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海外教育Navi 第102回
〜海外で乳幼児の母語を育てる〜〈後編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2022年6月30日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育アドバイザー等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
前回のコラムでは、母語の大切さと保持育成のポイントについてお話ししました(前回記事へ)。今回は、その続きをお話しします。
<子ども同士の交流>
ことばは社会のなかで育まれます。お子さんの成長と共に家族の小さな社会から保育園・幼稚園、学校へとさらに社会が広がり、それぞれの集団生活においてことばを増やしていきます。増えるのはたんに語彙だけではありません。そのことばを身につけたときの経験もいっしょに蓄えられ、語彙と経験が合わさることで母語が一段と高まります。
社会が広がれば、悪いことばや乱暴なことばを覚えてくることもあるでしょう。それもまた大事な経験です。頭ごなしに叱ったり否定したりするのではなく、なぜそのことばがよくないのかを丁寧に説明してあげましょう。新たなことばを取捨選択し習得することは、お子さんの成長に必要なプロセスなのです。
しかし今回のテーマのように、自分の周りに日本人が住んでいないような地域に住まわれるとしたら、お子さんが日本語を使う場所や機会は当然限られてきます。少ない日本語環境のなかでお子さんの母語をいかに保持育成するか、そこには家庭での工夫や努力が求められます。
限られた日本語環境のなかで
先に述べた<正しい日本語で>や<絵本の読み聞かせ>は国内外を問わず、各家庭で行えることです。ぜひ実践してください。また、それ以外の母語の保持育成方法としていくつか紹介しましょう。
<家族間の会話>
家庭で交わすことばは母語の教科書です。もし家族旅行などを計画することがあれば、その話し合いの場に小さなお子さんもぜひ交えてください。楽しい雰囲気のなかでの会話は弾みますので、限られた日本語のなかで暮らす子どもたちにとって、多くのことばを学ぶチャンスとなります。子どもに聞かせたくない話は別として、家族間での会話をできるだけ多く持ちましょう。
<オンラインでの会話>
コロナ禍によってZOOMなどによるオンライン授業や会話が一挙に浸透しました。実際に対面して会話ができるに越したことはありません。しかし海外において、いろんな人とのコミュニケーションがはかれるオンライン会話はとても有効です。
日本にいる祖父母等との会話は、親以外の大人の日本語に接するよい機会にもなるはずです。
<日本のテレビ番組の視聴>
NHKの「おかあさんといっしょ」など、日本の幼児向けテレビ番組はとてもよくできています。海外でも一部の地域を除いて衛星放送やケーブルテレビ、インターネットなどで視聴が可能です。お子さんをテレビづけにしてはいけませんが、日本語習得の一つとしてこういったメディアを活用する方法もあります。
<言語の使い分け>
日本人があまり住んでいない地域であれば、お子さんを集団生活に慣れさせるため現地の保育園や幼稚園、インターナショナルスクールの幼稚部に通わせることになるかと思います。お子さんが、そこで現地の言語に慣れ親しみ上達することは自然の流れです。ただしそれと同時に日本語力の低下が懸念されます。
日本語のインプット、アウトプットの機会を失わないように現地の言語と日本語を使い分けできるようにしましょう。家の外では現地語、玄関に入ったら日本語というようなルールをつくることもお勧めです。
終わりに
新型コロナウイルスや母語のことなど、これから海外に赴かれるかたにとって心配なことはいろいろあるでしょう。しかしそこで大事なのはお子さんに不安を感じさせないことです。
海外でご家族が得られるものは、今後の大きな財産となります。ぜひ前向きに明るい気持ちで渡航なさってください。
海外子女教育振興財団 教育アドバイザー
菅原光章
1979年から奈良県の公立小学校に勤務する。1983年より3年間、台北日本人学校へ赴任。帰国後は奈良市立小学校に勤務、教頭・校長を歴任する。また奈良県国際理解教育研究会の会長を務めた。退職後、奈良県教育振興会理事ならびに同志社国際学院初等部の教育サポーターを務める。2016年4月より海外子女教育振興財団の教育相談員(現・教育アドバイザー)。
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