海外教育Navi 第42回
〜帰国後における子どもの教育環境の違い〜〈後編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。


Q.海外では褒められていたことが、日本で同じことをすると注意されると子どもがよく言います。どう対応したらいいのでしょうか。

前回のコラムでは、帰国後、子どもが学校に適用するための方法についてご紹介しました(前回記事へ)。今回はその続きをお話しします。

親子で「意識改革」も!

次に考えてほしいことは親子での「意識改革」です。せっかく海外で身につけた国際感覚や語学のスキルをそのまま継続させたいと願う気持ちも大切ですが、海外にいたときと同じ学習環境を持ち続けることは現実的にはとても難しいことです。また、海外にいたためにできなかった日本の勉強もたくさんあるはずです。

そこで帰国後には、日本の勉強のキャッチアップも含め「新たな教育環境のなかでの学び」へと意識を変えていくことが大切になります。

ダブルスタンダードの確立
「郷に入っては郷に従え」ということわざがあるように、帰国生側もこれまでとは違う環境のなかで新しい価値観を身につけるために新たな学びをスタートさせるという心構えを持つことが大切です。

小学校の低学年では難しいかもしれませんが、中学生以上では「ダブルスタンダード」でそれぞれの国の生活や学校文化を認めていくように適応の視点を広げていかなければならないでしょう。

海外の学校の先生に教わったことを大切にしながらも日本の先生の教え方や日本の学校文化も身につけていくようにステップアップをはかっていくことが重要となります。

帰国後しばらくすると、「漢字が好きになった」「難しかった社会科にだんだん慣れてきた」「給食がおいしい」等、少しずつ日本の学校のよさに気づきはじめる子も出てきます。また、学年が進み中高生段階になったときに、自分の意見を言うことに加え相手の言うことを拒絶しないようにすることの大切さに気づく生徒もいます。

全面的に新しいやり方に変えるのではなく、自分が納得できる範囲で少しずつ合わせていくという適応の仕方がよいと考えます。親御さんが学んでこられた日本の学校のよい面や今後求められる価値観等を総合的に受け止めてお子さんをよい方向へ導いてほしいと思います。

客観的に受け止める
「注意されている」と子どもが受け止めるもののなかには日本の学校では通常の指導であったり激励を込めた叱咤であったりする場合もあります。また日本の先生は授業中の表情が比較的硬いため、帰国生のなかには叱られていると誤解して受け止めてしまうこともあります。

そこで帰国後しばらくの間は、どういう状況でどういうことばで注意されたのか、お子さんの話をよく聞いて先生の本当の気持ちをお子さんへ伝えてあげるのも日本の学校文化を経験している親御さんの役割なのです。

環境を変えたり専門機関の力を借りたりする選択も!

帰国後に子どもが抱える問題は千差万別なので、その内容や子どもの様子によっては転校を勧めたり第三者の力を借りたりする選択が効果的な場合があります。問題の長期化だけは避けたいものです。

帰国子女受け入れ校への転校
帰国子女受け入れ校への転校も問題解決の一つの方法と考えてください。帰国子女受け入れ校にはお子さんと同じような体験や思いをしてきた子どもも多くいますし、先生がたも帰国生の扱いに慣れていますので、お子さんの学校適応への負担感は大きく軽減されることと思います。

帰国子女受け入れ校では通常の入学時期だけでなく、各学年の始まりや学期途中でも編入生を受け入れているところが少なくありません。

教育相談機関との連携
問題如何によっては心理カウンセラーなど専門的知識を持った第三者からのアドバイスも有効です。本財団でも教育相談の窓口を開設していますが、各市区町村や都道府県段階にも教育相談を受けられる部署が設置されていますので、ご活用ください。

未来に開かれた対応を!

日本での生活経験が乏しい子どもにとって帰国後の生活は戸惑うことの連続かもしれませんが、その経験は将来広い視野を持つことにつながっていきます。帰国後の課題を上手に克服してほしいと願っています。

今回の相談員
財団教育相談員
平 彰夫

千葉県の公立小学校で教頭、校長を歴任。千葉県小学校長会理事、千葉県海外子女教育国際理解教育研究会副会長を経験。1998年より3年間、デュッセルドルフ日本人学校に教頭として赴任。この間、補習教室の教頭を兼任。2011年4月より海外子女教育振興財団の教育相談員。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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