海外教育Navi 第37回
〜帰国後、帰国生の多い学校でなじめない場合〜〈前編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.アメリカから帰国して子どもは帰国生の多い学校に通っていますが、英語が得意ではないため、気後れしているようです。登校をいやがるのですがどうしたらいいですか。

数年前に渡航。がんばって現地校に適応して楽しく過ごしていたのに、今度は帰国。予想もしなかった母国での逆カルチャーショックを受けつつも、再適応にもがいている健気なお子さんの姿が目に浮かびます。

つらい気持ちが消え、心軽く登校するには、どうしたらいいのか考えていきましょう。

「英語しゃべってみて」

帰国するとまず、滞在国や通った学校の種類、滞在の期間も帰国時の年齢も関係なく「帰国子女は英語がペラペラ」という楽天的で、はた迷惑な思い込みが世の中を闊歩していることに気づかされます。

帰国生の多い学校でも、なかには英語が苦手な生徒も意外に多くいます。恥ずかしがることでも隠すことでもありません。「英語しゃべってみて」と言われ、うんざりすることも多いはずです。

また逆に苦手といっても国内の一般生からすれば「英語がしゃべれていいな」「英語ができてずるい」という羨望も同時に存在します。それらが鬱陶しくて、海外で暮らしていたことを隠す「隠れキコク」のお子さんもけっこういます。

帰国子女=英語だけ?

この羨ましいという感覚は「英語を勉強しなくてもいい点が取れる」「特権的に楽をしている(ように見える)」「自分たちが知らない国で暮らしていた」などから派生するのでしょう。でも、お子さんは海外で楽をして英語を学んできたわけではありません。

「日本での楽しい生活を中断させられて、親の都合で異国へ連れてこられた」「親戚や友達とも遠く離れ、ことばの通じない異文化の学校へいきなりほうり込まれた」という声もよく聞きます。彼らは英語を「読めない、書けない、話せない、聞けない」という四重苦のなか、適応にもがきながら、闘いながら、英語を学んできたのです。

英語だけにスポットライトが当たりがちなのも帰国子女の宿命ですが、身につけてきたものは語学力だけではありません。彼らは多様な民族と触れ合うことで獲得してきた豊かな感性と価値観の持ち主であり、日本の将来を担う未来の財産でもあります。

個人差があってあたりまえ

アメリカで暮らしたといっても、英語の習得には個人差があります。スポーツや数学、音楽が得意なお子さんもいればそうでないお子さんもいるのと同じです。1年前後の滞在をふり返り「アメリカは旅行だったからうまく話せないよ」と言うお子さんもいます。また帰国時の年齢が低いほど、意識して学び続けなければすぐ忘れてしまいます。

アメリカ生まれの我が家の次女は小学2年生で日本に帰国しましたが、発音とヒアリングの能力は残っているものの英語は苦手。周囲から「何か英語しゃべって」と言われ続け、いつしか「日本語をがんばっていたら、英語忘れちゃった」とユーモアで返すようになりました。

実際、英語がネイティブスピーカー並みのお子さんでも「ね〜英語しゃべってみてよ」と言われると、何をしゃべったものかと悩むのが正直なところ。そんなときは「McDonald’s」(マクドナルド)とひとこと。さっさと場面をクリアしてしまいましょう。

そうはいうものの、たしかに周りの帰国子女と比べて、自分の英語が頼りなくて自信をなくし、うまくやっていけそうもないと感じてしまったら、つらいですね。大きなショックを受けると、心はすぐには回復できないものです。

「僕はアメリカに数年しかいなかったんだ。英語得意じゃないよ」と言えるといいのですが、「自分はダメ」という否定的感情が心を占拠してしまうと、そんな勇気は息を潜め、これ以上傷を負わないよう防衛体制に突入してしまいます。

→「第38回 〜帰国後、帰国生の多い学校でなじめない場合〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員
海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」親クラス講師
つちや みちこ
ライター・海外生活カウンセラー。日本カウンセリング学会/多文化間精神医学会会員。上智大学卒業。夫のアメリカ駐在で13年間をイリノイ州、カリフォルニア州、ノースカロライナ州で過ごす。3人目の子どもはアメリカ生まれ。帰国後、教育評論家の尾木直樹氏が主宰する臨床教育研究所「虹」の研究スタッフに。子どもたちと体験したアメリカの学校についてまとめた『わくわく学校レシピ』(文芸社)を出版。2009年より海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」親クラス講師。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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