海外教育Navi 第43回
〜日本の社会科と理科の授業に追いつく方法〜〈前編〉

記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。


Q.海外では日本の社会と理科はまったく勉強しませんでした。手っ取り早く追いつく方法を教えてください。

小学校の社会科・理科

小学校3、4年の社会科の教科書の目次を見てみましょう。

『新しい社会』(東京書籍)
3、4年生

<上>
①わたしのまちみんなのまち
②はたらく人とわたしたちのくらし
③かわってきた人々のくらし

<下>
④くらしを守る
⑤住みよいくらしをつくる
⑥きょう土のはってんにつくす
⑦私たちの県

教科書には、どのようにして疑問を持ち、調べ、まとめていくかというヒントが書かれています。記憶しなければならない知識を並べているのではありません。

子どもたちは、自分たちが住んでいる町で、観察したり、資料を集めたり、話を聞いたりしながら、自分たちの生活が多くの人々の協力によって成り立っていることや、いまの生活が昔からの人々の営みのうえにあることを学んでいきます。そして、わかったことをまとめたり、発表したりする活動にも取り組みます。

この年齢の子どもたちに必要なのは、自分の町で働いている人、目の前で起きていること、触って確かめられるものなど、具体的なことがらをしっかり捉えて、それをもとに考える訓練をすることです。その過程で、調査をしたり、話し合ったり、プレゼンテーションをしたりするなど学ぶための技術を身につけていきます。

そのため手の届かない場所の話を聞いてもだめなのです。ですから、日本国内に住んでいても、社会科で扱う内容は住んでいる市区町村、あるいは都道府県によって異なっているのです。多くの場合、子どもたちは教科書のほかに市や県で作成した副読本を持って学んでいます。

海外の例を見てみましょう。これは、アメリカ・テキサス州ダラス近郊プレーノ市の3、4年生が学ぶ社会科の内容の一部です。

Social Studiesのユニット

<3年生>
地図の見方
プレーノの歴史、家族の仕事
有名なビジネスパーソン
コミュニティーの仕事

<4年生>
テキサスの紹介
昔のテキサス
テキサスの人々 開拓と戦争
20世紀のテキサス
現在のテキサス

自分の町で、自分の身近にあるものを使って学んでいくという点で、日本の社会科ととてもよく似ています。テキサスの子どもたちも、もちろん英語を使ってですが、日本の子どもたちと同じような学びをしているのです。

公教育のカリキュラムは、それぞれの国で長い経験を積み重ねたうえにつくられています。子どもの発達段階にいちばん合った学ばせ方を追究していったところ、国が違っても似たような内容になったということは決して偶然ではありません。

小学校の社会科の目的は、学び方、考え方を身につけていくことなので、知識を記憶することはそれほど大切なことではありません。

理科についても、身近なものから考え方や学び方を学ぶという点では同じです。ですから、日本で社会科や理科を学んでいなくても、海外の学校でしっかり学習に取り組んでいれば、必要な力をつけているはずなのです。「追いつかなければ」と心配する必要はありません。

日本に住むようになれば、日本について学ぶための最適な環境になります。生活のなかで湧いてくる疑問や好奇心に答えてあげることで知識のギャップは少しずつ解決していくでしょう。いままで住んでいた海外と比べて違いや共通点を考えることができるのは、たいへん恵まれたことといえます。
社会科や理科にはもちろん体系的に知識を積み上げていく側面もありますが、それが本格的に始まるのは抽象的な思考ができるようになる中学生になってからです。中学校の先生は、科学としての社会科や理科は「ここから始まる」というつもりで授業を始めます。

→「第44回 〜日本の社会科と理科の授業に追いつく方法〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員
海外子女教育振興財団 教育相談員
佐々 信行

1971〜92年、横浜市立小学校教諭(1974〜77年、ハンブルグ補習授業校教諭)。1992〜2001年、バージニア州グレートフォールズ小学校イマージョンプログラム教諭(同時にワシントン補習授業校教諭)。長女はドイツ生まれ、長男はアメリカで中高を過ごす。2001〜08年、啓明学園初等学校校長。2008〜14年、啓明学園中学校高等学校校長。

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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