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海外教育Navi 第67回
〜日本語・英語の言語力を伸ばす〜〈前編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2021年1月1日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.子どもは日本語も英語も中途半端です。どうしたらよいのでしょうか。
「日本語も英語も中途半端」だとしたら、心配な状態ですね。できるだけ早く、日本語でも英語でも少なくとも一つのことばが年齢相当に使えるようにしてあげたいところです。そうすれば、英語でわからなくても日本語でならわかる、または日本語でわからなくても英語でならわかるということになりますから、その年齢なりのコミュニケーション力や理解力を伸ばしていくことができます。
お子さんの年齢や置かれた環境に応じ、経験や研究の成果を踏まえて考えていけばできることが見えてくるかもしれません。それには、よく言われるように「生活言語」と「学習言語」を分けて考えるとわかりやすいのではないかと思います。
「生活言語」を伸ばす
「生活言語」は、生活のなかで使われていることばを繰り返し聞くことによって身についていくものです。ですから、なんといってもことばをたくさん聞かせることが大切です。お子さんが小さいほど、親との関係は密接ですから、「たくさん話しかける」「読んで聞かせる」ことが最初にできることでしょう。それが日本語でなのか、英語でなのかという点では「親がいちばん使いやすいことば」が原則です。もし母親と父親の使う言語が違っていたら、それぞれが自分のことばで話しかけるのがよいといわれています。
子どもの聞くことばが日本語であれば、子どもは日本語を通してことばの機能を体験し、身につけていきます。
日本語と英語は表面的には別のもののように見えても「ことば」という点では同じです。ですから親が自分の言語を使って「ことばを使う力」を育てることで、その力は、ほかの言語にも通用するのです。
逆に、この力が身につかなければどの言語も伸ばすことができません。ここに「母語」の大切さが強調される理由があります。
お子さんが現地の幼稚園や小学校に通うようになると、家庭の外では違う言語で生活をするようになるでしょう。しかし、家庭が重要な場所であることには変わりありません。
それに、家庭内の日常の会話はそれほど複雑なものではないので、親が得意なことばで間に合う部分は多いと思います。たとえば、日本語ではなかなか埒が明かなくて英語でいいかえるような場合があったとしても、その前に一度日本語を聞かせることには意味があります。
家庭と学校で使うことばが異なってもそれは大きな問題ではありません。もともと生活言語はそれを使う環境に深く結びついているものなので、同じ日本語でも家庭と学校のことばは同じではありません。学校で生活するためのことばは、学校で繰り返し聞くことで覚えていくものです。
もし、親のことばが日本語で日本に住んでいるのなら、生活言語としての日本語を伸ばす環境は整っているといえます。身の周りのこと、学校のこと、社会のことなど、日本語でたくさん話をすることによって日本語についての自信は深まっていくでしょう。
帰国してまもなくであれば、友達の言っていることが理解できなかったり、いろいろな誤解があったりするかもしれませんが、そのつど学びの機会にしていけば、時間と共に困難は少なくなっていくに違いありません。それまでの「我慢の時期」は焦らず、励ましていくことが大人の仕事です。
もし海外に住んでいるのなら、補習校など日本語の環境がある場所を利用するのが効果的です。また一時帰国で体験入学をすることなどは、生活言語を広く目に見えて伸ばすことにつながります。
→「第68回 〜日本語・英語の言語力を伸ばす〜〈後編〉」を読む。
海外子女教育振興財団 教育相談員
佐々 信行
1971〜92年、横浜市立小学校教諭(1974〜77年、ハンブルグ補習授業校教諭)。1992〜2001年、バージニア州グレートフォールズ小学校イマージョンプログラム教諭(同時にワシントン補習授業校教諭)。長女はドイツ生まれ、長男はアメリカで中高時代を過ごす。2001〜08年、啓明学園初等学校校長。2008〜14年、啓明学園中学校高等学校校長。
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