海外教育Navi 第31回
〜高校生を伴う赴任で気をつけるべきこと〜〈前編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.高校生を連れて海外赴任したケースで、うまくいった例とうまくいかなかった例を交えて気をつけるべきことを教えてください。

出国前の教育相談では「滞在国の教育はどのようになっていますか」「どのような学校があって、その学校に入るにはどうすればよいですか」という質問が多くあります。なかでも、高校生を帯同する場合の心配は特に大きいようです。たしかに高学年での帯同にはさまざまな点でリスクを伴うことが考えられます。

そこで、難しい面があることを前提にしたうえで、結果として“行ってよかった”と思えるようになるための準備や生活の工夫や考え方、制度にかかわることについてお伝えします。

「なんとかなる」ではなく「なんとかする」心構えを

高校生を海外に帯同する場合、上海日本人学校と世界に数校ある私立在外教育施設以外では日本の教育を受けることができません。そのため、ほとんどの場合に現地校かインターナショナルスクールを選択することになります。どちらの場合もいちばんの課題は言語の習得でしょう。ここではその言語を英語として考えてみます。

低年齢の場合は、とりあえずはESL(英語を第二言語としている子への支援クラス)の助けも借りながらコミュニケーションが取れるようになってくることで、徐々に語彙数も増え学習言語の習得につながってきます。それに対して高校生ともなれば、日本語でも難しい内容をいきなり英語で学習することになるわけですから、これから徐々に英語力をつけていくというのでは間に合いません。

よく、“現地へ行けばことばはなんとかなる”といいますが、高校段階の学習を理解していくことを考えると、そんなに甘くはありません。帯同を決めた時点で、“なんとかなる”ではなく出発前から自分の努力で“なんとかする”という前向きな心構えが必要です。この姿勢は海外に行くにあたって最も重要な点で、帯同するかしないかを決める大きなポイントとなります。

出発までにできる準備

繰り返しになりますが、やはりいちばんの課題は英語力で、年齢相応のコミュニケーション力が必要になります。かといって日本国内では誰もがその力を養える環境にあるわけではありません。しかし少しの時間であっても、可能であればネイティブスピーカーの先生がいる語学学校に通うなり家庭教師による個人指導を受けるなりして、「聞き慣れ」「話し慣れ」て、少しでも自信をつけることが大事です。

また、いま通学している学校にALT(外国語指導助手)の先生やネイティブスピーカーの英語の先生がいる場合は、海外の高校での学習形態、大まかな学習内容、進級にかかわる制度、一日あるいは学期ごとの学校生活の流れ、海外の高校生の生活全般について特徴的なこと、特に努力して力をつけなければいけないこと等を聞いておくと、きっと役に立ちます。

またそのなかで自信を持てそうな点に気づかせてもらったり、現在の英語力について評価をしてもらったりすることも、事前準備の目標が明確になり取り組みやすくなると思います。

現地に着いたら、まず英語力をつけることが必要

現地に着いたらいよいよ英語での勉強が始まりますが、学習内容についての心配はあまりしなくてもよいと思います。というのも、現地校等の先生がたから「英語力が備わってくれば、真面目でコツコツと学習する習慣がついている日本の生徒はほどなくして授業を理解できるようになります」とよく聞くからです。日本人の子どもの多くは英語力がつけば大きなハードルを越えることになるのです。とはいえそのハードルがいちばん高いものであることも事実です。

特に高学年の場合は、それを乗り越えるための学習に費やせる時間はそれほど多く取れませんから、時間を最大限有効に使って力をつけていかなければなりません。自分で学習することも大事ですが、当面は会話力を高めてくれると同時に学習内容まで指導してもらえるチューターを探し、できれば毎日教えてもらうようにするとよいでしょう。

高学年で帰国した生徒の多くが「日本とは異なった教育環境で勉強ができ、たくさんの異文化体験をし、外国人の友達もできてほんとうに楽しかったです」と言います。そして同時に「渡航して最初の一年間は、わからない英語での学習をなんとか理解しようと帰宅してすぐに辞書を片手に夜遅くまで勉強しました。それは涙が出るぐらいたいへんな毎日でした。しかし一年が過ぎたころから友達も増え、英語力も高まってくることで授業も楽しくなってきました」と語ってくれています。

→「第32回 〜高校生を伴う赴任で気をつけるべきこと〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員
海外子女教育振興財団教育相談員
山岡 莊平

奈良県の公立小学校にて教諭、教頭、校長として勤務。その間リマ、バハレーン、イスラマバード日本人学校に各3年間教諭、校長として勤務。その後、奈良教育大学非常勤講師。2008年度より海外子女教育振興財団の教育相談員、13年より18年度まで関西分室長。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

この著者の最新の記事

関連記事

デジタル版を読む

フロントライン最新号
ページ上部へ戻る