海外教育Navi 第74回
〜日本へ帰国後、子どもの学校での適応〜〈後編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.帰国後の適応で、学習以外のことで留意すべき点を教えてください。

前回のコラムでは、日本の小学校の1日の流れや海外の学校との違いについてご説明しました(前回記事へ)。今回は、帰国に向けて準備すべきことをご説明します。

帰国に備えて知っておくとよいこと

日本の学校と現在通っている学校との違いを子どもに伝えてください。

日本の学校について折りに触れて話題にするとよいと思います。ただし、どちらが正しいとか先進的であるとかを決めつけないことが大事です。

それぞれ、目標とするものが少しずつ異なっています。お子さんには文化・習慣の違いを理解させるべきでしょう。

海外から帰国した子どもが誤解されやすいのは、以下のような傾向があるからでしょうか。

*人の意見を聞かず、自分の意見をすぐ言うように見える。
*いつも目立ちたがっているように見える。
*自分の意見ばかりを主張するように見える。
*空気を読まない。あうんの呼吸がわからない。
*先生に対してなれなれしい。
*外国人の先生を授業中に独占して話し続ける。

学校との関係

保護者から編入先の学校の先生たちに、いままで受けてきた教育との違いをできれば文書で伝え、なるべく理解してもらえるようにしましょう。そのうえで、日直や掃除のやり方などを具体的に教えてもらえるようにお願いするとよいと思います。係など他の児童と協力して行う仕事を割りふってもらうと、学級に溶け込みやすくなります。

さらにグローバルな取り組みの時間等で、滞在国の学校や生活について発表する機会を与えてもらえると自信になり、ほかの子どもたちの理解も進むでしょう。

海外生活で得たものを否定されるのは耐えられないことです。先生にはくれぐれも気をつけてもらうよう、上手にお願いする必要があります。

体験を生かすには

まず帰国する子ども本人に自身の体験や努力した経験がたいへん貴重なものであると自覚させ、誇りを持たせることが大事です。帰国生の特長の傾向として「自分の意見をはっきり言える、他人に頼らないで自立した行動をとることができる、新しいことに対する順応力が高く積極的に行動する面を持ち合わせている、先生や大人にも臆せずに接することができる」などがあります。

日本の学校のみで育つと、その文化・習慣だけがすべてだと思いがちです。それに対して帰国生は世界には日本と違う考え方や文化・習慣が数多くあるということを、実感を持って伝えることができます。

一方、自分の体験を伝えるためには相手の立場に立ってわかってもらえるように工夫することが大事です。日本の学校の習慣にも理解を持つよう努力しましょう。

海外生活の長い子どもにとっては、新たに「日本に行く」くらいの気持ちになる場合もあるでしょう。初めて海外に行ったときのことを思い出して取り組めば海外で培った積極性を生かせる場面も多いはずです。

終わりに

毎朝、明るく元気に大きな声であいさつをして、新しい学校に慣れるように努めましょう。新しい環境(学校)になじめないのは誰にでもあることです。

いじめられないかなど過度に敏感になる必要はありませんが、ご家庭ではお子さんの変化に気をつけて、もし元気がなくなってきたと感じる場合は、お子さんとゆっくり話をして本音を聞き出したうえで、担任の先生とよく連絡を取り合って対処していくとよいでしょう。

心配は尽きないかもしれませんが、自信を持って海外体験を持ち帰り、いっそう活躍されることを願っています。

今回の相談員

海外子女教育振興財団教育相談員
中山 順一

帰国子女の受け入れを目的に設立された国際基督教大学高等学校で創立2年目から38年間勤務。6000人以上の帰国生徒とかかわった。2008年より教頭。教務一般以外に入試業務(書類審査を含む)も担当した。2017年より海外子女教育振興財団で教育相談員を務める。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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