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日本の遺言書について ~老親や将来の自分が亡くなった時の財産管理~〈後編〉
文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)
- 2020年2月24日
前回(1月20日コラム)に続き、遺言書について紹介します。前回、遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があると紹介しました。今回は、そのなかで一番利用件数の高い「公正証書遺言」の作成手続きについてです。
3.公正証書遺言の作成手続き
以下は公証役場へ出向いて自分で作成する場合の流れになります(弁護士や司法書士などの専門家に依頼すれば、代わりに手続きを進めてくれます)。手続きには公証役場へ最低2回は出向くことになり、またすべての手続きに2~4週間程度時間がかかります。
(1)遺言者が遺言の内容の原案を作成
遺言者本人が自分の意思を作成します。普通の文章で構いません。その際、自分の財産の目録も用意します。
(2)証人2名を決める
作成時に立ち会う証人2名以上を決めます。この時、未成年者、遺言者の推定相続人と受遺者(遺贈を受ける人)、配偶者、直系親族、公証人の配偶者、四親等内の親族等は証人になることはできません。証人が確保できない場合は、公証役場に依頼して証人を紹介してもらうこともできます(有料)。
(3)必要書類の準備
①遺言者本人の印鑑証明書
②遺言者の戸籍謄本(相続人との関係が分かるもの)
③遺言者の住民票
④財産の分かるもの(固定資産税評価証明書、不動産登記簿謄本など)
⑤証人に関する情報(メモ)
(4)公証役場で遺言内容の原案を確認する
原案について、プロである公証人が正しい書き方、表記に修正してくれます。この点、遺言者本人が十分な知識を持っていなくても、公証人がていねいにアドバイスしてくれるのでありがたいです。公証人は、国の公務である公証事務を担う公務員であり、中立・公正な立場で専門的なアドバイスをしてくれるので、弁護士や司法書士などの専門家に依頼しなくても原案を作成できます。
(5)公証役場で公正証書遺言書を作成
後日、証人2名以上の立ち会いのもと、上記(4)で確認した内容を遺言者が口授し、公証人が筆記します。その後、公証人が遺言者、証人に閲覧させ、誤りがなければ各自が署名、捺印します。
(6)作成完了
遺言書原本は公証役場で保管します。遺言者は正本、謄本を受け取り、手続きにかかった手数料を支払います。手数料ですが、財産が100万円以下の場合が1万6000円、1億円の場合が5万4000円というように、財産の金額によって段階的に決められています(遺言加算を含む)。
上記は原則的な手続きの流れですが、たとえば弁護士や司法書士などの専門家を間に入れる場合、上記の(1)(4)を専門家が行ったり(別途報酬が発生します)、遺言者が健康上の理由で公証役場へ出向けない場合は代理人(親族、知人など)が上記(4)の手続きを行ったり、(5)の手続きでは公証人による自宅までの出張という方法もあります(別途出張料金が発生します)。
4.参考情報 ~遺言書作成件数〜
日本では、2018年の公正遺言証書の作成件数は11万471件(日本公証人連合会データ)。一方、自筆遺言書の裁判所での検認件数(作成件数ではありません)は、ここ数年で約1万7000件となっています。日本の人口からすると利用者はまだ少ないですが、高齢化や今後の認知症患者の増加にともない増える傾向にあります。なお、秘密証書遺言については作成件数が数百件と少なく、あまり利用されていません。
いかがでしょうか? 遺言書となるとかなり複雑で面倒な手続きと思われるかもしれませんが、公証役場の公証人のアドバイスを受けながらであれば意外と簡単に作成できます。「遺言書なんて自分には関係ない」「必要だとしてもまだ先の話」と思われるかもしれませんが、自分(または親)にとって本当に必要なのか、この機会に考えてみましょう。
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