アメリカの春の訪れを感じる場所

文&写真/石井光(Text and photo by Akira Ishii)

日本では、2月は梅、3月は桃、そして4月は桜で春の訪れを感じる人が多いと思う。国土が日本の約25倍もあるアメリカでは、州や地域によって、それとは違う花で新しい季節の訪れを感じるようだ。今回は、アメリカ各地で開花間近のアイコニックな花々を紹介したい。

ワシントンDCと日本をつなぐ桜並木

日本との友好の証がいつまでも息づいている

1912年、日米の友好の証として3000本の桜の木が米国に届き、3月27日にタフト大統領夫人と珍田駐米特命全権大使夫人がポトマック河畔に植樹をされて始まった、ワシントンD.C.の桜並木。川沿いに続くソメイヨシノの回廊は、日本らしさがアメリカの首都にあるというギャップも相まって、美しくも不思議な空間が広がり、今や春のDC観光の目玉となっている。2019年のNational Cherry Blossom Festivalは、3月20日〜4月14日に行われる。開花予想をチェックしながら、満開の時期を狙って予定を組みたい。

州花ブルーボネットと西洋ツツジが美しいテキサス

州花のブルーボネット

アラスカに次ぎ、アメリカで2番目に広いテキサス州。ダラスやヒューストンのようなビジネスが盛んな都市もあれば、サンアントニオやオースチンなどの観光都市もあるが、テキサスといえば広大な土地と豊富な自然を楽しみたい。

テキサスの州花といえば、3月の終わり頃から4月にかけて見られるブルーボネットという野に咲く可憐な花だ。住宅街の公園や道路脇、ハイウェイの中央分離帯や路側帯の斜面など、いたる所で素朴な美しさと力強さで人目を惹く。ブルーボネットの群生で有名なEnnis、Brenham, Chapel Hillといった小さな街道町の花畑は、一見の価値がある。1年のうち8カ月くらいが夏といえるほどほかの季節が短いヒューストン辺りでは、この花を見るともうすぐ夏がやってくるのだと実感する。

Azalea Trailで見られるみごとなツツジ

ヒューストンから車で2時間ほど北に行くと、Nacogdoches(ナカドーチェス)という中都市がある。テキサス史に欠かせない重要人物サム・ヒューストンが住んでいた、Stephen Austin State Universityがある人口3万人ほどの歴史と大学の町だ。とりたてて観光地でもないこの町も、3月中旬から4月中旬は花で注目を浴びる。約7000種の西洋ツツジが25マイルにも及び咲き乱れる、Azalea Trailがあるからだ。テキサスは広大な土地にさまざまな地形や天候が存在するので、独特でダイナミックな植生を楽しめるのかもしれない。

アイスプラントとポピー広がるカリフォルニア

海岸沿いに咲くアイスプラント

日本の国土とほぼ同規模の面積があり、南北に長いという共通点のあるカリフォルニア州。カリフォルニアも、北から南まで多種多様な花が楽しめる。サンフランシスコから南に車で1時間半ほどの所にある、モントレーやカーメル。この辺りは年中温暖な気候ではあるものの、特に4〜5月になると夏の訪れを告げる花がある。アイスプラントと呼ばれる淡いピンクの花だ。パシフィック・グローブという高級住宅街の海沿いのトレイルには、アイスプラントがじゅうたんのように咲き広がる。造花のようにも見えるが、野生の力強さも感じさせる姿は写真では伝わらないかもしれないので、ぜひ間近で見たい。

オレンジがきれいなカリフォルニアポピー

4月の終わり頃には、カリフォルニアの州花、カリフォルニアポピーという濃い黄色の花もいたる所で見られる。ロサンゼルス郊外のランカスターという町では、毎年ポピーフェスティバルも開催される。

ワイルドに咲き誇るワシントン州のチューリップ

色とりどりのチューリップ

春の花といえば、チューリップも忘れてはいけない。チューリップの名所といえば、意外にもワシントン州。シアトルから車で北へ1時間半、バンクーバーからも南へ1時間半ほどのスカジットバレーでは、何万本ものチューリップがお行儀よく、かつワイルドに並んで咲いている。

童謡のごとく、どの花を見てもきれいだ。赤・白・黄色だけではなく、ピンクや紫など歌には登場しない珍しい色のチューリップが何百列も並んでいるさまは圧巻だ。スカジットバレー・チューリップフェスティバルは、4月1〜30日に行われる。いくつものチューリップ農園が人々を歓迎してくれ、家族連れもカップルも楽しめる。

絶景が広がるカスケードループ

秋から春まで雨の多いワシントン州西部でチューリップが咲き誇った後には、美しい夏がやってくる。シアトルから車で行くことのできる3つの国立公園のうち、マウント・レーニア、オリンピックという2つの国立公園は有名だが、スカジットバレーから車で1時間ほどのノース・カスケード国立公園はあまり知られていないようだ。夏になると、この国立公園やスカジットバレーだけでなく、ドイツ村のレブンワース、美しい湖やリンゴで有名なシェランなどを通るカスケードループのドライブで、自然の織りなす絶景が堪能できる。

今回紹介した以外にも、全米各地で色とりどりの花が楽しめることだろう。日本で桜を見た時と同じような美しさや儚さを感じるのか、アメリカの花ならではの力強さや色合いを感じるのか。この春は旅の目的の一つとして、好きな花を探してみてはどうだろうか。

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石井光 (Ishii Akira)

石井光 (Ishii Akira)

ライタープロフィール

旅行会社勤務。広島出身。在米12年。ジョージア、ウィスコンシン、ニュージャージー、テキサス、カリフォルニア、ワシントン州を経て、現在2度目のニュージャージー生活。その間アメリカの都会から地方まで40州200都市以上を訪問。あるときは真正面から、またあるときは裏側から、アメリカ各地をご紹介します。

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