技術と人をつなぐ、世界標準への挑戦

TOP INTERVIEW アメリカ市場に勝負を賭ける日系企業のトップに聞く。

2014年に村田製作所が買収したPeregrine Semiconductorを2018年にpSemi社に社名変更、村田グループの競争力向上に欠かせない存在になっている。2025年7月にCEOになった丸山豪氏に同社の活動や経営指針についてお話を聞いた。

pSemi 社 CEO の丸山豪氏

村田製作所グループの「アーム」として

2014年に村田製作所が米国Peregrine Semiconductorを買収し、2018年にpSemiへ社名変更してから、同社はグループの競争力強化に欠かせない存在となっている。2025年7月にCEOに就任した丸山豪氏は、自社の役割を「村田製作所のアームとして、半導体デバイスの設計技術を担う会社」と説明する。

本社オフィスの外観

スマートフォン一台には多くの半導体デバイスが組み込まれ、その動作を支えるのがpSemiの技術だ。標準的な工程に依存する他社と違い、独自のプロセス開発を強みに持ち、顧客ニーズに応じた高性能かつカスタマイズ可能なソリューションを提供する。「半導体業界は常に波を繰り返してきた」と丸山氏は語る。1980年代の通信規格の進化、2000年代のスマートフォン普及、そして現在のAIと6Gへの移行。こうした節目ごとに業界は大きく変化し、今も新たな波に直面している。「必要な価値を先取りし、社会に還元することこそがpSemiの使命であり、グローバル市場で競争力を発揮する原動力です」と強調した 。

オフィス入口には取得した特許証明の数に圧倒される

「スモールジャイアント」という旗印

CEO就任時、丸山氏が掲げたスローガンは「スモールジャイアント」。小さくとも大胆に挑戦し、強みを生かした領域で勝負するという哲学だ。「スタートアップのようなマインドを大切にしながら、チーム全体で未来を切り拓く。その姿勢を失わないことが重要です」と語る。この理念を形にするため、丸山氏はCEO就任前からカルチャーを再定義する経営陣主導の「エンプロイー・エンゲージメント・プロジェクト」を従業員達と共に推進した。福利厚生や評価制度を見直し、透明性の高いコミュニケーションを実現することで従業員エンゲージメントを高めた。その成果は社外からも認められ、グラスドアの「全米中小企業ベスト・プレイス・トゥ・ワーク」に選ばれるなど顕著な成果を挙げ、CEO就任後も継続強化している 。

対話を重視した経営姿勢

アメリカ市場は政策や関税の変動など不確実性が高い。「だからこそ、悪い情報ほど迅速に吸い上げる仕組みをつくる必要がある」と丸山氏は語る。従業員の声に耳を傾け、柔軟に対応することで、持続可能な経営を実現する。その姿勢はカルチャーづくりと表裏一体だ。2025年は3か年計画の初年度にあたり、丸山氏は「戦略を着実に実行することが最重要課題」と断言する。本社との協力体制を一層強化し、両社の総合力を高めると同時に、スマートフォン以外の新市場開拓にも力を注ぐ。特に電源管理用半導体デバイスは、過去の買収資産を活用し、インキュベーション段階から本格的なオペレーションへと移行を進めている 。

週末は穏やかにリフレッシュ

厳しい表情を見せる経営の現場とは対照的に、週末の丸山氏は穏やかな時間を楽しむ。犬との散歩やドッグショーへの参加、MLBサンディエゴパドレスやダルビッシュ有の試合観戦は大切なリフレッシュの時間だ。さらに古着やアンティークを探すヴィンテージマーケット巡りも欠かせない趣味だという。「新しい発見や出会いが、リラクセーションにつながっています」と笑顔を見せた 。

丸山氏の発言から伝わるのは、技術と人をつなぐ視点だ。独自技術で市場に挑みつつ、社員の声に耳を傾け、カルチャーを磨き続ける姿勢。その両輪が「スモールジャイアント」の実践であり、pSemiの競争力の源泉になっている。「次の6G・AI時代を切り拓く挑戦は、半導体業界の未来だけでなく社会の発展を支えるものだと信じています」。丸山氏の挑戦は、すでに次の波をつくり始めている。

丸山社長とCorporate Planning & Developmentディレクターの三井氏の強力タッグが会社の推進源

プロフィール
丸山 豪
pSemi Corporation CEO
1998年に日本国内でキャリアをスタートし、需要予測やM&A調査を担当。米国留学でMBAおよびITマスターを取得後、村田製作所本社にて企画・戦略策定を担う。その後、中国支社で新規事業を推進し、市場拡大を牽引。趣味はスポーツ観戦、愛犬とのドッグショー参加、ヴィンテージTシャツ発掘など。

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