米国大手会計士事務所・所得税担当者監修
個人所得税申告書の作成ガイド2022

文/小原万志(Text by Kazushi Obara)

海外金融資産情報開示(FinCEN 114とForm 8938)について

①FinCEN 114(外国金融口座報告書)

米国外に金融資産を保有している人は、口座の残高合計額が年中に一度でも1万ドルを超えた場合、連邦個人税務申告書と別に外国金融口座報告書(FinCEN 114)の提出が必要である。このフォームは税法に基づくものではなく、マネーロンダリングなどの違法行為を取り締まることを目的とした法律に基づいている。銀行などはこの法律をもとに、米国外にある銀行・金融口座情報の開示を要求される。そのため、提出先はIRSではなく米国財務省(Treasury)になる。

また、2016年度分から、FinCEN 114の提出期日は米国個人所得税申告書の提出期日と同じ(原則4月15日)。提出はすべてEファイル(オンラインによる電子申告)が義務付けられている。FinCEN 114は延長申請も可能。

豆知識
  • 夫婦合算申告で、申告者と配偶者が各自の金融口座を保有する場合は、別々の提出が必要になる。
  • 近年このフォームの注目度が高まっており、ペナルティも大変厳しいものとなっている。フォームの未提出、必要情報の未記入、虚偽の記載はペナルティの対象となる。

②Form 8938(外国金融資産報告書)

前述で説明した通り、FinCENを管轄しているのは米国財務省(Treasury)だが、Form 8938の管轄はIRSになり、税務申告書に添付して提出する。対象となる資産は多岐にわたり、上記のFinCEN 114より広範囲に及ぶので注意が必要(詳しくは専門家に相談)。

豆知識
  • Form 8938を提出する必要がある人は、FinCEN 114の提出義務が発生する場合がある。
  • FinCEN 114と同様、ペナルティも厳しいものとなっている。
  • 非居住者の場合、FinCEN 114の提出義務はない。ただし、租税条約により非居住者となる場合、提出義務は残る。
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小原万志(Kazushi Obara)

小原万志(Kazushi Obara)

ライタープロフィール

小原公認会計士事務所(インディアナ州)。グローバル勅許管理会計士/米国公認会計士/公認情報システム監査人/公認情報技術プロフェッショナル。早稲田大学卒業。大蔵省・国税庁、BIG4等監査法人、米国日系現地法人自動車部品会社勤務。在米31年。

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