カリフォルニア発
Taco Bell
東京・渋谷、4月にオープン
文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)
- 2015年8月20日
「新アメリカン・ブランド」日本へ続々進出~第4弾
アメリカが、日本で再びブームのようだ。特に「食」の世界で、ローカル色の濃い新種のブランドが続々と進出している。ハンバーガー、ドーナツ、ピザなどが新しいスタイルのアメリカン・ブランドとして日本に上陸していく様を、数回にわたって紹介する。
今年の春、東京都心での食の話題をさらったのは「タコベル」だ。ブログやフェイスブックなどのソーシャルネットワーク上で、早くから、「タコベルがオープンするだって」という噂が飛び交っていた。
正式オープンは4月21日。その前後の英字紙の「TOKYO発」の特派員コラムやニュース記事はタコベルの話題ばかり。「一度は日本を去った、あの伝説のファストフードの店が戻ってくる」といった興奮気味のリポートもあった。東京に住むアメリカ人も、かなり盛り上がっていた。
オープン翌日の夕方、私も携帯画面の地図を頼りに行ってみた。渋谷駅前の大きな交差点を渡り、道玄坂を上がって、すぐに右の脇道へ。このあたりには、昔は安くておいしい回転寿司の店があったはず、ラブホテル街も近いのでは、などと思いながら進むと、あった。
看板のロゴは、アメリカでおなじみのタコベルとまったく同じだが、店から受ける印象はずいぶん違う。アメリカでは、ガソリンスタンド併設のドライブスルーの安い店、というのが大方のタコベルのイメージだと思うが、東京では、茶色の木の板が前面に出ていて、ログハウス風でさえある。さすが日本、なんでも「おしゃれ」に変えてしまう。
前日は徹夜組も出たそうで、閉店前に売り切れ。この日も案の定、私が着いたときには「完売御礼」。傘をさしたスタッフが、店の前で「ごめんなさい、明日朝また来てください」と謝っていた。
オープン初日には約300人が行列をつくり、待ち時間は最長で3時間。タコベルの1日の店舗あたりの売り上げのワールドレコードを達成した、というからスゴイ。
タコベルは、1980年代に一度日本に進出している。タコスとブリトーを売る店として、アメリカンフード好きの間では人気が出たが、業績が上がらず90年代に撤退した。
タコベルによると、20年ぶりに進出を決めた理由は、「今がベストタイミングだと思ったから」だという。「世界的にメキシカンフードがブームになりつつあり、日本でも徐々に人気が高まっている。ソーシャルメディアの普及によって、新しく、ユニークな食べ物の写真がどんどん広まっていく時代で、新しい食の選択肢を提案するのにいい時期だと判断した」。日本でのタコベルのブランド構築や、店舗の立地選び、メニューづくりにも相当の時間を費やしたという。
前述したように、ブランドのイメージの違いは、アメリカのタコベルを知っている身には、一目瞭然だ。
照明はじゃっかん暗め。レジ周辺にはタコベルのカラーの紫色のライトアップが成されている。店内の壁には、カリフォルニアをイメージした絵や写真がいっぱいだ。
アメリカにいるとあまり意識しないので、「なぜ?」と思ってしまったが、実はタコベルは南カリフォルニアが発祥の地。ロサンゼルス近郊のダウニーに1962年に1号店ができた。本社はアーバインにある。
海外戦略として、タコベルの創業地である「カリフォルニア」の空気を強く印象づけ、若さ、明るさ、陽気さ、自由さをアピールしているのだという。これは日本だけでなく、タコベルが世界各国に展開する店でも共通しているそうだ。
本国アメリカでも、タコベルはここ数年、イメージ転換を図ってきた。本物のメキシコ料理には程遠いけれどメキシカン気分が味わえて、安くてボリュームたっぷりで…というのがアメリカの大衆が理解するタコベルだったが、近年は「Live Mas!」というキャッチフレーズで、一度きりの人生を最大限に楽しむライフスタイル、その活力源となる食べ物、というメッセージを打ち出している。スーパーボウルで流れた、老人たちが若者以上に元気に夜通し遊びまくるCMが、その代表だ。
渋谷店でも、「Live Mas!」のキャッチフレーズがたくさん使われていた。
日本進出が話題になった一因は、「ご当地メニュー」にもある。
「シュリンプ&アボカドブリトー」(590円)と、「タコライス」(530円)は、ともに日本限定のメニューだ。前者は、日本人になじみのあるエビという食材に、アボカドソース、わさびマヨネーズ、レタス、サルサを組み合わせた。後者は、メキシカンライスに、ビーフ、チェダーチーズ、サルサ、レタスを盛りつけた。
一番よくでるメニューは、定番のビーフ・タコスのコンボ(790円)。アメリカと同様、肉の種類やスパイシーさの加減を選べる。オーダーを受けてからつくるスタイルと、おかわり自由のドリンクバーも、客に喜ばれているそうだ。ビールも飲める。
オープンから約2カ月後、再び道玄坂の店を訪れてみた。当初の大行列や売り切れ騒ぎは消えて、すっかり渋谷の風景にとけ込んだ感じ。
2020年の東京五輪開催に向けて、これからますます外国人が増えていく日本。それも見込んで、タコベルは2号店のオープンを準備中だ。
TOKYO
Taco Bell
東京都渋谷区道玄坂2-25-14
03-6427-8543
www.tacobell.co.jp
年中無休で、営業時間は10am~11pm。午前中と3〜5pmの時間帯が比較的すいているという。全104席で、1階と地階にわかれている。
タコス、ブリトー、ケサディーヤなどの単品メニューは、300〜600円前後。サイドメニューで、ナチョチップ、メキシカンポテトなどを選び、ドリンクもつけてコンボにすると、700〜800円前後になる。
日本進出にあたり、タコベルは、「牛角」「とりでん」などを運営する「株式会社アスラポート・ダイニング」(東京都港区)とフランチャイズ契約を結んだ。
USA
Taco Bell
ww.tacobell.com
創業1962年。全米に6000店舗以上を展開する。アメリカ国外では、カナダやイギリス、韓国、シンガポールなど、約25カ国に約250店舗がある。親会社は、ケンタッキーフライドチキンやピザハットを傘下におさめる「YUM! Brands, Inc.」だ。
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