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海外教育Navi 第39回
〜現地と日本の学習の両立〜〈前編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2019年11月4日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.帰国の時期が予想できないため、子どもは将来を見通せず、現地と日本、両方の学習が中途半端になっています。どうしたらいいのでしょうか。
はじめに
帰任予定がはっきりしない、予定より早まった、逆に滞在が延長になったという事態は駐在員家族にとってたいへん困ったことになり得ます。駐在員子女の教育についても配慮した人事異動を考えてくれる法人が増えることを期待しています。
さて、この際お子さんの将来のイメージを考えてみましょう。日本の大学に進ませることを考えていますか、あるいは海外の大学に進む道も考えていますか。さらにはどんな職業をイメージしているのでしょうか。グローバルに活躍するIT技術者、ベンチャービジネス経営者、研究者、外交官、芸術家……。外国語を自由に操るビジネスマンを目指すのでしょうか。
いま、一つに絞る必要はありませんが、親子でそれぞれ将来に対してどんなイメージを持っているのかを折りに触れて話し合うことをお勧めします。それは進路選択において何を大切にするかにつながるからです。
小学校入学前から低学年まで
お子さんの年齢別に重点を置くべきことをまとめます。お子さんが比較的低年齢のときは、ご家庭での日本語・母語の保持をしっかりとすることが大切です。これはたんに日本人なのだから日本語を忘れてほしくないという情緒的なことではなく、お子さんの言語生活が始まる時期にきちんとした母語による読解力、思考力、発言力の基礎をつくる必要があるということです。これが抜けると外国語の学習にも遅延や支障を来すことがわかっています。どのような幼稚園、小学校に通園・通学する場合でも、ご家庭のなかでは母語の成長を心がけてください。
小学校高学年から中学校へ
高学年になると学校の授業も難しくなり、いわゆる学習言語の習得が必要になります。保護者にとって慣れない外国語の場合、家庭内でのサポートも容易ではない場合が多くなります。
一方、帰国後の進学のことも心配になってくる時期かもしれません。しかし現地校やインターナショナルスクール(以下、「現地校」)の勉強と併せて帰国後の受験に向けた勉強をするのはとても大きな負担になります。
もちろん基本的な母語・日本語の維持は当然ですが、在籍している現地校の学習など、まずは学校生活全般に集中することを優先したらいかがでしょうか。日々与えられる教科の課題に専念し努力を重ねてよい結果を目指すことは、お子さん自身にとってわかりやすく、有意義な生活になるのではないでしょうか。その結果としてしっかりとした学力・教養が身につきます。
この時期には、どの国の教育であっても社会で生きていくための基礎となる知識や教養、また社会における個人のあり方など大事なことを学びます。外国語による学習であっても充実した学習を続ければ、直接的ではなくても日本語による学習、日本語の成長にもつながります。
そのうえで、必要であれば、補習校や通信教育、学習塾などで帰国のことを考えた学習に取り組むことになります。国語の学習はたいへん大事ですが、遅れ気味の漢字の学習など苦手な子どもにとってはつらい時間になりかねません。国語だけの学習がうまくいかないときは次のように考えてみたらいかがでしょうか。
たとえば現地校では日本の子どもたちは算数・数学ではよい成績を取って自信を持っていることもあるかと思います。その場合は算数・数学の分野の日本の学習書の応用問題などを解くことで日本語を使ってみたらどうでしょうか。現地校で自信を持っている科目ならやる気が起きると思います。また、現地校で習っている理科や社会の分野について同時に日本の本(少々難しい本がお勧め)で照らし合わせてみるのもよいのではないかと思います。
では、進学の心配はどうなるのかといいますと、そのために「帰国生入試」があります。
→「第40回 〜現地と日本の学習の両立〜〈後編〉」を読む。
財団教育相談員
中山 順一
帰国子女の受け入れを目的に創立された国際基督教大学高等学校で創立2年目から38年間勤務。6000人以上の帰国生徒とかかわった。2008年より教頭。教務一般以外に入試業務(書類審査を含む)も担当した。2017年より海外子女教育振興財団で教育相談員を務める。
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