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第5回 その予算って根拠あるの? 「売り上げ目標の決め方を教えてください!」
- 2025年5月7日
居酒屋「Fuji」にて——
雨上がりの夜、タジマ君とミゾグチ先生が、今日もまたおなじみのカウンター席に腰を下ろしています。

タジマ君:「先生っ、うちの本社がまたうるさくて。来期の売上と利益の“計画”をちゃんと立てろ!って言うんですけど、正直“売上は気合で伸ばす!”くらいしか思いつかなくて…」
ミゾグチ先生:「タジマ君、気合も大切だけど、それだけでは数字は動かないよ。ところで、売上や利益の計画、これまではどう立ててきたの?」
タジマ君:「うーん……去年の売上からだいたいこれくらい増えるかな?って感覚で10%アップ!みたいな。あと、やっぱ夢は大きくってことで“1年で2倍!”って叫んでみたり、です。」
ミゾグチ先生(苦笑しつつ):「勢いはあるけど、合理性がちょっと足りないなぁ(笑)。大事なのは“なぜその数字なのか”という根拠だよ。予算が達成できたかどうかよりも、その根拠が明確かどうかのほうが、はるかに重要なんだ。」
タジマ君:「根拠か〜…。でも、時間をかけて予算を立てても、どうせピッタリその通りになることもないですよね?」
ミゾグチ先生:「その通り(笑)。でも、例えば“なぜ未達になったのか”を説明するには、予算のどの前提がそのあと変わってしまったのかを把握していなければいけないよね。だから、予算というのはちゃんと合理的に積み上げている必要があるんだよ。」
タジマ君:「合理的…それって“数字に強くなれ”ってことですか?」
ミゾグチ先生:「そんな辛そうな顔をしなくても(笑) “数字に強くなれ”というより、“構造を知れ”ということかな。例えば、費用には『固定費』と『変動費』があるのはわかる?」
タジマ君:「えーっと…なんか家賃とか人件費が固定費で、材料費とか仕入れが変動費って感じですかね?」
ミゾグチ先生(満足げにうなずき):「正解。売上が10%増えても、利益が同じように10%増えるとは限らないんだ。固定費は売上に関係なく発生するので、利益は売上と“完全比例”しない、ってことだよ。」
タジマ君:「そっか…ってことは、予算立てるときも固定と変動で分けて考えないといけないのか・・・。」
ミゾグチ先生:「その通り。人件費のように“固定+変動”が混ざっている費用もあるしね。こうしたものは『勘定科目法』や『回帰分析法』などで費用を分解するとことが望ましいんだ。」
タジマ君:「回帰分析…?なんか格闘技の技名みたいだな…」
ミゾグチ先生(クスッと笑って):「いやいや、科学的な分析方法のことだよ。さて、次は“売上”の見積もり方の話をしようか。」
タジマ君:「売上なら得意分野だ!どーんと倍にしてやるぜ!」
ミゾグチ先生:「その“どーん”が問題なんだ。過去の実績や成長率をベースに考える方法、あるいは数年後の目標から逆算して計画を立てる方法、いずれも“前提条件”のチェックが欠かせないよ。」
タジマ君:「前提条件…?」
ミゾグチ先生:「例えば、マクロ経済や業界の動向とかね。もし今が過去とは全く状況が違っていたら、過去データの信頼性は落ちてしまう。それに、成長率が高すぎる計画は、社外からの信頼性も社内のやる気も損ねるおそれもあるよね。」
タジマ君:「そう言われると…“今年は前年比200%!”って言ったら、部下が無言だったの思い出しました…」
ミゾグチ先生:「それは良い気付きだね。売上の計画は、商品別・事業別・地域別に“どこでどれだけ伸ばすか”を分解することで、実現可能性も説明しやすくなるよ。」
タジマ君:「確かにそれなら営業会議で“この商品がこのエリアで伸びる!”って言えますね!」
ミゾグチ先生:「さらに、その売上をどう達成するかのプロセスも明示するとなお良いよ。行動計画とセットで伝えれば、社員も腹落ちしやすくなると思う。社員のモチベーションにもつながるしね。」
タジマ君:「なるほどな〜。これって、戦略ってより“作戦”に近い感じがします。よーし、やるぞー!」
ミゾグチ先生:「やる気に満ちあふれてるね!でも、“やる気”だけじゃExcelは動かないよ(笑)」
タジマ君(苦笑しながら):「そ、それは……今度こそ“関数”ってやつと向き合う時なのか…!」
ミゾグチ先生:「僕がついてるから安心して。では、早速ラップトップを出して。で、Excelを開いてCtrl+Tで表を整えてもらえる?」
タジマ君:「先生、ちょ、ちょっと待ってください。ここでExcelやるんですか?」
——
スタバでは無くなんと居酒屋のカウンターで熱血COOは“表計算の壁”との格闘を始めることになったのでした。
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