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海外教育Navi 第40回
〜現地と日本の学習の両立〜〈後編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2019年11月15日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.帰国の時期が予想できないため、子どもは将来を見通せず、現地と日本、両方の学習が中途半端になっています。どうしたらいいのでしょうか。
前回のコラムでは、小学生から中学生の学習方法についてご紹介しました(前回記事へ)。今回はその続きをお話しします。
帰国生入試について
帰国生入試とは、おもに海外の現地校で学び、日本の学校とは異なるカリキュラムで学習してきた子どもが不利にならないように配慮されている入学・編入学試験のことです。
帰国生入試では、学力試験において科目数を減らす、合格最低点を別途設ける、帰国生の定員枠を設けるなどの配慮がされています。さらに、学力試験にかわる書類審査(在籍校での成績)、作文、面接などでの選考方法があります。いずれも帰国生が海外で得たものを正しく評価できるように、各学校が独自に考えた入試です。
帰国生入試の資格条件
帰国生入試を受験するための資格条件に統一したものはありません。各学校によって異なりますからかならず学校の募集要項で確認してください。大事なことにもかかわらず、口コミに頼り受験機会を失ってしまう例もありますので注意してください。
資格条件は海外滞在年数、帰国後の年数などが各学校によって定められています(ほとんどの学校で日本人学校出身者も帰国枠で受験できます)。
高等学校に進学するためには中学校の卒業資格が必要になります。海外の現地校に在籍している場合は、その国・学校の教育制度において初等中等教育9年間の課程が修了していることが中学卒業資格となります。具体的にはアメリカ式ではG(グレード)9、イギリス式でもY(イヤー)9修了となります。つまり、現地校G8修了でミドルスクールを卒業したとしても日本の高校を受験する資格がないことになります。
現地校のシステムによる違いなどで日本の中学3年生3月までにG9を修了しない場合は原則として高校受験ができないので、早期に帰国して日本の中学校に通うか、高校1年生9月編入学試験を目指すことになります。ただしG9未修了でも、場合によっては相談に乗ってくれる学校もありますので、直接問い合わせてみてください。
大学に進学するためには高等学校修了の証明として、原則12年間の教育課程修了が必要になります。
海外の高校で学ぶ場合
海外の高校で学ぶ場合、職業選択など将来を見通して滞在することが必要になります。外国語で学習を続ける場合、それを今後どのように生かしていくのか、日本の現状ではまだまだパイオニアとしての覚悟と努力が必要となります。将来の進路について、現地校の体験が生かせるよう、各大学等の資料を取りそろえて考えてください。
ある程度長く滞在していてそのまま高等学校に進学する場合は別として、中学校を卒業する差し迫った時期に渡航して現地の高等学校に入学するときは困難が大きいので、お子さんの意欲、語学力などを慎重に検討して、卒業を目指せるかどうか検討が必要です。卒業が難しい場合はどの時点で帰国するかをあらかじめ計画しておくことが大切になります。
子どもの早期帰国を考える
お子さんの早期帰国(赴任終了前)を検討しなければならないのは、中学や高校、大学の受験資格に影響が出る場合です。
たとえば、そのまま滞在すると高校1年生の9月編入となり、4月入試に向けて帰国するときより学校を自由に選べないおそれがあります。
また高校3年生(日本の学齢)のときに急に帰国が決まり、単独で残留して現地校を卒業することが許されない場合は特に困った事態になります。ただし、数は少ないですが編入を受け入れてくれる学校もあります。さらに編入学のあと、帰国枠やAO入試を最大限利用して大学を目指すこともできます。
おわりに
海外赴任では、教育的に恵まれた環境とはいえない地域に派遣されることもあるでしょう。日本人学校がない、補習校がない、インターナショナルスクールもない、現地の学校の教育環境がよくないなど、特に非英語圏や発展途上国などの場合、お子さんの教育には多くのご苦労があると思います。しかしそのような環境で学ぶことは無駄になるどころかたいへん貴重な経験になり得ます。そのような環境で生き抜いてきたこと自体がお子さんの持つ力の一つとなっているはずだからです。
『偏差値29からの東大合格』という本がありましたが、結局その本の言っていることは、いつからでも、目標を見つけて本人にやる気ができて努力する時間があれば、どんな遅れであっても追いつく可能性があるということではないでしょうか。
困難のなかにあって努力できたという経験と自信はどんな環境の変化にも対応できるといえます。帰国後の追いつきも、海外で苦労した経験の裏返しと考えれば、容易ではないにしても一度経験した既知のことに再挑戦することと考えることができます。
帰国後にもたくましく成長し、さまざまな方面で活躍している帰国生が多数いますが、外国語ができるというだけで活躍できているわけではないと思います。海外で直面した困難を克服するために大きな努力をしたことを忘れず、その経験を生かし、むしろそれをばねにして、経験したことのない問題に直面しても立ち向かう力を持っているからではないでしょうか。
海外生活の体験がその後の人生の大きな糧になるよう願っています。
財団教育相談員
中山 順一
帰国子女の受け入れを目的に創立された国際基督教大学高等学校で創立2年目から38年間勤務。6000人以上の帰国生徒とかかわった。2008年より教頭。教務一般以外に入試業務(書類審査を含む)も担当した。2017年より海外子女教育振興財団で教育相談員を務める。
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