トーランス クラフトビール最前線 ①
Smog City Brewing Co.
文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)
- 2015年10月5日
「トヨタ、ホンダ、日産の米国拠点。日系駐在員の大きなコミュニティーがあり、日本食レストランのメッカ」。ロサンゼルス近郊の街トーランス(Torrance)は、在米日本人の間ではそんなイメージで知られてきた。しかし最近のトーランスは、「クラフトビールの流行発信地」という、ずいぶん違った顔をもつ。南カリフォルニアはもとより全米・海外からもビール好きが訪れる、トーランスのマイクロ・ブリューワリーを、数回にわたって紹介する。
本当に美味しいものを食べたあとは、翌日も、その翌日も、記憶が体に残っている。鼻や舌ではなくて、胃袋が、香りと味を覚えているものだ。
「スモッグ・シティー」(Smog City)が誇る、「コーヒー・ポーター」(Coffee Porter)は、そんなビールだ。
アイスコーヒーでもあり、ビールでもあり、そのどちらよりも美味しい。暑さしのぎに、エネルギー補給に。カフェインとアルコールが一度にとれる、最高のドリンクかもしれない。
コーヒー豆は、スタジオ・シティーの「グラウンドワークス」(Groundworks)から仕入れている。コーヒーもビールも、ともに最近「こだわり派」が増えているから、理想の組み合わせかもしれない。
2012年にデンバーで開かれたビールのフェスティバルで、このコーヒー・ポーターが金賞を獲得。当時まだビジネスを始めたばかりだったスモッグ・シティーは、これで一躍、クラフトビール界のスターになった。
経営するのは、ジョナサン&ローリー・ポーター夫妻。2013年5月にトーランスに移って開業し、タップルームをオープンした。
ウェアハウスの建物の構造をうまく利用。両サイドのシャッターを開けると、タップルーム全体にビーチタウンらしい涼しい風が吹き抜ける。太陽の真下で飲むビールは最高だが、倉庫の中で夏風を感じて飲むビールも悪くない。
「よくビールの成分は99%が水だと言うけれど、私はそのうち60%は『コミュニティー』だと思っている」と、ローリーさんは言う。「クラフトビールは、バックグラウンドが異なる人たちを結びつける共通項なの」
タップルームは、バーやパブとは違う。クラフトビールを味わうのが目的だから、飲んだくれて騒ぐ人もいないし、集まった見知らぬ人同士、自然と会話がはずむ。
「トーランスのクラフトビールは、サンディエゴやポートランド、サンフランシスコのような先進地に比べると、まだ若い。コミュニティーがひとつになって地元のブリュワリーを盛り上げていこうという協力的な雰囲気があるのもいい」
カウンターでビールをついでくれたオペレーション・マネジャーのライアンさんは、「気づくと顔見知りのお客さんばっかりで、まるで『Cheers』(同名のバーで働く人と常連客を描いたTVドラマ)じゃないか、って思っちゃうよ」と笑う。
5月にやった「創業祭」のVIPイベントに800人も集まり、ローリーさんは「親しい人、知っている顔ばかりで、自分たちの結婚式なのかと錯覚してしまったほど」と話していた。
周辺に日系企業が多いため、日本人の客もたくさん来るそうだ。
Smog City Brewing Co.
1901 Del Amo Blvd., Ste B
Torrance, CA
310-980-8202
smogcitybrewing.com
タップルームの営業時間は、水〜金4〜9pm、土12〜8pm、日12〜6pm。
コーヒー・ポーターを含む定番の4種類のビールと、季節ごとに変わるビール、タップルームでしか飲めないスモールバッチのビールなどがある。いつ行っても何かしら新しい味に出会える。
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