物流を制すものはビジネスを制すか? 
第17回

前回、欧州運賃同盟加入船社がブッキングコミッションの割引率を大きくすることで、台頭する盟外船社との競合に対抗していた状況を書いた。

コミッションをめぐる事件

コモディティレート中心の運賃設定は、その品目のベースレートにBAF(Banker Adjustments Factor)と呼ばれる原油の高騰に伴う上昇の一部を荷主に負担してももらう費用や、CAF(Currency Adjustments Factor)と呼ばれる通貨、日本の場合は円の為替変動に伴う上昇分を荷主に負担してもらう費用などのサーチャージと呼ばれる費用が加味され、その合計からコミッションが差引かれた。

私は当時(1985年前後)、韓国系船社の日本の代理店に勤務していた。その会社は欧州運賃同盟のメンバー船社であり、ほかの同盟船社とエース・グループと呼ばれるコンソーシアムを組んでいた。メンバーは邦船社、韓国船社、フランス船社など6社で構成され、各社が1隻ずつ航路に投入し、定曜日サービスを提供していた。

6社が7日ごとに船を出すということで、6 x 7 = 42日。すなわち、42日で1航海となる。東京を出た船がインド洋を抜け、アフリカを超えて、欧州の主要港であるイギリスのフェリクストウ、オランダのロッテルダム、ベルギーのアントワープ、フランスのル・ハーブル、ドイツのハンブルグなどを回って東京に戻ってくる。その所要日数が42日なのである。

エース・グループ以外では、邦船社、独船社が中心のトリオ・グループや欧州系の船社が中心となって構成されたスカンダッチと呼ばれるグループもあり、同盟同士でも競合も厳しさを増して行った。

そんなある日、私の務める会社に前触れもなく、欧州同盟の査察員が入ってきて、事務所の机の中やキャビネットの中の書類を調べ始めた。それはテレビの特捜物でよく見る光景に似ていて、私たちは書類に触ってならないと言われ、いくつかの書類が会議室に運ばれ精査された。

丸一日書類を精査した結果、残念ながら、ある営業担当者のロッカーの中から極秘の書類が出てきたとして、支店長と該当営業社員が会議室に呼ばれた。欧州運賃同盟の威光がまだまだお盛んな時だ。彼らは、ある同盟荷主に対してPとCと呼ばれるコミッションが定期的に払われていることを示すメモを、支店長や営業社員に突きつけた。

数年間にわたり、多額のコミッションが支払われていたことが分かり、同盟は私の会社に罰金を課した。その金額は、私の記憶では2000〜3000万円だった。支店長は降格されて本国に戻され、指摘された営業社員は即刻解雇された。

その件とは直接関係はないと思われるが、その韓国系の船社は経営破綻し倒産した。私たち代理店社員は、幸いにもその会社を買い取った別の韓国系船社のもとで営業を続けることができた。

欧州運賃同盟の終焉

その会社は同盟運営の限界を見抜いていたのか、発足当初より同盟には加入せず、盟外船社として営業を展開していた。そのため、私たちもシンプルなボックス・レートで運賃設定ができた。ジャパン・ベース・ポートから欧州各港まで、20フィート1700ドル、40フィートは2倍の3400ドル。こんな運賃だったと記憶している。

その後も同盟は存続したが、同盟内部の競合や上昇を続けるコミッションの支払い負担などもあり、徐々に力を失っていった。1875年に結成され、2度の世界大戦をくぐり抜けてアジアと欧州間で絶対的な力を誇示し、泣く子も黙ると言われた欧州運賃同盟は、21世紀の幕開け後、2003年にその任を終え、静かに解散・消滅した。

同盟の消滅を早めた最大の要因は、コモディティ・レートからボックス・レートに運賃設定を変えさせたコンテナ船社の登場が挙げられる。物流の一大革命を起こしたコンテナリーゼンション。それは米国で始まった。次号はアジア・米国の海上輸送の変遷を追っていく。

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赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

ライタープロフィール

外航海運会社で20年以上にわたり北米定期航路の集荷営業に従事。北米駐在を経て2013年9月、北米唯一の海運、港湾、物流情報発信会社SHIPFANを設立。
「日本海事新聞」紙上に「ロサンゼルス便り」、 ロサンゼルスのフリーペーパーに「物流時報」を定期掲載するほか、物流コンサルティング、物流セミナー、港湾ツアーの開催、輸出入のマッチング業務を手がけている。ロサンゼルス港に「コンテナ物流研究所」を開設。

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