物流を制すものはビジネスを制すか?第6回

アマゾンが米国内の配送網強化加速

 米小売最大手―アマゾンが米国国内の配送網強化を一段と加速させている。
大都市圏での同日配達や翌日配達に続いて、アマゾンが2015年に打ち出した地域配送戦略の柱ともいうべきアマゾンフレックスの適用地域を拡大し、配送の迅速化、効率化に拍車をかけている。

 アマゾンフレックスとはアマゾンの主要集荷センター周辺に住む車所有者がアマゾンと業務委託契約を直接結ぶことで業務量(配達量)に応じてその報酬(自給18ドルから25ドル)を受け取るシステムのことだ。
米国ではウーバーやリフトという一般の車所有者がタクシーに代わって人を載せて目的地まではこぶサービスがその利便性と経済性により多くの支持をうけ定着した感がある。アマゾンフレックスはその貨物配送版ともいえる。

 アマゾンの貨物の多くの場合、今でも全米一、二の大手物流配送企業であるUPS(United Parcel Service)やフェデックスの2社によって個別に集荷配送されている。

 元来物流会社を標榜するアマゾンは昨年の海上輸送に於けるNVOCC(船舶を所有しない複合一貫輸送会社)のライセンス取得により実質的に小売を兼ねた物流企業としての態を鮮明にし、米国内にも自社のトラックを整え、物流拠点を増やすことで配送網を拡大してきた。
 とわいえ、各地の物流集荷センターから地域に点在する個別の顧客宅や事務所に配達するのはUPSの持つ10万台を越すデリバリー用車両であり、フェデックスの15万台をこすそれに頼らざるを得なかった。

 だが、ここにきて、アマゾンフレックスを強化し全米に委託契約ドライバーとその所有車を確保することで国内を毛細血管のように網羅することが可能となる。
シアトルから始まり、すこしずつその適用範囲を広げながら、現在(3月21日)全米の主要30都市に拡大され、多くのドライバーがアマゾンの委託契約者として自分の車と時間を有効に活用して配達を行っている。(配達料無料の商品をアマゾンに発注した当事者がアマゾンフレックスのドライバーとして自宅に運ぶことで報酬を得ることもありうるかもしれない。)

 ウーバーがタクシードライバーから猛反発を受けたと同様、アマゾンフレックスもUPSやフェデックスなどの大手に限らず、各都市の中小のトラック会社を廃業や売り上げ減に追い込むとの危惧を抱く声も多い。

 一方、自らウーバーにも登録し、副業としてウーバーから報酬を受け取るタクシードライバーもいることで賛否両論もある。
アマゾンフレックスもこれから反発や様々な妨害も予想されるなか、新たな配送のビジネスモデルとして成功するのか真価がいよいよ問われる。

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赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

ライタープロフィール

外航海運会社で20年以上にわたり北米定期航路の集荷営業に従事。北米駐在を経て2013年9月、北米唯一の海運、港湾、物流情報発信会社SHIPFANを設立。
「日本海事新聞」紙上に「ロサンゼルス便り」、 ロサンゼルスのフリーペーパーに「物流時報」を定期掲載するほか、物流コンサルティング、物流セミナー、港湾ツアーの開催、輸出入のマッチング業務を手がけている。ロサンゼルス港に「コンテナ物流研究所」を開設。

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