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海外教育Navi 第38回
〜帰国後、帰国生の多い学校でなじめない場合〜〈後編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2019年10月15日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.アメリカから帰国して子どもは帰国生の多い学校に通っていますが、英語が得意ではないため、気後れしているようです。登校をいやがるのですがどうしたらいいですか。
前回のコラムでは、帰国後に学校で苦労する子どもたちの現状をご紹介しました(前回記事へ)。今回はその続きをお話しします。
いまの自分でOK!
他人の目を気にすればするほど、自信がなくなり、自分の欠点探しが始まります。「なんで私は◯◯ちゃんみたいに英語ができないの」「最低なオレ」…… そんなふうに自分で自分をいじめないでくださいね。こんなふうに自分に言ってあげましょう。
「いまの自分はずっとできるだけのことはやってきた。だからいまの自分はこれでOK!」
私たちは本来自分が持っている遺伝的素質や能力、それぞれが育った環境、親の価値観などを含めて、皆事情が異なるなかを生きています。自分ではどうしようもないことを抱えて生きているのだから「いまはこれでOK!」。 そのときが来たら、英語だってさらに力をつけることができます。
ほんとうはもっと長くアメリカに暮らし、英語も現地の文化も豊富に吸収したかったという気持ちも悔しさもあることでしょう。理由もなく怠けていた人などどこにもいません。何もわからない人たちに、一方的に評価されるなんてフェアではありません。
私たちはどこかで「人にどう思われるか」を気にしがちです。「人に笑われないように」「お兄ちゃんはもっとできた」などと言われながら育ってきたり、身近に心配性や過干渉、批判的な人がいたりする場合、他人の言うことにとても敏感になりがちです。たとえそれが褒めことばであっても、そのことばに縛られるとしたら要注意。ほんとうの自分の価値は、外から一方的に決められるものではありません。
「なぜ」そう思うのか考える
このケースの場合、もしお子さんが「完璧で流暢な英語」の持ち主なら、他人の目は気にならないでしょう。でも「自分よりもっとできる人」は次々と現れてきます。
他人の評価はつねに主観的で相対的で流動的。「相手の勝手な主観による評価」に対して「自分には価値がない」と感じる必要はどこにもありません。相手がどう自分を評価しようと、それは相手の現時点での思い込みや決めつけに過ぎません。
また、他人から「なんだ英語下手くそ」と言われたら、その人が「なぜ」そう思うのか考えることも相手の理解に役立ちます。その人は「アメリカに憧れてわくわく」し「自分が期待する形の英語」を聞きたかったのかもしれません。たんに「テレビのバラエティ番組風のノリ」かもしれません。
また逆に、その評価はその人が抱える無意識下にある問題を表出しているのかもしれません。他人に否定的な評価を連発しがちな人には、そうするなんらかの背景があるように思います。
登校をしぶってあたりまえ
さて、いまの状況下では、お子さんに学校へ行きたくない気持ちがあっても当然です。登校をしぶりがちであってもいいのです。
難しいことですが、お子さんのどんな感情も否定せずにふんわりと受け止め、ねぎらい寄り添えると最高です。直接話しにくいときはLINEも活用しましょう。「登校」に固執してしまうと、学校へ行かせなくてはと気が焦ります。
でもその現象だけ解消しても解決にはなりません。せかすよりも、お子さんが「なぜそうしなくてはならないのか」をじっくり考えましょう。
学校等で信頼できる先生に相談しつつ、ご家庭では負の感情を吐露しても批判されない安心できる環境をつくり、日々の基本的なこと——食事をおいしく食べる・眠る・笑うなど、生活の基本となる穏やかな時間の積み重ねを大切にしてください。
自分へのどこか温かな気持ちを大切に
他人から何か言われても「自分は自分」「それはあの子の意見」と気にしないばかりか「それは違う」とはっきり言える人がいます。ものの見方は人それぞれ違うことや、人の評価は一方的で刹那的だと心得ていて「ありのまま」を尊重してきた人なのでしょう。
いいところも悪いところも恥ずかしいところもあるけれど、それが人間。そこを認識していくと少しずつ「自分は大丈夫かも」というどこか温かな気持ちが芽生えてきます。そこを大切に!
「自信は『つける』ものではなく『感じるもの』。『自分を肯定する気持ち』を感じられることこそが本当の自信につながる。その場その場の自分についての感じ方を『これでOKと、よくしていくこと』」、精神科医水島広子先生のことばです。
他人の目を気にしなくなる一つの方法は、心の準備ができたら勇気を出して、信頼できると思う人に「ありのままの自分」を解放してみることです。「なんだそうだったの」「もっと早く言えばよかったのに」と、そこで人との関係が広がります。
愚痴をいっぱいこぼしながらも、人はかならず成長する存在です。
きっと大丈夫!
海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」親クラス講師
つちや みちこ
ライター・海外生活カウンセラー。日本カウンセリング学会/多文化間精神医学会会員。上智大学卒業。夫のアメリカ駐在で13年間をイリノイ州、カリフォルニア州、ノースカロライナ州で過ごす。3人目の子どもはアメリカ生まれ。帰国後、教育評論家の尾木直樹氏が主宰する臨床教育研究所「虹」の研究スタッフに。子どもたちと体験したアメリカの学校についてまとめた『わくわく学校レシピ』(文芸社)を出版。2009年より海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」親クラス講師。
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