海外教育Navi 第35回
〜アメリカの現地校でいじめに遭ってしまったら〜〈前編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.子どもはアメリカの現地校に通っていますが、イジメに遭っているようです。どうしたらいいのでしょうか。

日本で大きな社会問題となっている子どもによるイジメ。多民族国家アメリカの学校でも例に漏れずイジメ問題は起きています。さまざまな国の子どもたちが学校に在籍していることで、民族間のトラブルが子どもの世界にも影響を与えているのが現状です。

また現代の活発な情報化社会のなかにあって、大人同様、子どもたちも気ぜわしく落ちつかない生活を送っています。このような時代に生きる彼らのなかには、ストレスから友人といがみ合い、とげとげしいことばを吐き、人をおとしめるという、陰湿なイジメに走るケースが増加しています。

現状をご報告するとともに、運悪くイジメに遭った場合の対処の仕方についても述べたいと思います。

イジメはどうして起こるの?

人類にまだ “ことば” がなかったころ、人々の間にはけんかやイジメという争い事はなく、皆が平和に暮らしていたそうです。ところが “ことば” がつくられたことにより、人間同士のコミュニケーションは活発になり、トラブルが多発したといわれています。ことばが人間を変え社会を変えていったのですね。いまや “ことばによる暴力” が子ども社会にもまんえんしはじめています。

さて、アメリカの学校ではどのようなことが起こっているのでしょうか。

長年携わっている教育相談の事例のなかから、現地校で日本人の子どもがイジメに遭った事例を取り上げてみます。日本人同士のイジメや他国の子どもからのイジメなどさまざまですが、それに加えアメリカの人種差別、現地ではこの問題にも直面せざるを得ません。

①海外での日本人同士のイジメ
日本人が集中して住んでいる地域では、1クラスに4、5名の日本人の子どもが在籍している学校があります。それなら心強いだろうと思うのですが、残念ながら足の引っ張り合いからイジメに発展するケースも少なくありません。

たとえば……
*日本から編入したばかりの子どもに対し、英語力を問題にする。
*現地校で数年たつと、ELL プログラムを終了するのにかかる時間うんぬんを問題にする。
*クラス内でへルプする側とされる側のトラブルから発生するイジメ。
*異文化のなかでの生徒自身のストレスから、人をイジメてストレスを解消する。

日本人同士のイジメの場合、自分と相手との比較から発生しているケースが多いようです。相対評価による教育を受けてきた保護者が、つねに我が子を他者と比較しながら育てた結果、子どもの世界にも同じような現象が起こり、自分より優位な者への嫉妬が生まれます。それがイジメへとつながっているようです。

また異文化のなかで育つ子どもたちが、英語での学習に閉塞感を覚えているのは確かです。母語とまったく異なる “英語” の世界で生きていくことは、精神的にも大きな影響を与えます。それが “ストレス” となって他者への攻撃を繰り返してしまう子どももいることでしょう。

イジメる方法も昔とはさま変わりしています。以前は “村八分” にしたり無言電話をかけたり、教師が話した内容を通訳する際に違う内容を伝えたりする程度でしたが、昨今は各自が所持している携帯電話に入力しているシステム等を使っていやがらせのメッセージを送るケースもあります。

②日本人以外の生徒からのイジメ
言語、文化、習慣そして宗教……異文化のなかで、人々が思い思いに暮らしているアメリカ、その違いを理解し容認するまでにはお互いに時間がかかります。 現地のアメリカ人の子どもにイジメられた場合、日本人に対して悪い印象がないかぎり深刻なものではなく、ことば(英語)ができないことを馬鹿にしたり、暴言を吐いたりするマイノリティーへの差別発言でしょう。

一方、反日プロパガンダによるイジメは深刻です。母国で “反日教育” を受けた親に育てられた子どもは、親のことばをほぼ信じて育っています。親世代が大量に米国に移住してきたことで、現地校にその子どもたちが増え、地域によっては日本人の子どもへのイジメ問題が起きているのが現状です。

ある小学2年生の日本人の子どもがクラスの中で、「日本は◯◯だ!」といういやがらせのことばを毎日のように浴びせられ、登校拒否するようになったケース、また高校生では、ことばでの攻撃に加え唾を吐きかけられたりしたケースもあります。

教師からの心ない言動もあります。高校のサマースクールでの出来事ですが、授業のなかで真実ではない日本の歴史資料を持ち出し、「日本はこのように悪いことをした!」と話しだしたそうです。日本人の生徒は翌日、教師のところに出向き「昨日、先生が授業で言われたことは間違っている。正しい歴史ではない!」と勇気ある抗議をしたそうですが、教師はまったく聞く耳を持たなかったという報告を受けています。アメリカの学校では、このような問題も起こるのです。

→「第36回 〜アメリカの現地校でいじめに遭ってしまったら〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員
JERC日米教育サポートセンター代表兼教育アドバイザー
岩永 留美

1987年に夫のアメリカ赴任に伴い、当時小学5年生と2年生の娘を帯同して渡米。90〜91年、ロサンゼルス補習授業校あさひ学園父母の会会長を務める。95年にJERC日米教育サポートセンター理事兼教育アドバイザーとなり、日本人家庭からの教育相談を受けているほか、教育オリエンテーション等を開催している。海外に住む日本人の子どもの日本語/国語教育にも従事。2018年より現職。
http://www.jerc.org

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る