海外教育Navi 第96回
〜インター校で外国人の友達を作るには〜〈後編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。


Q.インターナショナルスクールに通っています。もっと外国人と接したいのですが、日本人同士のつき合いから抜け出せずにいます。どうしたらいいのでしょうか。

前回のコラムでは、あいさつの仕方や授業での関わり方についてお話ししました(前回記事へ)。今回は、授業以外での関わり方についてお話しします。

授業以外の
アクティビティで

ミドルスクール以上なら、授業以外にスポーツ、芸術などのアクティビティが用意されている学校が多いと思います。これに参加することもたいへんよいことです。同じことに興味を持っている人たちの集まりですから共通の話題があり、仲よくなりやすいのです。スポーツのルールは世界共通のものが多いので、ことばの壁はあまり問題になりません。

自分が好きな内容のクラブなどの募集があったら応募してみましょう。「学校に慣れていないから」と消極的になる人もいますが、慣れていないからこそ参加する意味が大きいともいえます。

小学校などで、授業後の活動があまり行われていない場合や、年間を通して同じスポーツに取り組みたい場合などは学校外のクラブに参加する方法があります。私の息子の場合は、アメリカに渡ったときが1週間の春休みにあたっていて、学校に行くより先にサッカーチームの練習に参加しました。彼にとっては、サッカーのチームやクラブに参加することが新しい環境で自信を持つために大きな助けになりました。

日本人同士のつき合いから

日本人同士のつき合いから抜け出さなければほかの国から来た人たちと仲よくなれないでしょうか。日本人同士のつき合いを日本人以外の友達づくりに活用すると考えてはどうでしょう。

「せっかくインターナショナルスクールに通っているのに日本人以外の友達ができないのは残念だ」、そう感じている日本人の子どもはあなただけではないかもしれません。日本人の友達の間でそのことを話題にしてみてはどうでしょう。いっしょに考えてみれば、いい考えが出てくるかもしれません。すでに外国人の友達とつき合っている日本人の友達に誰かを紹介してもらうのも悪くない方法です。

補習授業校があれば

もし近くに補習授業校があれば、通ってみることをお勧めします。インターナショナルスクールとは逆にそこは日本語の世界なので、自信を持ってコミュニケーションができます。

インターナショナルスクールではなかなか力が発揮できなくて疲れてしまっても、補習授業校では元気に生活や学習ができ、新しいパワーを蓄えることができます。同じような境遇の仲間は、あなたの気持ちをよくわかってくれるし、インターナショナルスクールでの学校生活や学習の進め方について、すぐに役立つ知恵を授けてくれます。

なかには、日本語があまり得意でないのに補習授業校に来てがんばっている友達もいるでしょう。そんな友達と励まし合うことはきっと大きな力になります。もしかしたら、あなたが外国人の友達をつくる橋渡しをしてもらえる場合もあるかもしれません。

チャンスはかならずある

このように、試す価値のある方法はいろいろ考え出すことができます。明日、学校であなたとクラスメイトとの間にどんなことが起きそうか想像してみましょう。あまり楽しくなさそうだったら、楽しくなった状態を思い浮かべてみてください。

スクールバスの中でも、散歩しながらでも、お風呂の中ででも、柔らかく頭を働かせて考えていると、あなたに合った方法が見つかるでしょう。考えているうちに、あなたの周りにどんな人たちがいるのか、あなた自身はどんな人なのかがだんだんわかってくるかもしれません。

毎日学校で生活していれば、たくさんの人たちと小さな接点がいっぱいあるはずです。そのつもりで待っていれば、チャンスを逃さず捉えることができます。

毎日のニュースを見てもわかるように、いまの世界は難しいことだらけです。残念ながら、いまの大人には解決できないことがたくさんあります。解決できない最も大きな原因は、私たちがほかの国、ほかの文化をよく知らないことではないかと思います。ある外国出身の人とひとことことばを交わす経験を持っただけでも、その国の出来事への関心が高まります。

外国人の友達とつき合いたいという気持ちを持ったあなたがインターナショナルスクールに通っていることは私たち大人にとって大きな希望です。

今回の相談員
佐々 信行

1971〜92年、横浜市立小学校教諭(1974〜77年、ハンブルグ補習授業校教諭)。1992〜2001年、バージニア州グレートフォールズ小学校イマージョンプログラム教諭(同時にワシントン補習授業校教諭)。長女はドイツ生まれ、長男はアメリカで中高時代を過ごす。2001〜08年、啓明学園初等学校校長。2008〜14年、啓明学園中学校高等学校校長。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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