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海外教育Navi 第90回
〜日本の理系の大学に進むための準備〜〈後編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2021年12月15日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.子どもは日本の理系の大学に進みたいといいます。帰国生が理系を選択するのは不利になりますか。
前回のコラムでは、帰国生枠の大学入試制度についてお話ししました(前回記事へ)。今回は、帰国生受け入れ校や予備校からのアドバイスをご紹介します。
帰国生受け入れ校の先生がたからのアドバイス
帰国生受け入れ校の先生がたから、理系の進学を希望する帰国生の皆さんに対して、次のようなアドバイスが寄せられました。
・どのような教育制度で学ぶにしても、理系進学を考えている人は理科/数学をしっかり学んでおくことが大切です。
・まずは数学の力をつけてほしいと思います。それはたんに計算力だけでなく、読解力を含めた論理的思考を磨くことも意識してください。
・数学は日本の教科書や参考書などを使って、まずは基礎的な問題に取り組んでみてください。
・理系進学といっても、日本語の文章を書く練習が必要です。
・外国語に強いというアドバンテージを生かして受験に臨んでほしいと思います
・帰国生であることを不利と考えて理系進学をあきらめないでください。進学後にそれまでの知識や経験が役立つことになると思います。
・帰国生は、大学の入学者選抜の結果を見ると、今後いっそう求められる「主体性・多様性・協調性」が優れている傾向にあります。自分の強みを生かしてがんばってください。
・帰国生は総合型選抜(AO入試)において有利です。理系の進学に限らず、大学を十分にリサーチして準備するとよいでしょう。
これらのほかにも、いくつかの学校から、入学・編入学当初は数学・理科に遅れがあったり自信がなかったりした生徒があきらめずに学習に取り組み、志望の大学に進学できた例や、大学に進学したあとも学力が向上してよい成果を上げている例など、海外生活で培われた個性を生かした進路を選びとっている例が多く報告されています。
予備校への調査結果
帰国生の大学受験を専門とする2つの予備校の担当者に、帰国生の理系大学への進学についての留意点を聞いたところ、次のようなアドバイスをもらいました。
・海外では、まずいま通っている学校の学習をしっかりがんばってください。
・海外と日本の学校では学習内容が異なるので、理科も数学も未履修分野があるでしょう。日本の教科書を手に入れて、海外の学校で学習していない分野の確認をすることが必要です。入試問題など難しい問題に取り組むのではなく、まずは基本的な内容をしっかり理解しておくとよいでしょう。
・数学は電卓を使わないで計算する練習が必要になります。
・工学・テクノロジー系では物理、薬学系では化学が要求されるなど、大学の学部・学科によって入試科目や統一試験の科目が指定されています。海外の高校で科目を選択する際には、必要な科目を受講できるよう志望校の情報を調べておきましょう。
・国立大学ではバカロレア入試が増えつつあります。バカロレア入試で要求される科目の情報を調べておくとよいでしょう。
・理系の志願者は国立を志望する人が多いようです。日本式の数学や理科には苦労するかもしれませんが、帰国直後は難しくても、2月まで勉強を続けると急激に成績が向上して合格する例が多いのでがんばってください。
理系進学を希望する皆さんへ
中央教育審議会の答申を受け、各大学では「ディプロマ・ポリシー」、「カリキュラム・ポリシー」、「アドミッション・ポリシー」の3つのポリシーを策定し公開しています。
理系への進学希望者のほか、まだ進路選択に迷っている人も、気になる大学のサイトを見て、「自分が学びたいことを学べる学部・学科なのか」、「卒業するまでに求められる学修成果とは何か」、さらに「その大学はどのような能力を受験生に求めているのか」、「入学試験の基本方針は何か」等を調べることで、大学選択の方向性が定まり、入試に向けた準備の見通しを立てることができます。
海外の高校で学ぶ数学や理科の内容は、日本の学校で学ぶものと違いがあったとしても、そのときの勉強が基礎となり、筆記試験等に生かせるはずです。
大切なのは、自分の進路の目標を明確にして、TOEFL、SAT、IBなどの統一試験等で少しでも高い点数を取れるように勉強に専念し、希望する進路の実現に向けて挑戦することです。
最後に、理系に進学した帰国生の体験談を紹介します。
私はアメリカで中学1年から高校2年までを過ごして、帰国しました。編入した高校では授業の内容が大きく違っていて、戸惑うことばかりでした。人間関係もうまくいかず、悶々とした日々を過ごしていましたが、親から「目標を持て」と言われ、医学部受験を決意しました。アメリカの学校で学んだバイオテクノロジーに興味があったのと、「人の命を救いたい」という思いがあったからです。
アメリカでは理系は得意だったので、帰国後に点が取れないのは日米でスタイルが違うからだと割り切り、日本のスタイルを身につけるために中学の教科書に遡ってやり直しました。いま思えば、友達ができなかった分、勉強に打ち込めたのがよかったのかもしれません(苦笑)。
一浪しましたが合格できました。大学では海外の文献を読む機会も多く、英語は大きな武器になっていますし、アメリカで学んだ広い視野も生きています。
海外子女教育振興財団 教育相談室長
植野 美穂
東京学芸大学附属高等学校大泉校舎の開設に携わり、以降数学の教師として帰国子女教育にかかわる。同大学附属国際中等教育学校の開校に開設準備室長として関与し、2007年から同校教諭。09年より海外子女教育振興財団の教育相談員、14年より教育相談室長。
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