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日本の遺言書について ~老親や将来の自分が亡くなった時の財産管理~〈前編〉
文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)
- 2020年1月20日
日本では、高齢者が認知症による判断能力の低下や、寝たきりで身動きが取れなくなった場合の財産管理、死亡後の遺産相続をスムーズに進めるため、遺言書、成年後見制度、民事(家族)信託などの方法が利用されています。今回はその中の遺言書について紹介します。やや内容が多いため2回に分けますが、前編では遺言書の種類を、次回後編では作成手続きを中心に説明します。現在老親が日本に住んでいる人、または今後日本へ生活拠点を移す予定の人の参考情報としてお読みください。
1.遺言書は死亡の時から効力発生
遺言とは故人がみずからの死後のために遺した言葉や文章であり、遺言書とはそれを文書にしたものです。死後、自分の財産をどのように処分(相続)するか、遺言の指示内容を誰に実行してほしいかなどを明記します。したがって、認知症発症時や寝たきり状態など生前の財産管理には適していません。
下図は遺言書、成年後見制度(法定後見・任意後見)、民事信託についての違いを効力が生じる期間をベースに図で表したものです。生前については成年後見制度、民事信託が利用されます。
図の通り、遺言書は遺言者本人の死亡後に執行されるものです。遺言者本人が生前に作成します。遺言書、成年後見制度、民事信託のうちどの方法が良いということはなく、財産保有者の健康状態、家族構成、財産管理の目的などの状況によって選択するのが良いでしょう(成年後見制度については2019年6月19日および2019年7月18日掲載のコラムをご参照下さい)。
2.遺言書の種類
遺言書には以下の3通りの作成方法があります。
自筆証書遺言:遺言の内容となる本文、日付、氏名を自署し、押印して作成する遺言
公正証書遺言:証人2人以上の立会いのもと、公証人に遺言書を作成してもらう方式の遺言
秘密証書遺言:あらかじめ作成した遺言書を封入・封印し、証人立会いのもと公証人に提出し、公証してもらう方式の遺言
自筆証書遺言は自分で遺言内容を作成でき、費用もかかりませんが、書き間違いや遺言内容が不明確な場合、遺言書として無効になることがあります。また自筆証書遺言、秘密証書遺言は、本人死亡後に遺言内容を確認(開封)するには家庭裁判所の検認(※1)手続きが必要となり、手間がかかります。これらの点を考慮すると、公証人という専門家(公証人は公証事務を行う公務員でもあります)が作成し、法的にも十分有効性を持つ公正証書遺言書の作成が確実で望ましいでしょう。実際に利用件数も3つの方法のなかで一番多いです。
米国でLiving Willを作成する場合、Lawyerに依頼するのが一般的ですが、日本ではこの公証人がいる公共の公証役場というのが全国にあり、費用も(財産額に応じて)一律に決められていて安心して利用できます。なお、自分で公証人に依頼するのに抵抗がある場合には、一旦弁護士や司法書士に相談のうえ、遺言内容をまとめてもらって公証役場へ提出するという方法も可能です(この場合は弁護士や司法書士への報酬が別途発生します)。
次回は広公正証書遺言の作成方法について紹介します。
(※1)概要については裁判所ウェブサイト「遺言書検認について」を参照:
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_17/
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