経験した親たちで「桜咲くサポート」を立ち上げました。受験校の願書などの購入や送付等、遠隔地からのサポート依頼も多いそうです。日系の塾もない場所に住んでいる人には講師がSKYPEで面接の練習や小論文の添削と解説をするなどのサービスも行っています。さらには受験校にアクセスしやすい宿泊先の案内や、必要であれば受験当日の道案内をサポートするなど、親の目線で最善を尽くしているそうです(http://japansakurasaku.wixsite.com/needhelp)。
親学のすすめ
海外にいても自国にいても子育てに悩みはつきもの。成長していく子どもとどのように向き合っていけばよいのでしょうか。
「子育て四訓」をご存じですか。
「幼児は肌を離せ。手を離すな」
「少年は手を離せ。目を離すな」
「青年は目を離せ。心を離すな」
山口県のある教育者が提唱した子育ての心得です。子育ては子どもの成長に応じてギアチェンジをしながら見守っていくことが大切だといいます。どこにいても子どもは、自分を見ていてくれる親、家庭があることでがんばることができるのです。
子どもがつらいときこそ親は母港となり、安全基地として大きな愛で受け止めてほしいと思います。そのような接し方を続けていくと、子どもは異文化間を移動することで得た力も加わり、自立し、自分の道を見つけ、親元から巣立っていきます。
それぞれの置かれた場所で“いま”を家族で精いっぱい、豊かな時間を送ってください。それがかならず未来へとつながっていきますので。
海外子女教育振興財団「渡航前配偶者講座」講師
小木曽道子(こぎそみちこ)
ニューヨーク補習授業校教諭、洗足学園短期大学幼児教育科教授、デリー大学東アジア研究科講師を経て、現在は国際幼児教育学会理事。海外子女教育振興財団の通信教育「幼児コース」の監修を担当。翻訳絵本に『やまあらしぼうやのクリスマス』『ぞうのマハギリ』、共著で花鳥風月をテーマにした友禅染絵本『はなともだち』『あいうえおつきさま』などがある。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします