1月5日、全米監督組合の劇場で「Silence」のプレミアが開催された。
日本から駆けつけた出演者の塚本晋也、窪塚洋介にインタビューした。
「信じているものを圧力で押しつぶそうとする力を
人間の英知でなくすことはできないのか?」
塚本晋也
「信じることの大事さだけでなく、自分の中で大事に信じているものを圧力で押しつぶそうとする力がいつもあるというのを考えました。そうした力はいつも暴力を伴っている理不尽さがあり、いつの時代も変わらなくあるという事への嘆きを感じました。そういうのって人間の英知でなくなる時って来ないのかなとつくづく思います。(近年、頻繁に起きているテロ事件も)信じるものが違うことで暴力になる。暴力に対して暴力で仕返しをしようとする。血で血を洗い、いつまでも終わらない。なんでそうなっちゃうのかなと考えさせられましたね」
監督として、俳優として巨匠マーティン・スコセッシ監督との仕事で学んだことを聞くとこんな答えが返ってきた。
「高校時代から大ファンだった監督と関われるというのは、この上ないことで、勉強できることだらけでした。俳優のことを尊重して、俳優が自由にのびのびと演技ができるように状況を整えてくれる。俳優の自由を許すだけじゃなく、それを完全に自分の血肉にして、映画を作る要素に完全にうまく組み込む。ロバート・デ・ニーロとのコラボ作品が大好きなんですが、それらも昔そうやって作っていたんだと分かり、すごく勉強になりました」。同じ映画ファンとして塚本の感想にうなった。
「宗教と信仰は違う。自分の心に素直に、
そして、信念を持って貫くというのは大切」
窪塚洋介
「原作のキチジローは醜くてずるくて、弱き者という存在なんです。そんな彼について考えたとき、『イノセント』というキーワードが出てきました。イノセントなゆえに人を裏切ったり弱くなったりする。ただ、それは同時に、踏み絵を踏める強さにも置き換えられる。とても取り組みがいのある役でした」
ビルの9階から落ちたにも関わらず復帰した窪塚にとって、信じることとはどういうものなのだろう。
「神社が好きで、土地土地の神社巡りをするぼくは、宗教と信仰は違うと思っています。宗教には教義がある。例えば、『こういう風にしなければいけません』というね。でも、信仰は、『今日も朝日が美しい』とか、『ああ、ありがたい』という風に自然と手を合わせたくなることなんじゃないかなと……。それがキチジローの『踏んでしまった。でも信じている』という考えに繋がると思うんです。一度踏んだらお終いではなく、彼は生涯、神を信じ続けていたのだと思います。ぼくは、自分の信念に忠実であればあるほど、天の助けみたいなのはあるのではと思っています。ぼく自身、今までずっとそれを感じてきた。だから、自分の心に素直に、信念を持って貫くというのは大切だと思うんです」
巨匠スコセッシ監督をオーディションでうならせた窪塚。そんなスコセッシ監督の第一印象は、「親戚の人みたいな感じがするくらい、すごく穏やかで、相手に緊張感を与えないような感じで接してくれる人でした」とコメント。チャラい若者が多い中、真剣に深く考える窪塚の今後がとても楽しみだ。
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