トーランス クラフトビール最前線 ③
The Dude’s Brewing Company

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

「トヨタ、ホンダ、日産の米国拠点。日系駐在員の大きなコミュニティーがあり、日本食レストランのメッカ」。ロサンゼルス近郊の街トーランス(Torrance)は、在米日本人の間ではそんなイメージで知られてきた。しかし最近のトーランスは、「クラフトビールの流行発信地」という、ずいぶん違った顔をもつ。南カリフォルニアはもとより全米・海外からもビール好きが訪れる、トーランスのマイクロ・ブリューワリーを、数回にわたって紹介する。

カリフォルニアののんびりしたサーファーのライフスタイルを思わせるデザイン Photo © Mirei Sato

カリフォルニアののんびりしたサーファーのライフスタイルを思わせるデザイン
Photo © Mirei Sato

Courtesy of The Dude's Brewing Company

Courtesy of The Dude’s Brewing Company

 あまり知られていないが、トーランスはれっきとした「ビーチタウン」だ。海岸線を北にちょっとあがると、レドンドビーチ、ハーモサビーチ、マンハッタンビーチという有名どころ、個性的なコミュニティーがあるために、地元でもちょっと影は薄いのだけれど…。

 2014年9月にトーランスにオープンしたマイクロ・ブリューワリーの「デュード」(Dude’s)は、トーランスが発揮しきれていない「ビーチタウンらしさ」の魅力、引力を前面に出している。

 缶やロゴのデザインは、レイドバックしたサーファーのライフスタイルを思わせる。

 名前が「デュード」(野郎ども、の意)というからには、オトコくさいブリューワリーかと想像していたが、実際の醸造施設は清潔で、洗練されたテクノロジーを駆使。そのギャップが、おもしろい。

スコット・ショーさん(右)と、トビー・ヒュムスさん Photo © Mirei Sato

スコット・ショーさん(右)と、トビー・ヒュムスさん
Photo © Mirei Sato

 案内してくれたスコット・ショーさんとトビー・ヒュムスさんいわく、「自分自身についてはそんなにまじめに考えないけれど、ビールづくりには超まじめに取り組んでいるよ」。

 15のタンクと60のバレルが整然と並び、すべてのプロセスが入念な管理のもと、自動で流れていく。無駄を省き、汚染を防ぎ、味に一定感をもたせるためだ。

 ブリューワリーによっては、ビールをつくるタンクごとに味が違う、それがクラフトビールの魅力、と言い切るところもあるが、デュードの場合、味にも質にもバラつきがないよう心がけているそうだ。

 定番は、最初につくったビールで今もベストセラーの「ダブル・トランク」(Double Trunk)。新しい味を求めて、つねに数種類の「実験」も行われている。ピーカンナッツやチョコレートなどを使うこともある。

 変わりダネでは、「ブラッド・オレンジ・アンバー・エール」(Blood Orange Amber Ale)がある。アメリカのスーパーで売っているオレンジ・クリームのキャンディーのような味なのだが、甘過ぎず、意外にハマりそうなビールに仕上がっている。

 クラフトビールの世界でも、ソーシャル・ネットワーク(SNS)の力は偉大だ。デュードはオープン以降、「グルーポン」でお得な試飲チケットを売ったが、ものすごい反響があったという。21〜31歳の客が多い。ソーシャル・ネットワークで口コミの輪を広げ、近隣のブリューワリーと提携したイベントも盛んに行われている。

Courtesy of The Dude's Brewing Company

Courtesy of The Dude’s Brewing Company


 

すべて自動。洗練されたシステムでビールをつくっている Photo © Mirei Sato

すべて自動。洗練されたシステムでビールをつくっている
Photo © Mirei Sato

The Dude’s Brewing Company
1840 W 208th Street, Torrance, CA
424-271-2915
www.thedudesbrew.com

 テイスティングルームの営業時間は、木金3〜10pm、土日12〜10pm。
 ニューポートビーチと、サウザンドオークスにも、今年の秋、テイスティングルームをオープンする予定。

ボウリングのピンに見立てた板で出てくるサンプラー Photo © Mirei Sato

ボウリングのピンに見立てた板で出てくるサンプラー
Photo © Mirei Sato

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佐藤美玲 (Mirei Sato)

佐藤美玲 (Mirei Sato)

ライタープロフィール

東京生まれ。子供の時に見たTVドラマ「Roots」に感化され、アメリカの黒人問題に対する興味を深める。日本女子大英文学科アメリカ研究卒業。朝日新聞記者を経て、1999年、大学院留学のため渡米。UCLAアメリカ黒人研究学部卒業・修士号。UMass-Amherst、UC-Berkeleyのアメリカ黒人研究学部・博士課程に在籍。黒人史と文化、メディアと人種の問題を研究。2007年からU.S. FrontLine誌編集記者。大統領選を含め、アメリカを深く広く取材する。

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