カリフォルニア発
Taco Bell
東京・渋谷、4月にオープン

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

「新アメリカン・ブランド」日本へ続々進出~第4弾
アメリカが、日本で再びブームのようだ。特に「食」の世界で、ローカル色の濃い新種のブランドが続々と進出している。ハンバーガー、ドーナツ、ピザなどが新しいスタイルのアメリカン・ブランドとして日本に上陸していく様を、数回にわたって紹介する。

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 今年の春、東京都心での食の話題をさらったのは「タコベル」だ。ブログやフェイスブックなどのソーシャルネットワーク上で、早くから、「タコベルがオープンするだって」という噂が飛び交っていた。

 正式オープンは4月21日。その前後の英字紙の「TOKYO発」の特派員コラムやニュース記事はタコベルの話題ばかり。「一度は日本を去った、あの伝説のファストフードの店が戻ってくる」といった興奮気味のリポートもあった。東京に住むアメリカ人も、かなり盛り上がっていた。

 オープン翌日の夕方、私も携帯画面の地図を頼りに行ってみた。渋谷駅前の大きな交差点を渡り、道玄坂を上がって、すぐに右の脇道へ。このあたりには、昔は安くておいしい回転寿司の店があったはず、ラブホテル街も近いのでは、などと思いながら進むと、あった。

 看板のロゴは、アメリカでおなじみのタコベルとまったく同じだが、店から受ける印象はずいぶん違う。アメリカでは、ガソリンスタンド併設のドライブスルーの安い店、というのが大方のタコベルのイメージだと思うが、東京では、茶色の木の板が前面に出ていて、ログハウス風でさえある。さすが日本、なんでも「おしゃれ」に変えてしまう。

 前日は徹夜組も出たそうで、閉店前に売り切れ。この日も案の定、私が着いたときには「完売御礼」。傘をさしたスタッフが、店の前で「ごめんなさい、明日朝また来てください」と謝っていた。

 オープン初日には約300人が行列をつくり、待ち時間は最長で3時間。タコベルの1日の店舗あたりの売り上げのワールドレコードを達成した、というからスゴイ。

Photo Courtesy of Taco Bell Corp.

Photo Courtesy of Taco Bell Corp.

 タコベルは、1980年代に一度日本に進出している。タコスとブリトーを売る店として、アメリカンフード好きの間では人気が出たが、業績が上がらず90年代に撤退した。

 タコベルによると、20年ぶりに進出を決めた理由は、「今がベストタイミングだと思ったから」だという。「世界的にメキシカンフードがブームになりつつあり、日本でも徐々に人気が高まっている。ソーシャルメディアの普及によって、新しく、ユニークな食べ物の写真がどんどん広まっていく時代で、新しい食の選択肢を提案するのにいい時期だと判断した」。日本でのタコベルのブランド構築や、店舗の立地選び、メニューづくりにも相当の時間を費やしたという。

 前述したように、ブランドのイメージの違いは、アメリカのタコベルを知っている身には、一目瞭然だ。

暗めの照明に、カリフォルニアの快活なライフスタイルを伝える絵などが描かれた店内 Photo © Mirei Sato

暗めの照明に、カリフォルニアの快活なライフスタイルを伝える絵などが描かれた店内
Photo © Mirei Sato

 照明はじゃっかん暗め。レジ周辺にはタコベルのカラーの紫色のライトアップが成されている。店内の壁には、カリフォルニアをイメージした絵や写真がいっぱいだ。

 アメリカにいるとあまり意識しないので、「なぜ?」と思ってしまったが、実はタコベルは南カリフォルニアが発祥の地。ロサンゼルス近郊のダウニーに1962年に1号店ができた。本社はアーバインにある。

 海外戦略として、タコベルの創業地である「カリフォルニア」の空気を強く印象づけ、若さ、明るさ、陽気さ、自由さをアピールしているのだという。これは日本だけでなく、タコベルが世界各国に展開する店でも共通しているそうだ。

