8月公開なのに、5月から試写をまわしていた本作。筆者は6月と8月に帰省予定が入っていたので、原稿の〆切のためだけに観に行くことに決めた作品で、まったく期待していなかった。しかし、途中で、なぜ早くからマスコミ試写を開催していたか分かった。ストーリーのアイデア自体はそれほど突出したものはないのだが、リアルなキャラクター描写と絶妙な台詞、それを操る俳優の名演に映像美が加わり、観る者を魅了していくのだ。
実家の農場が銀行に差し押さえられたタナーとトビーの兄弟は、銀行強盗をした金で抵当権を取り戻そうとする。足が着かないよう慎重にコトを進める弟トビーとは対照的に、服役経験のある兄タナーは思いつきで行動し、予定を狂わせる。元妻との間の息子2人に農場を残すため、兄の行動に目をつむり、忍耐しながら強盗を重ね、計画を進めるトビー。そんな彼らの強盗事件にテキサスレンジャーのマーカスが目をつける。相棒アルベルトを連れて捜査に乗り出すのだが、なかなかうまくいかない。そんなある日、マーカスの予想が的中するのだが……。
犯罪者として追われる側の兄弟と彼らを追う側の捜査官の両方の相棒ぶりが見事なコントラストで描かれる。特に、ことある毎にアルベルトのアメリカ先住民の文化を揶揄するマーカスと、それをうまく流すアルベルトのやり取りは逸品だ。篤い友情の印としておちょくっているのをお互いが理解しているのが滲み出ている。マーカス役のジェフ・ブリッジスとアルベルト役のギル・バーミンガムの息の合った名演に心を動かされない人はいないだろう。そして、彼らの名演があるからこそ、クライマックスでの悲劇が強烈に心に突き刺さる。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします