ナチス・ドイツ内でもホロコーストを特に推進したハイドリヒ親衛隊大将のチェコでの暗殺計画を描いた本作は、レジスタンスとしての使命を全うしようとする若き兵士たちと、彼らを支える人々の関係を巧みに織り交ぜた反戦ドラマ。上述したように、映画の観客の半分は女性を意識したのか、実話を忠実に再現したのかは分からないが、本作でも勇敢な女性の活躍が重要なキーポイントになっているのが嬉しい。戦争・暗殺と言えば、愛国心旺盛な男性主導というイメージだが、平和を願う心は女性も同じだ。
暗殺計画を着々と進める冷静なチェコ兵士ヨゼフには、数々の作品で名演を残してきたキリアン・マーフィー、彼と行動を共にする戦闘経験の少ない兵士ヤンには「Fifty Shades of Grey」で注目されたジェイミー・ドーナンが扮し、生還の見込みのない任務を全うしようと励む青年達をリアルに表現する。特に、計画に荷担する女性たちと築く関係のコントラストの演技は印象的だった。お互いに惹かれながらも死ぬ運命にあるがゆえに深い関係にならないよう葛藤するヨゼフと、先がないと分かっているからこそなのか、ロマンスに夢中になり結婚の約束までしてしまうヤン。戦争は、家族や友人を失う悲劇だけでなく、惹かれ合う者同士が一緒になれないという不条理も引き起こすことを思い出させてくれた。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします