海外教育Navi 第32回
〜高校生を伴う赴任で気をつけるべきこと〜〈後編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.高校生を連れて海外赴任したケースで、うまくいった例とうまくいかなかった例を交えて気をつけるべきことを教えてください。

前回のコラムでは、出発前の準備と現地で最初にやるべきことについて説明しました(前回記事へ)。今回はその続きをお話しします。

日本の高校へ編入学する場合、教育制度の違いに注意!

高校を卒業して帰国する予定で帯同したのに、保護者の任期の都合等で急遽、高校の途中で帰国しなければいけなくなることも考えておかなければなりません。

現地校やインターナショナルスクールを選択した場合、教育制度の違いから、編入学する学年が日本の学年と異なることが生じますが、帰国する際も同様の問題が生じます。

義務教育年齢での帰国であれば年齢相当の学年に入ることになるので問題はないのですが、帰国後、日本の高校へ編入学する場合は試験を受けなければなりませんし、海外での学年とずれが生じる場合があります。学習内容が海外の学校と日本の学校とで異なるために、履修教科や単位の関係で自分が思っている学年への編入学ができないということが起こり得るのです。

どの学年に入るかはそれぞれの学校が判断することになりますので、学校によって対応が異なることも併せて理解しておかなければいけない大切な点です。

日本の大学へ入学する場合、制度の違いに注意!

日本の大学入学資格は、

①高等学校又は中等教育学校を卒業した者(学校教育法第九十条第一項)
②特別支援学校の高等部又は高等専門学校の三年次を修了した者(学校教育法第九十条第一項)
③外国において、学校教育における十二年の課程を修了した者

となっています。

三つ目の「外国において、学校教育における十二年の課程を修了した者」とは、「外国の正規の学校教育における十二年目の課程を修了した者」という意味と定められています。受験資格を満たしているかどうかはとても重要なことなのですが、その判断は最終的に受験する大学が決めることになりますので、入学を希望する大学へ直接問い合わせて、受験の可否を確かめなければなりません。

海外の現地校やインターナショナルスクールで高校の学習をしてきて日本の大学を受験する場合は、それまでの学習内容や教育環境等の違いから国内生と同じ受験は難しいと考えられます。帰国生対象の受験を選択する場合、大学の帰国生入試では、海外での在籍年数のほかに「現地校あるいはインターナショナルスクール等海外の学校を卒業していること」や「卒業するための母子残留は認めない」等、大学によって条件が異なっています。このことも注意しておかなければいけない大切な点です。

ちなみに「海外の学校を卒業していること」や「在外教育施設の卒業生は対象外」等の条件は国公立の大学に多く見られます。ときに入学試験の内容にばかり気を取られているかたも見受けられますが、「大学入学の資格を取得できているか」という点は最も気をつけなければいけないことです。

前向きに考えて!

以前、ベルギーのインターナショナルスクールを見学しました。その日はちょうど卒業式でした。十人余りの日本人の卒業生のなかで三人が高校一年生からの編入学でした。

その生徒たちが口をそろえて「英語力のこと、学習内容を理解することなどいろいろたいへんでした。だけど来てよかったです。この経験は自分にとってほかの何物にも代えがたいことだと思っています。もしこれからどうしようかと迷っている人がいたら、自分を信じてぜひ挑戦してほしいと思います」と話してくれました。

そして、「こうして卒業という日を迎えられたのは、応援してくれた両親と、なにかにつけて助けてくれた今日いっしょに卒業式を迎える早くから在籍していた日本人の同級生、何もわからないで不安だらけの自分を温かく受け入れてくれたこの学校の環境のおかげだと思っています」とも話してくれました。

たしかに高校生を帯同するリスクは大きいかもしれません。高校の途中での急な帰国になった場合のことや、希望する大学選択での制約など多くのことを想定し、それらのことを理解し納得したうえで決めなければいけないでしょう。しかしその分、得るものも大きいはずです。

高校生ともなると最終的に決定するのは本人です。本人自身の気持ちがいちばん大事です。

高校段階で帯同したときに、うまくいくとか、うまくいかないとかの評価をされることがありますが、目先の評価ではなく、さまざまなケースを想定し十分に考えて決定したことは、すべて自分の経験であり、長い人生において生きる力となって活かされると思います。ぜひ前向きに考え、自分自身で道を切り開いていってほしいです。

今回の相談員
海外子女教育振興財団教育相談員
山岡 莊平

奈良県の公立小学校にて教諭、教頭、校長として勤務。その間リマ、バハレーン、イスラマバード日本人学校に各3年間教諭、校長として勤務。その後、奈良教育大学非常勤講師。2008年度より海外子女教育振興財団の教育相談員、13年より18年度まで関西分室長。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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