急激な再開発で、建設ブームに沸いている、ロサンゼルスのダウンタウン。少々ほこりっぽく混雑したその中心部から、リトル東京やチャイナタウン、倉庫街を抜けて、しばらく車で走ったところに、「サンアントニオ・ワイナリー」はある。

サンアントニオ・ワイナリーの入り口。建物すべてがロサンゼルスの歴史的建造物に認定されている
Courtesy of San Antonio Winery
ロサンゼルスで最も歴史が古く、最も規模が大きいワイナリーだ。長く暮らしてかなりロサンゼルスに通じているつもりでも、「なぜこんなところにワイナリーが?」と思っていた。しかし、歴史を聞くと、納得がいく。
カリフォルニアワインといえば、今でこそ、ナパやソノマ、北カリフォルニアを連想するけれど、実はロサンゼルスがその「発祥の地」だ。1833年に、フランス人のジャン・ルイ・ヴィーニュが、初めてヨーロッパのブドウをボルドーから持ち込み、ワインをつくったのがロサンゼルスだった。

来年で創設100周年を迎えるサンアントニオ・ワイナリー
Photo © Mirei Sato
ロサンゼルス・リバー周辺にブドウ畑が並び、ダウンタウンからハイウエー10号に沿ってランチョ・クッカモンガのあたりまで、ワイナリーが連なっていたという。
現在の光景からは想像しづらいが、その証拠に、ダウンタウンには今も、ヴィーニュの名がついたストリートが残っている。

ワイナリーには創業者一家の写真などが飾られている
Photo © Mirei Sato
サンアントニオ・ワイナリーも、そのうちの一つだった。創設者のサント・カンビアニカ氏は、1912年にイタリアから移民して、鉄道建設現場で働いたが、1917年にワイナリーをオープン。当時このあたりは「リトル・イタリー」で、同じような境遇の移民がたくさんいたそうだ。
1920年に禁酒法が本格化して、ほかのワイナリーはみな廃業。その中で、サンアントニオだけが生き延びた。理由は、教会の聖餐で使うワインをつくっていたから。(賢い!)

ワイナリーが存続できた秘密がコレ。今でも教会の聖餐用にワインをつくっているという
Photo © Mirei Sato
禁酒法時代が終わると、ワイン産業は北カリフォルニアへ移った。ロサンゼルスも農地から近代化した街に変わったが、サンアントニオは唯一残った。同じ場所、同じ建物、同じ家族経営で、今も続いている。来年は創立100周年だ。

1日で約6万本のボトル詰めが行われている
Photo © Mirei Sato
今は、モントレー、パソロブルズ、ナパバレーにある自社のブドウ畑で栽培から発酵までを行い、ロサンゼルスでボトル詰めする。その量は1日6万本にものぼる。
テイスティングルームとギフトショップには、国産と輸入品と合わせて数百種類のワインが並んでいる。一番有名なのは「ステラ・ローザ」だが、さまざまなワインを手頃な価格で試せるのが嬉しい。

2代目オーナーで、93歳の今も現役バリバリのマダレーナさんの名前がついたワイン
Photo © Mirei Sato
海外からの観光客もよく訪れる。何よりも立地がいい。遠くナパまで行かなくてもカリフォルニアワインがひととおり味わえる。平日ならテイスティングは3杯まで無料。ワインセラーの見学ツアーもあり、100年以上たつオークの樽に触れたり、創業者一家の歴史を学んだりできる。

100年以上たつ古いスロベニアン・オークのワイン樽。ツアーで見せてくれる
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地元ロサンゼルス市民の間では、穴場ともいえる併設のレストランが人気だ。ヨーロッパの村にまぎれ込んだかのような雰囲気に加えて、ボリュームたっぷり、家庭的で美味しい料理が食べられる。

ボリュームたっぷり、チョイスも豊富なランチ
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ヨーロッパの村のような雰囲気のレストラン
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Plaza San Antonio, 737 Lamar Street, Los Angeles, CA 90031
323-223-1401
www.SanAntonioWinery.com
テイスティングは、平日は3種類まで無料。週末は4種類で5ドル。

併設のギフトショップ
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テイスティングでは、カリフォルニアワインがひととおり味わえる
Photo © Mirei Sato
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