トーランス クラフトビール最前線 ②
Absolution Brewing Company

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

「トヨタ、ホンダ、日産の米国拠点。日系駐在員の大きなコミュニティーがあり、日本食レストランのメッカ」。ロサンゼルス近郊の街トーランス(Torrance)は、在米日本人の間ではそんなイメージで知られてきた。しかし最近のトーランスは、「クラフトビールの流行発信地」という、ずいぶん違った顔をもつ。南カリフォルニアはもとより全米・海外からもビール好きが訪れる、トーランスのマイクロ・ブリューワリーを、数回にわたって紹介する。

Photo © Mirei Sato

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 トーランス市役所の北東に、ウェアハウスを兼ねたオフィススペースが並ぶ一画がある。ちょっとハイエンドなビジネスパーク。こんなところにブリューワリーが隠れているのかな、と思いながら扉をあけると、「アブソリューション」(Absolution)の広々としたタップルームがあった。

 アブソリューションの特徴は、「旧世界と新世界の掛け合わせ」だ。18〜19世紀にイギリスで生まれたエールづくりのテクニックに、21世紀のアメリカのスタイルを加えた。炭酸をおさえているので、ホットドッグやハンバーガーから寿司まで、料理と組み合わせやすい。

 天然の素材だけを使って、質の高いビールを少量生産することにこだわる。チーフ・テイスティング・オフィサーで共同経営者のナイジェル・ヒースさんは、これを「Farm to Glass」(農場からグラスへ)と呼ぶ。食の世界で当たり前になった「Farm to Table」(農場から食卓へ)にひっかけたフレーズだ。

 タップで常に20種類ほどのビールが楽しめる。人気があるのは、「ホーリー・カウ」(Holy Cow)。ロサンゼルスのビール事情を取り上げたフォーチュン誌の記事で紹介され、注文する人が増えた。

Photo © Mirei Sato

Photo © Mirei Sato

 トーランスにあるマイクロ・ブリューワリーの中では、ここが一番大きなタップルームをもっている。トヨタやホンダをはじめとする地元企業が、この場所を借りてイベントやミーティングをするそうだ。商談しつつ、つくりたての美味しいビールが飲めるのだから言うことなし、だろう。

 ビジネスパークは通常、夜や週末はひっそりとするものだが、アブソリューションにはいつも人が集まり、フードトラックが来る夜は特ににぎわう。

 ヒースさんは、「今のクラフトビール人気は、20年前にワインに起きた状況によく似ていると思う」と言う。「ワインといえば赤か白かしか知らなかったアメリカ人が、カベルネ、ピノ、メリタージュなど違いを理解し、たしなむようになった。クラフトビールも、イーストがどう、ホップがどう、と語れるまでに市場が洗練されてきている」

Photo Courtesy of Absolution Brewing Company

Photo Courtesy of Absolution Brewing Company

 アブソリューションがオープンしたのは2013年秋。サンディエゴ、サンフランシスコ、ポートランド、シアトルと「クラフトビールの聖地」に囲まれながらも、ロサンゼルスはまだ大量生産のビールが主流を占めていた。

 混みすぎて競争が激しい場所を避けてロサンゼルスを選び、その中でもトーランスを拠点にしたのは、市長をはじめとする地元の全面的な協力体制があったからだ、とヒースさんは言う。

 クラフトビールを通じて街を活気づけたい、サンディエゴのようにビールで人を世界から呼びこめる街にしたい…。それが、ヒースさんをはじめ、トーランスでクラフトビールづくりに関わる人たちの共通した思いだ。

Photo Courtesy of Absolution Brewing Company

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Photo © Mirei Sato

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Absolution Brewing Company
2878 Columbia Street
Torrance, CA
310-490-4860
absolutionbrewingcompany.com

 タップルームの営業時間は、水木3〜9pm、金土11am〜10pm、日12〜6pm。ガイドつきツアーもある。
種類が豊富なビールは、「Fallen Archangel」「Cardinal Sin」「Angels Demise」「Purgatory」「Penance」「Convert」など、ネーミングもユニーク。10月は季節限定の「Pumpkin Porter」を出す。ルートビアやクリームソーダもある。
 タップルームで飲めるサンプラーは、4オンスを6種類選べて、10ドル。飲んで気に入ったビールは、瓶や缶に詰めて買って持ち帰れる。場所柄、日本人もたくさん飲みに来て、女性客が特に多いという。
 カリフォルニア州内の量販店などでも買える。

Photo © Mirei Sato

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佐藤美玲 (Mirei Sato)

佐藤美玲 (Mirei Sato)

ライタープロフィール

東京生まれ。子供の時に見たTVドラマ「Roots」に感化され、アメリカの黒人問題に対する興味を深める。日本女子大英文学科アメリカ研究卒業。朝日新聞記者を経て、1999年、大学院留学のため渡米。UCLAアメリカ黒人研究学部卒業・修士号。UMass-Amherst、UC-Berkeleyのアメリカ黒人研究学部・博士課程に在籍。黒人史と文化、メディアと人種の問題を研究。2007年からU.S. FrontLine誌編集記者。大統領選を含め、アメリカを深く広く取材する。

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