海外教育Navi 第85回
〜海外から海外への横移動にともなう子育ての留意点〜〈前編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.海外から、環境の異なる海外に横移動します。子育てにおける留意点を教えてください。

家庭の方針を決める

「海外赴任・お子さんの帯同」を考えるうえで最も大切なことは、今後の家族帯同に対しての「家庭の方針」をきちんと決め、家族間で共有しておくことです。

横移動においては、その家庭の方針を貫くのか、状況等の変化で修正を加える必要があるのかを判断することとなります。

家庭の方針を決める際にポイントになるのは「TPO」です。
TPOとは、皆様ご存じのように次の3つの要素のことです。

・T=time(時間)=駐在期間、お子さんの年齢・学齢など。
・P=place(場所)=治安や言語、学校の有無等、どのような場所なのか。
・O=occasion(場合・状況)/opportunity(機会)=選択可能な学校を含め、お子さんの性格・資質・能力(得手不得手)、趣味・志向などに合う環境か。

家庭の方針の実例

「家庭の方針」とは、どのように立てればよいのか、実例を見てみましょう。「T」を軸に、子どもの成長段階や学校選択を中心に考えていくと立てやすいかもしれません。

<A家の方針>
①海外では子どもを現地校に通わせ、中学校を卒業するまで家族でいっしょに過ごす。
②高校段階以降は、本人の意志を尊重して親もとを離れることも視野に入れる。
③海外赴任には、基本的に父親は母親を帯同する。

<B家の方針>
①海外では基本的に子どもを日本人学校に通学させ、上の子の中学校段階まで家族でいっしょに過ごす。
②上の子の高校入学を機に家族は帰国し、父親の単身赴任とする。

<C家の方針>
①海外では、上の子が現地の高校を卒業するまで家族でいっしょに過ごす。
②大学は本人だけが帰国して日本の大学に進学する。
③ほかの家族はできるだけいっしょに過ごす。

<D家の方針>
①どのような赴任になっても、基本的に家族がいっしょに過ごすことを前提に学校を選ぶ。

横移動でのTPO

横移動となると最低2つ、なかには5つの国や地域など、期間の長い人では20年以上の海外赴任となるケースも珍しくありません。もちろん、「P(場所)」の変化に関することも考慮しなければなりませんが、より長期となる海外生活となりますので、むしろ「T(時間)」をより考慮する必要があります。

なかでも、成長と共に発生してくる、入園、入学、退学、編入学、卒業など「教育」・「学校の選択」に関連することがいちばん重要な要素となってきます。

横移動! 子どもへの接し方

赴任者本人は次のことに気をつけるとよいでしょう。

・自分より家族の方がたいへんな思いをすることになるのだという意識を表に出すこと。
・「家族の帯同を強制する」ような無理やり説得する高圧的な態度は避け、どの年齢の子どもにも事情がわかるように、相手が納得するまできちんと説明する。
・「家族だけ日本に帰国する」という選択肢もあるなど、さまざまな可能性を紹介しながら、じっくり話し合う。
・移動先の現地情報・学校情報等の収集に努め、的確に分析・判断して伝える。
・いま住んでいる国のよさ、転勤先の国のよさを伝え続ける。
・現地校やインターナショナルスクールを選択する場合、日本語の学習がおろそかになりがちだが、母国語である日本語のレベルを高めないと、外国語の習得にも限界があることを伝える。
・日本の素晴しいところを、ことあるごとに繰り返し説く。

子どもたちの声

親の赴任に伴って海外で暮らしていた当時のことを、大人になった子どもたちにふり返ってもらいました。

「『子どもは親の転勤についていくのがあたりまえなのだから、今回も問答無用でついてこい!』という態度が腑に落ちなかった。もちろんいまでは、転勤は会社からの命令だから仕方がないと思うことができるが、子どもは親の状況を理解してあげられない。しかも、また日本ではない新しい国となるとさらに子どものむしゃくしゃが高まるので、『転勤についてきてくれてありがとう』くらいの感じで話をしてあげた方がいいと思う」

「アルゼンチンからメキシコに行った当初、予想以上にアルゼンチンなまりのスペイン語をバカにされていやだった思い出がある。もし転勤先が同じ言語の国でも、その国特有のいい方とか、これはいままで住んでいたところの方言だから直した方がよいとか、そういうことを調べて教えてあげるといいと思う」

「開発途上国に連れていかれたとき、親がそこでの暮らしを面白がっていたのが、こちらの気持ちをポジティブにしてくれた。停電になったらキャンドルを立ててキャンプのような食事を楽しんだり、『すぐに行く』と言った修理が一週間後になったときに「(遅れが)一カ月じゃなくてよかった」と笑っていたり。そういう親の姿勢のおかげで、私はその国が好きになった」

→「第86回 〜海外から海外への横移動にともなう子育ての留意点〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員

海外子女教育振興財団 教育相談員
後藤 彰夫

千葉県と東京都で教員、ワルシャワ日本人学校教諭を経て、東京都の公立学校で教頭・副校長・校長を歴任。2013年から6年ほど本田技研工業株式会社で教育相談室長を務め、2019年より海外子女教育振興財団の教育相談員。東京都海外子女教育研究会、全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会事務局長も務める。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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