 本国アメリカでも、タコベルはここ数年、イメージ転換を図ってきた。本物のメキシコ料理には程遠いけれどメキシカン気分が味わえて、安くてボリュームたっぷりで…というのがアメリカの大衆が理解するタコベルだったが、近年は「Live Mas!」というキャッチフレーズで、一度きりの人生を最大限に楽しむライフスタイル、その活力源となる食べ物、というメッセージを打ち出している。スーパーボウルで流れた、老人たちが若者以上に元気に夜通し遊びまくるCMが、その代表だ。

 渋谷店でも、「Live Mas!」のキャッチフレーズがたくさん使われていた。

Photo © Mirei Sato

Photo © Mirei Sato

Photo Courtesy of Taco Bell Corp.

Photo Courtesy of Taco Bell Corp.

 日本進出が話題になった一因は、「ご当地メニュー」にもある。

 「シュリンプ&アボカドブリトー」(590円)と、「タコライス」(530円)は、ともに日本限定のメニューだ。前者は、日本人になじみのあるエビという食材に、アボカドソース、わさびマヨネーズ、レタス、サルサを組み合わせた。後者は、メキシカンライスに、ビーフ、チェダーチーズ、サルサ、レタスを盛りつけた。

日本限定メニューの「シュリンプ&アボカドブリトー」 Photo © Mirei Sato

日本限定メニューの「シュリンプ&アボカドブリトー」
Photo © Mirei Sato

 一番よくでるメニューは、定番のビーフ・タコスのコンボ(790円)。アメリカと同様、肉の種類やスパイシーさの加減を選べる。オーダーを受けてからつくるスタイルと、おかわり自由のドリンクバーも、客に喜ばれているそうだ。ビールも飲める。

 オープンから約2カ月後、再び道玄坂の店を訪れてみた。当初の大行列や売り切れ騒ぎは消えて、すっかり渋谷の風景にとけ込んだ感じ。

 2020年の東京五輪開催に向けて、これからますます外国人が増えていく日本。それも見込んで、タコベルは2号店のオープンを準備中だ。

定番メニューのビーフ・タコス Photo © Mirei Sato

定番メニューのビーフ・タコス
Photo © Mirei Sato

TOKYO

Taco Bell
東京都渋谷区道玄坂2-25-14
03-6427-8543
www.tacobell.co.jp

Photo © Mirei Sato

Photo © Mirei Sato

 年中無休で、営業時間は10am~11pm。午前中と3〜5pmの時間帯が比較的すいているという。全104席で、1階と地階にわかれている。
 タコス、ブリトー、ケサディーヤなどの単品メニューは、300〜600円前後。サイドメニューで、ナチョチップ、メキシカンポテトなどを選び、ドリンクもつけてコンボにすると、700〜800円前後になる。
 日本進出にあたり、タコベルは、「牛角」「とりでん」などを運営する「株式会社アスラポート・ダイニング」(東京都港区)とフランチャイズ契約を結んだ。

Photo © Mirei Sato

Photo © Mirei Sato


東京都渋谷区道玄坂2-25-14

USA

Taco Bell
ww.tacobell.com

 創業1962年。全米に6000店舗以上を展開する。アメリカ国外では、カナダやイギリス、韓国、シンガポールなど、約25カ国に約250店舗がある。親会社は、ケンタッキーフライドチキンやピザハットを傘下におさめる「YUM! Brands, Inc.」だ。

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佐藤美玲 (Mirei Sato)

佐藤美玲 (Mirei Sato)

ライタープロフィール

東京生まれ。子供の時に見たTVドラマ「Roots」に感化され、アメリカの黒人問題に対する興味を深める。日本女子大英文学科アメリカ研究卒業。朝日新聞記者を経て、1999年、大学院留学のため渡米。UCLAアメリカ黒人研究学部卒業・修士号。UMass-Amherst、UC-Berkeleyのアメリカ黒人研究学部・博士課程に在籍。黒人史と文化、メディアと人種の問題を研究。2007年からU.S. FrontLine誌編集記者。大統領選を含め、アメリカを深く広く取材する。

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