海外教育Navi 第51回
〜一時帰国の有意義な過ごし方〜〈前編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。


Q.子どもを連れて2週間ほど一時帰国します。有意義な過ごし方を教えてください。

はじめに

海外在住の子どもたちに日本語学習のモチベーションを持続させるためには意図的な環境づくりや目的に応じた体験学習が効果的です。滞在国や滞在年数に関係なく、多くの海外生が一時帰国中に日本の小中学校への体験入学を経験しているようです。

では体験入学のほかに、2週間ほどの滞在で可能な「有意義な過ごし方」には、どのようなものがあるのでしょう。

シアトル近郊に在住する小・中学生とその保護者を対象に、日本語学習のモチベーションにつながった実体験を聞き取り調査し、教育の観点ごとに結果をまとめてみました。それを参考に、お子さんの性格や興味と意欲を尊重しつつ、日本での滞在期間を有意義に過ごしていただければ幸いです。なお、紹介しているものについては事前にご確認ください。

世界遺産巡り

国宝や重要文化財など、優れた文化遺産に関心を持ち、先人の業績や、歴史的背景を理解することは大切です。

6年生の国語単元「平和のとりでを築く」を読んで原爆ドームを訪れた小学生は、実際にその地に立ったことで戦争の悲惨さと平和の尊さをより強く実感できたと語っていました。また、法隆寺を観光した小学生は5年生の国語単元「千年の釘にいどむ」で匠の知恵や技術について学んでいたからこそ、現代に生きる自分が法隆寺の古代建築を鑑賞したときに、いっそう感動を覚えたとのことでした。

日本の世界文化遺産や遺跡への観光は、事前に十分な下調べをして臨むことで知識と体験が結びつき、より深い学びや感動を体感できるようです。

防災教育

防災に関する知識と技術を体験できる防災センターに毎年通っている家族がいました。

地震で揺れる建物や混乱する街なかから安全に避難する方法や、地震で発生した火災を消火するための消火器の使い方、119番に電話して助けを求める訓練など、災害の模擬体験ができるところが多くあります。

台風や地震などの災害から自分の身を守るために必要な知識だけでなく、人々の安全を守る仕事に従事しているかたがたの努力と働きへの感謝も併せて子どもたちに伝えたいものです。

社会・歴史教育

社会科の教科書に記載されている史跡や遺跡、文化財など、伝統文化に関する事柄は押さえておきたいところです。

時代体験型パークでは、時代と共に移り変わる衣食住の生活様式を、歴史資料と模型の展示で学ぶことができます。

<例>
・東京国立博物館(東京都台東区)
・伊賀流忍者博物館(三重県伊賀市)
・東映太秦映画村(京都府京都市)

地域の産業・工場見学

社会科見学で、静岡県の製茶工場を見学した小学生は、「お茶のほかにも、お茶を使ったクッキーやお茶の石鹸もつくっていたよ」と、地元の特産物や販売の仕事に携わる人々のアイディアに驚いたと言います。

また、帰国した友達といっしょに、「かまぼこ博物館」(神奈川県小田原市)の「かまぼこ・ちくわ手づくり体験教室」に参加した中学生たちは、「ちくわ」「かまぼこ」の原材料を知ったことで国内の水産業にも興味を広げることができたそうです。

食文化や産業に関連した実体験ができる施設はほかにもいろいろあります。

<例>
・カップヌードルミュージアム(神奈川県横浜市・大阪府池田市)
・末廣酒造「嘉永蔵」見学(福島県会津若松市)
・吹きガラス工房体験(各地)
・農業体験(各地)

スポーツ異文化体験

学校への体験入学には気おくれしても、得意のスポーツで日本のサマーキャンプに参加した小・中学生も数名いました。サッカー、テニス、野球、アイスホッケー、乗馬など、さまざまです。

サッカーのキャンプに参加した中学生は、「技術習得のための練習方法がアメリカと日本で大きく異なり、とても新鮮だった」とのこと。

さらに、上下関係のあいさつや目上の人に対する接し方、年長者に対する敬意の表し方など、アメリカにはない礼節や道徳観も学ぶことができて精神面でも成長できたようです。

夏祭り体験

地域ごとに開催される夏祭りでは日本古来の信仰や宗教観、その土地の歴史背景、風習などに触れることができます。

<例>
・京都祇園祭(京都府京都市)
・青森ねぶた祭(青森県青森市)
・徳島市阿波おどり(徳島県徳島市)
・山形花笠まつり(山形県山形市)

→「第52回 〜一時帰国の有意義な過ごし方〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員

四つ葉学院代表
西尾 由香

神奈川県の公立小学校教諭として勤務したのち、2005年に、夫のワシントン大学関連病院への転勤に伴い、家族でシアトルに移住。日本教師教育学会、日本小学校英語教育学会の会員として、海外子女教育の研究に携わる。2012年より、シアトル郊外にある四つ葉学院代表を務める。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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