Vol.41 16世紀の鯨狩りの地
レッドベイのバスク人捕鯨基地
− カナダ ニューファンドランド・ラブラドール州 −
- 2024年8月7日
- 2024年8月号掲載
世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2024年1月現在、168カ国で1199件(文化遺産933件、自然遺産227件、複合遺産39件)が登録されている。
カナダの北東部、ニューファンドランド・ラブラドール州に位置するラブラドール半島に、レッドベイと呼ばれる場所がある。ここは16世紀にバスク人の船乗り達が捕鯨活動を行なっていたエリアで、良好な状態で今も残るものとしてはもっとも古い伝統的な捕鯨基地。バスク人とは、スペインとフランスにまたがるバスク地方で古くから生活を営んでいた人々のこと。そのバスク地方からの捕鯨船団が16世紀中頃にこのエリアへとやってきて、この地を拠点に北大西洋での捕鯨を始めたとされている。鯨油は当時、照明や工業用途としてとても貴重な資源だった。レッドベイで捕獲された鯨から精製された鯨油は、販売のためヨーロッパへと輸送されていた。
レッドベイのバスク人捕鯨基地は、さまざまな施設から構成されている。捕鯨船の停泊所、鯨の解体場、鯨油を煮出すための炉、船団の居住跡や墓地のほか、沈没した捕鯨船の残骸や鯨の骨が堆積した遺物なども含まれており、寒冷な気候のためこれらは非常に良好な状態で保存されてきた。バスク人は高度な航海技術と捕鯨技術を持っており、難破船や今も残る製油所跡からは、16世紀の船舶構造や造船技術の高さ、捕鯨活動の規模や技術の高さを知ることができる。また、当時の道具や日用品なども残っており、バスク人の生活様式や文化を知るうえで貴重な遺物となっている。墓地からは労働者たちの健康状態や捕鯨活動の過酷な労働環境なども読み取ることができ、これらの資産は近代以前の捕鯨基地に関する考古学的価値および歴史的価値を高く評価され、2013年に世界文化遺産として登録された。
レッドベイ国立歴史公園へ
まずは、レッドベイ国立歴史公園のビジターセンターで情報収集から。当時の捕鯨技術や生活に関する展示や模型、映像を通じて捕鯨基地の歴史や技術を学ぼう。周辺に点在する史跡のほとんどは徒歩で回ることができる。鯨油の煮出し炉跡地には鯨油を煮出すために使用されていた炉の遺構が残っており、当時の鯨油の抽出技術がいかに高度だったかを見ることができる。また、巨大な鯨の骨が展示されているエリアでは、解体の様子や捕鯨の全貌についても学ぶことができる。捕鯨基地の周辺にはバスク人の墓地が点在しており、彼らの労働条件の厳しさや生活環境を伝える重要な資産となっているので、ぜひ訪れてほしい。
この地の歴史をより深く学びたい場合は、ガイドツアーに参加するのがおすすめ。専門的な知識を持ったガイドの説明を聞きながら歴史的な見どころを効率良く回ることができる。レッドベイ周辺は美しい自然に囲まれており、カヤックやハイキングなどを楽しむこともできる。自然と歴史が融合するこの地で特別なひと時を過ごしてみてはいかが。
遺産プロフィール
レッドベイのバスク人捕鯨基地
Red Bay Basque Whaling Station
登録年 2013年
遺産種別 世界文化遺産
https://parks.canada.ca/lhn-nhs/nl/redbay
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